恋ではないが愛かも知れない。
情熱的であったかどうか、もう、そんな事は覚えてなどいない。ただ彼の一言で一喜一憂し、妄想など一人前にこなし、夢見るような恋だった事は間違いない。
そんな恋の輪郭が曖昧になり、情熱の欠片もどこかに行って、穏やかに2人の時間が流れるようになった頃、ぼんやりと恋が愛に変わった、気がする。
ただ特別な事ではなく、当たり前のように、そばに居て笑って、明日の天気の話をしながら、晩ご飯は何を食べようかなんて事を話して、シャンプーの香りもボディーソープの香りも同じ。明日も二人だということを信じて疑わない。愛している、と叫ぶことはないけれど、穏やかにここにあるのが、間違いなく愛なんじゃないかと、半分だけ確信している。
きっと愛は、激情ではなく、穏やかなもの。
そう思えば、隣から聞こえる地響きのような鼾も、きっと可愛らしくなる、はず。そう思いながら、とりあえず、彼の鼻をつまんだ。