髪を切っただけの話
切ったらゴミになるだけの髪が、長ければ使い物になるのならとMOTTAINAI精神でショートヘアから伸ばし始めて3年。
髪なんて寝てても伸びるものだけれど、伸ばすのは思った以上に大変だった。
特に、洗う・乾かすがしんどかった。
それぞれに15分以上かかるし、洗ってる時は頭をずっと曲げっぱなしなので首が辛い。もげる。
抜け毛はホラーだし、うっかり毛先を焦がした事も。
昔からロングヘアに憧れていて、具体的に言うと仲間由紀恵やカヒミ・カリィなど。
原体験は多分アニメ一休さんの母上様。
背中のあたりでゆったりと結んだ髪に憧れた。
これまでに何度かロングヘアに挑戦した事があったが、毎回肩甲骨で挫折していた。
(それもカットもケアもせず雑草のような髪だった)
けれど今回は、「ヘアドネーション」という具体的な目標が出来た。
意識はしていなかったけど、徐々に伸びてきてからは「髪長いね」と人から言われるたびに「ヘアドネーションしようと思ってて。ゲヘヘ」と答えて自分を追い込んでもいた。
長い髪の感覚とはどんなものだろう、いつかそれを体感出来る日が来るのを楽しみに伸ばし始めたのだが、割と早い時期に自分は短い方が似合うと気付き(ロングヘアになったら顔も仲間由紀恵になれると勘違いしていた節もある)、一年を過ぎた頃には邪魔で切りたくてたまらなくなった。
ヘアドネーションで受け付けている長さは一般的に31㎝から。
そのラインに達した時に切ればよいのだけど、私は「自分の誕生日に切る」と固執していた。
まもなく2年が近づくと、毎日のように定規で髪の長さを測った。
何度測ったっていきなり伸びる事なんてないのに。
そしてベリーショートにでもしない限り31㎝は到底無理と分かった時は、あと365日もまだこんなに辛い気持ちで過ごさなければいけないのかと絶望の気持ちになった。
髪が伸びるスピートは月に約1㎝と言われてるのは知ってるし、私は2,3ヶ月に一度の割合でカットをしていたので、ショートから2年じゃ始めから無理な話だったのに。
ショートヘアの画像を漁るのが日課となった。
それから、3年目を迎える2ヶ月前。
美容師さんに測ってもらったところ、十分な長さがあると判定が出た。
その時は飛び上がったね。
次回は断髪するから、最後に…と丁寧にブローをして写真を撮ってくれた。
いよいよドネーションの日取りが具体的になると、私も例外なく、あれほど切りたかった髪が惜しくなってきた。
ヘアカット・ブルーとでもいうのか。
ここで切ってしまったら、もう二度とこんなに伸ばすこともないだろうし、伸ばしたとしても何年かかる?どうせならお尻まで頑張ろうか…
などと何度も頭をよぎる。
自分で言うのも何だけどこのツルツルの髪を触るの好きなんだよなあ。
その思いは洗髪・乾燥の工程をおこなうと吹き飛ぶのだけど、しばらくするとまた湧いてくる。
この葛藤を四六時中繰り返し、毎日が過ぎていった。
カットの日程が決まったからもったいぶってるだけであって、もしこれで「それじゃああともう1年頑張りましょうか」と言われたら爆発する事間違いないのでいよいよ腹を括った。
3年ぶりのショートだ。
自分の面構えを忘れてどんどん理想が上がる。
「ボブ 面長 前髪あり」等色々なワードと組み合わせで検索を掛け続けてある事が分かった。
プロのヘアメイクさんとプロのカメラマンさんによるヘアカタログや、インスタの美容師垢の投稿は様々な加工や調整がされているし、何よりモデルの顔面と髪質、特に顔面が私とかけ離れすぎていて参考にならないと。
それに「30代」で調べても平気で20代ばかり出てくるし、こうなったらと「ミセス」で検索してもやはり20代のゆるふわ系ばかり。
役立ったのは、インスタの「#ヘアドネーション」タグ。
街の美容室、素人写真ばかりでリアルで良かった。
ただ、「え?プロの美容師さんがカットしてこの髪型…?私のセンスがおかしいのか…?ゴクリ」的な髪型が散見して震えた。
期待と不安で溢れかえりそうになりながら当日を迎え、お店のオープンと同時にカット。
「ショートまで短くはないけど、肩につかない長さで」とあえて少ない注文で伝えた。
パッツンボブ。
避けたかった髪型トップ3。
まあ、すぐに伸びるし、次はもっと切る予定だし。
八つにくくられた私の髪はあっという間に切り離されたが思いの外あっさりと受け入れられた。
一束ずつ切られてる間も切られた後も、躊躇ったり後悔する事はなかった。
美容室は手間と時間がかかるにもかかわらず追加料金はなし。
髪ゴムや袋も用意してくださった。
このボランティアは美容室が一番負担がかかっている。
しかも実は今回の美容室はヘアドネーション賛同店ではない。
3年前に通い始めた当初にヘアドネをしたいと言っていただけだったのが、いつの間にかやってくれる事になっていた。
本当にこの美容室には感謝だ。
今はというと、とにかくシャンプーとドライヤーが楽!
エコ!
つい一昨日までロングだったのに、もう遠い昔のような気すらする。
それはそれで悲しい気もするけど、私は短い髪型が好きという事なのだろう。
今は、韓流男性アイドルみたいな髪型にしたいともくろんでいる。