2022年8月の自己紹介コラム
今年の4月、千葉から引っ越してきた村方です。
1994年生まれ、武蔵野美術大学に進学し、 社会の中で芸術文化を普及するための勉強をしました。卒業後は、東京都で5年間「アートプロジェクト」と呼ばれる活動の運営の仕事をしてきました。
例えば、
・東京下町の町工場の職人さんと、現代音楽のアーティストが協力して、使われなくなった家電を楽器に改造し、 それを使ったちょっと怪しいお祭りをひらいたり
・障害を持った方々の施設にアーティストと一緒に通って、そこで新しい交流の形を探してみたり
・寺尾紗穂さんという私の大好きな音楽家とともに、街の語られてこなかった歴史について調べたり
・子ども食堂の人たちとリヤカーをつくって、街に飛び出して、そこで起こる予想外の出会いを楽しんだり
…というような、ちょっと不思議なアートの現場のサポートをしてきました。
楽しいことも辛いこともありましたが、これまでの振り返りとして「アートプロジェクト」を考えてみると、それは作品そのものより、何かが生まれてくるプロセス自体を重視して、そのおもしろさや、わからなさを多くの人と分かち合うような活動なのかなと思っています。
わたしは、人と面と向かって会話をするのが苦手です。子どものときからずっと「うまく喋れないな〜」と思い続けていますが、それでも人と関わったり、考えていることを共有したり、目の前にいる人の様々な面に気づける瞬間がとても好きです。アートは、そういうきっかけをくれるから、不器用ながらも今まで続けているのかなとも思います。
正直、由布院にくる前は、知らない土地に一人で行くことに、不安を感じていました。だけど今、多くの方々がこの場を支え、30年もの間、あらゆるアーティストの表現を発表する場となっていることに感激し、また、アートホールへ立ち寄ってくれる方々との交流も楽しく、ここに来れてよかったなと思っています。
アートが年齢や立場、様々な違いを超えるものとして作用するところをみるとき、わたしは生きていてよかったと思います。そしてその作用が起こる場を整えるのが、ここでのわたしの仕事だと思っています。作品や作家さんを大切にしながら、アートホールに訪れる人との、良い出会いのサポートしていきたいです。
(ゆふいんアート情報「森の散歩道」2022年8月号掲載)