小説のはなし5-コンビニ人間-
こんにちはMarchantです。
昨日やっと村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が読み終わったので、そのお話をしたいと思います。
これは簡単に言うと、「普通とは何か?」と問答する人の話です。
主人公は生まれたときから、ちょっと普通の人とは違うということを意識しながら、どうすれば普通になれるのかわからずに、恋愛、就職経験ナシで30代後半まで、コンビニでアルバイトをします。
そして自分と似たような人と合理的に婚姻することにし、その人を養うためにコンビニのアルバイトを辞め、就職面接を受けようとするのですが、その直前ふらっとコンビニに立ち寄り、コンビニの「声」を聞くと、やはり自分にはコンビニでしか働けないと思い、再びコンビニ店員なる、というお話です。
この話の主人公の一番変わった点は、コンビニの「声」が聞こえているという点です。
私はこれを読んだ時、『神々の沈黙』という本を思い出しました。これはジュリアン・ジェインズという方の哲学、思想系の本です。
そこには「言語」と「意識」の関係が書かれていて、
言語の誕生する前、人々は意識がなかったんじゃないか
という仮説です。詳しいことはウィキペディアで「二分心」というページを調べれば書いてあるので読んでみてください。
そして意識があれば、自分の意思で行動決定ができますが、その意識のなかった時代人々はどのように行動を決定していたと思いますか?
ジェインスはそれを「神々の声」と考えました。
そして統合失調症の人の幻覚や幻聴はこうした、「神々の声」によるものだと、考えています。
そして今回の小説は「コンビニの声」とあります。
コンビニ人間では「何が普通か」と問われますが、もし、ジェインズのいう、「神々の声」が本来、私たち人間に聞こえていたものだとしたら、コンビニ人間の主人公や統合失調症の人がむしろ通常で、自分の意思だけで行動決定してしまう、「神々の声」が聞こえない今の私たちのほうが、普通じゃない、と言えるかもしれませんね。
ちょっと怖い話になりましたが。笑
作品の中ですごく音や声について書かれていたので、もしかしたら、作家の村田沙耶香さんもこの本を読んでいたかもしれませんね。
ということで今回はコンビニ人間についてのお話でした。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
ではまた次回に。