248:視界が接触面で切断されているような気がする

目を半開きにして,指を瞼にあてる.このとき指は視界の際にくる.視界を突き破りはしない.視界に触れているという感じでもない.瞼に触れているという感じがある.私はこのとき,視界というのもが物質でも空間でもないように感じられる.空間なら触れらない感じがあるが,視界は触れらない感覚を得られない.瞼に触れてしまう.もしくは,眼球に触れてしまう.何かに触れているという感じがあるので,空間に対して抱く触れられない感じが視界にはない.もちろん,視界に触れるという試みが間違っているのだとは思う.

視界に触れられるのではないかと,目を半開きにして瞼に触れたときの感覚は不思議である.指は目に近過ぎて,ピントが合わずに透けて見えるようになっている.透けて見える自分の指が確かに瞼に触れている.指はそこから視界が生まれているとも言える場所にあるように感じられる.しかし,実のところ,指は瞼に触れているだけである.もしくは,眼球に触れているだけである.瞼に触れている指の面のさらに奥に私の脳や頭蓋骨があるのだが,それらはそこにあるという感じだけが与えられて,見ることはできない.見ることができないそれらがあるのは,指の先にというよりは,指が触れてい面の奥にあると言ったほうが感じとして近い.しかし,指が触れてい面の奥に「空間」が広がっているのではなく,見ることはできないが,「視界」が広がっている感じがある.私には見えない瞼の奥に「空間」ではなく「視界」がひろがっていると感じること.それが視界の不思議さの原因のような気がしてきた.指の先,指が触れている瞼の奥に見えていないけれど,視界が存在している.視界が見えていない方にも広がっていて,その見えていない部分と見えている部分とが,指と瞼や眼球との接触面で切断されたような気がしてしまうのを,私は不思議に感じているのだろう.

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