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092:穴から見える壁と,絵画の周囲の壁が一体のものであることを示した

エキソニモの《Click & Hold》とルチオ・フォンタナの「穴」や「切り裂き」の作品を対比してみたいと思って,フォンタナについての書籍を読んでいたときに,確かにそうだようなと思ったテキストが下の引用.

フォンタナも,ニューマンと同様に,絵画の周囲を内部に取り込もうとした.しかしフォンタナは,カンヴァスに穴をあけ,その内部と絵画の周囲が,同じ空間にあることを具体的に示した.穴から見える壁と,絵画の周囲の壁が一体のものであることを示したのである.絵画というイリュージョンの装置から,イリュージョンというファクターを取り除き,かついまだ絵画として存在させ得ることを明示した.p.262 

「穴」がカンヴァスの平面性を突破して,その下の壁を見せる.その壁はカンヴァスがかけられている壁の一部であって,絵画の内部にその外部である壁が入り込む.「穴」は,面白いなと思う.MASSAGEでの連載「モノとディスプレイとの重なり」でも,ラファエル・ローゼンダールの《Shadow Objects》を考えるために「穴」について考えていたので,また「穴」について考えることになるのだろうか.

エキソニモの《Click & Hold》は「穴」というよりも,カーソルを物理空間に釘付けにする「釘」と「重力」の問題という感じがする.フォンタナなの「穴」を経由しつつ,フォンタナが反重力的な宇宙をカンヴァスに取り込んだという方が重要かもしれない.それでも,重力と「穴」とが関連しているというのは,やはり面白い.

エキソニモの《Click & Hold》は釘がカンヴァスに穴をつくる同時に,埋めて,突き抜けて,奥の壁に突き刺さっている.その結果,仮想的存在である「カーソル」が物理空間に宙づりにされて,重力下に置かれる.フォンタナの穴の作品は重力から脱する.それは,穴が穴として空いているから.エキソニモの作品は穴はあるが,その穴は釘という物体が埋めていて,「穴」ではなく,カンヴァスを支持するための「支点」となっている.このちがいが「重力」に対する態度の変化を決定しているのだろう.

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