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[インターネット リアリティ マッピング]をしようと思った!

2014年にmakersのための情報発信メディア「DMM.make」でネット/メディアアート周辺の作家を数珠つなぎに紹介していく「インターネット・リアリティ・マッピング」という連載をしていました.今はサーバーすらなくなってしまったので,テキストを転載しました🛠

[インターネット リアリティ マッピング]

極私的なリアリティ

私は「インターネット・リアリティ研究会」のメンバーとして活動しています.「インターネット・リアリティ研究会」は,インターネットが当たり前になった時代に生まれてきているであろうネットを経由したリアリティについて考えるために2011年に発足しました.メンバーはネットアートの初期から今までコンスタントに怒りと笑いに満ちた作品を発表している千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット「エキソニモ」,メディアアートの世界に「飲み会」でのざっくばらんな批評を持ち込んだ「思い出横丁情報科学芸術アカデミー」の谷口暁彦渡邉朋也,常にネット界隈のためになる情報を提供してくれるCBCNETの企画・運営をしている栗田洋介,画面上の「いいね!」を押しまくる「どうでもいいね!」ボタンで第16回メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞した萩原俊矢,一見謎のウェブサイトをつくりながらウェブサービスの盲点をつきつづけるyoupy,そしてネットアートやインターフェイスの研究者の私となっています.2012年に東京初台にあるメディアアートの展示施設 NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]で展覧会「[インターネット アート これから]――ポスト・インターネットのリアリティ」を企画し,会期中に6回,2013年にも2回の座談会を行って「インターネットリアリティ」について考えてきました.しかし,私はメンバーと話せば話すほどそこで問題となっているインターネットを経由した「リアリティ」とは何なのかがよくわからなくなってきました.それはいつもネットが拡大しているからで,研究会が発足する以前からネットはその輪郭を辿れるものではなくなっていたのではないでしょうか.そのような状況で研究会はどうにかインターネット・リアリティを掴もうと奮闘しています.そして私はいつしか,研究会メンバーの個々の活動にインターネット・リアリティを強く感じるようになっていきました.それはインターネット全般のリアリティとは言えないものですが,少なくとも私にとってはインターネットの輪郭なのです.でも,そのリアリティを構成する個々の関係性を俯瞰して見てみようとは思ったことがありませんでした.

http://map.jodi.org/

オランダ生まれのJoan Heemskerkとベルギー生まれのDirk PaesmansによるアートユニットJODIには「地図」の作品 http://map.jodi.org/ があります.その地図にはJODIと関係するアーティストや組織が記されています.広大なネットのなかでJODIと関係するという単純な理由でつくられた地図.アーティスト同士がどんな関係かも明確に記されることなくつながれてグルーピングされているから,JODI以外にとっては意味を成さないような地図.でもそれはJODIにとっては明確なリアリティをもったつながりとして機能しているはずなのです.このことを示すかのように地図画像のファイル名は「思想の背景」や「ネットの基幹回線網」を意味する「バックボーン」となっています.私にとってはこの地図の大半は意味が見いだせないものですが,インターネットリアリティ研究会のメンバーで,私の研究対象でもある「エキソニモ」がひとつのハブとして記されているところには注目して,何かしらの意味を求めて,勝手にその意味をつくってしまいそうです.そして,そこでひとつの意味が出てきたら,この地図は私にとっても大きなリアリティをもつものになると思います.

[インターネット リアリティ マッピング]

この連載ではJODIの地図に習って,私から眺めたインターネット・リアリティのマッピングを行っていきたいと思っています.そうすることで自分がインターネットに対して抱いているリアリティの輪郭が明確になると考えています.その際に,JODIの地図ではわかりにくい関係性などの説明も記述していきます.今回作成していく地図は私のインターネット・リアリティ探求を支える「バックボーン」となるものですが,「インターネット・リアリティ研究会」の資料にもなると思われるからです.なので,少なくとも研究会のメンバーが読んでわかるものを書いていきたいと思っています.「随分と狭い範囲だな」と言われるかもしれませんが,ネットはもともと私的なつながりが次々につながっていってよくわからない広大なものになっていったものです.だから,とても私的なつながりでインターネット・リアリティを記した地図もまたどこかの誰かとのつながりをもって,私自身やインターネット・リアリティ研究会を超えたものになっていけばいいなと期待しています.

次回はJODIとエキソニモの関係をマッピングしていく予定です.

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