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173:ペーストとデータとが接合されたものが意識に上ってくる
渡辺正峰『脳の意識 機械の意識』の第5章「意識は情報か,アルゴリズムか」に「多層生成モデルが実現するリアルな脳の仮想現実」という節がある.そこに次のように書かれている.
このようにリアルな生成モデルでポイントとなるのは,高次の視覚部位がもつ記号的な表象から,三次元のバーチャルな世界へといったん表現が膨らみ,その後,二つのカメラに相当する眼球由来の低次視覚部位の表現へと収斂されることだ.p. 265
「生成モデル」というのは脳の機能で高次の記号的表現から三次元の仮想世界をつくり,その表象と低次の感覚データとを比較して,そこに誤差があれば,表象を修正していくことで,外界との誤差を可能な限り少なくした表象をつくるというものである.
ということを,前回のnoteで書いた.今回はそこからさらに考えたことをメモしていこうと思う.
生成モデルで「高次の視覚部位がもつ記号的な表象から,三次元のバーチャルな世界へといったん表現が膨らみ」とあるが,これを外界の感覚データに補正される前の記号から生成される3Dモデルとして考えてみる.さらに,記号的な表象に基づいて生成されていく3Dモデルとともに立ち現れる現象が膨張しているとしてみる.3Dモデルもフォトリアルなモデルではなく,白いグニャグニャのペースト状だけれども,記号的表象によって型抜きされていて,ある程度のかたちになっている.この段階では,まだ外界の物質から得られる視覚や触覚からの感覚データは3Dモデルにもたらされていない.感覚データの拘束を受けずに,記号的に生成していく3Dモデルとそれに付随する現象が膨張している.そこに物質由来の感覚データがもたらされ,3Dモデルとそれに付随する現象とが刈り込まれいく.この刈り込みを経て,記号が生成する白いグニャグニャのペーストと物質的データとが接合されていく.そして,このペーストとデータとが接合されたものが意識に上ってくる.
感覚データから補正・刈り込みを受けるまえの記号とともに膨張した「白いグニャグニャのペースト」ということを「サーフェイスから透かし見る👓👀🤳」では「空白とバルクとを練り合わせた練り物🍥」と呼んでいて,「フラットネスをかき混ぜる🌪」では「現象的フラットネス」と呼んでいる.考えていることは一緒で,意識のプロセスに立ち上がる現象をどうにかして捉えたいということである.