メイド服の彼女と私｜戯言（2024/07/07）
「僕を見ていてね、最愛のファタール！」
昨日帰り道に『ファタール』を聞いていると、Twitterの通知でスマホの画面がオンになった。
お給仕終わりの彼女がツイートしたようだ。
私が恋し焦がれる彼女はいつも自撮りと一緒に好きな歌詞を載せる。音楽に生きる彼女らしいツイート方法だ。
ちょうど私が『ファタール』を聞いている時に、その歌詞を載せて彼女がツイートする。もう運命としか思えない。運命的なIだ。
昨日は、土曜日なのにご主人様お嬢様が少ない、いわゆるまったりなお屋敷だった。お屋敷で待ち列もなく、ループ*することも可能。もちろん、私は誘惑に負け、結局3時間いることになった。
途中で彼女が言う。
「いやさ、飴ちゃん*大丈夫なの？いつもすごいなって思って」
耐えてるわけがない。
勤務先の塾で鬼のように授業を担当し、手にしたお金を半分以上彼女に突っ込んでるのが現状だ。
「あの、臨時収入というか学校から奨学金をいただいてさ……」
そう、私は成績優秀者に贈られる奨学金にも手をつけている。やばいだろ、普通に。
彼女と会うために、彼女とVtuberの話をするために、彼女としょーもないことの議論をするために、彼女とネットのネタ画像を再現するために、
私は必死で勉強し、働き、生きてる。
ただ狂ってるとしか言えない。
昨日の話に戻ろうか。
とにかく人が少なく、まったりだったので私は彼女と色々話した。
前回プレゼントした自作アクキーが彼女のお母様の祭壇に飾られているという話、鈴木亮平がガチで良いという話、私の後輩が彼女に会いたがっているという話、再現したいネタ画像のストックが尽きそうという話、……他多数。彼女以外の人には伝わらないことばかりだ。
また最後の1時間は特に空いていたので、少し長めのお楽しみ会*を見ることができた。
というか、絶対にラストお楽しみ会があるだろう読みで、私はループを繰り返し、彼女と協力して最前センターの席への移動が完了していた。
音楽が始まる。
彼女はセンターに立った。私のすぐ目の前だ。
歌い踊る彼女をまっすぐに見る。時々、振りを間違える彼女と目が合い、笑ったりした。また決めポーズの時は確実に私を向いてくれる。これがファンサってやつか。
お楽しみ会終わりに彼女は「もう絶対踊らない！！！踊らないんだ！！！」と大声で言っていた。でもまた私のために彼女は踊ってくれるということを、私は知っている。
お屋敷を出たあと、私は家に向かった。
悔しいが本当の帰宅だ。
そして最初の話に戻る。
やっぱり運命ってあるんだろうか。
今日、私はまたお屋敷に向かう。
友人との約束で、別のメイドさんのお誕生日をお祝いするためだ。
特別衣装に身に纏った「今日の主役」は色んなご主人様お嬢様、メイドさんに愛され、笑顔いっぱいだった。衣装似合ってて可愛かったねーーと言いながら、友人とカラオケをしていた時、またTwitterの通知が目に入る。
「突然だが、夜、お知らせがある♩」
本当に突然。
だが、その瞬間に私は全てを悟った。
これは卒業発表だ。
この時期、そしてお知らせがあるという告知、彼女と一心に向き合った私が持つ全データが言っている、これは卒業だ。
心のざわめき止まぬままカラオケをし、帰りの電車で「もし卒業だったら交換日記を書く」と友人に宣言し、そのまま解散した。駅から家までのんびり自転車を漕いでいると少し涙が溢れた。
家に着くと、時刻は19時20分。
ひとまずお嬢様フレンドにLINEを入れる。
次にTwitterを開き、高校の同級生や先輩後輩と繋がっている、いわゆる表垢でツイートする。
これで心の準備はできた。
しかし、彼女のお知らせまでは約2時間ある。こんな状態では何もできない。とりあえず少し寝ることにした。
気がつくと、0時。
たくさん通知が来ていたことから全てを察したが、私はTwitterを開く。
2024年10月をもちまして卒業します❕
やっぱりね。私天才だからね。予想通り。
卒業する時期までピタリと当ててる。
上記のように、自分の感情が爆発しないように保険をかけまくっていたので、発表を受けて取り乱すことはなかった。
すぐに寝室に移動し、もう一度Twitterを開く。
泣いた。
泣いて、泣いて、泣いた。
子供のように泣いた。
そして泣き疲れた。
とりあえず「生きてる？」と心配してくれていたお嬢様フレンドに返信をする。
そして彼女の卒業発表ツイートにリプをする。普段はリプをしない私だが、今回は別。
その後、思っていることをひと通りツイートして、Twitterをぼおっと眺めていると1時30分を過ぎていた。
その後、YouTubeで『ファタール』を流し始め、宣言していた私は交換日記を書き始めることにした。
この交換日記は友人と2人で回しているもので、私のページはほとんど彼女で埋め尽くされている。
推しが卒業を発表した。
まず最初に書く。
ああ卒業するのか、とまた実感が湧く。
書き進めていきながら、また大粒の涙が溢れる。ふとスマホの画面を見ると、中島健人が綺麗な顔で歌い踊っている。昨日の彼女じゃないか。
全て書き終わる頃には、もう涙は出なくなっていた。また泣き疲れた。
交換日記を閉じ、iTunes Storeで『ファタール』を購入する。Face IDは私の顔を認識してくれなかった。
2024/07/07
戯言｜メイド服の彼女と私と卒業発表
*ループ
基本的にお屋敷に滞在できるのは1回1時間だが、待ち列がない場合に限り、お家賃を支払うときに「ループしたい」と伝えれば追加で1時間滞在することができる。
*飴ちゃん
お金のこと。可愛いので普段使いしたい言葉。
*お楽しみ会
メイドさんが歌と踊りを披露してくれる会のこと。お屋敷のご主人様お嬢様が少ない時に突発で開催されるので、見れたらラッキー。