誰かの救いになれた話
「あの時の父親です。今日はお礼をしに、初めてここへ来ました」
その人はそう言って私に深く頭を下げた。
私の名前と前に働いていたお店を頼りに私を探し出してくれたようだった。
最初はびっくりした私も、話を重ねるうちに気恥しさとほっこりした気持ちに包まれていた。
水商売歴の長い私は、フリーランスとして仕事する今でも時々、スナックに出勤している。
基本的には指名のお客様が来る時だけのいわゆる「メンバー出勤」という形をとっているのだが、あまりに出勤キャストが揃わない時には人数合わせで