親友とすきなひと
「あのね、私...○○くんが好きなの」
これ、漫画でよく見るヤツだ、とわたしは思った。
小学生の恋愛って聞いて鼻で笑う人もいるかもしれない。けど意外と侮れないと思う。小学生なりにしっかり恋を知ってその辛さや、嬉しさを経験しているはずだ。
小学四年生の時に、ある男の子を好きになった。それまではペっぺけペーでほけほけしていたわたしはガラッと変わったと思う。当時は母が買ってきた服を言われるがままに着ているだけだったわたしが自分で服を選ぶようになった。当時学年で1番オシャレだった子が着ていたメゾピアノ系統のブランドの服を欲しがった。髪型にもこだわりを持ち、腰まであった髪の毛を母に編み込んでもらったり、お団子にしてもらったり一生懸命自分を可愛く見せようとした。
恋をしたら一気に不安が大きくなる。今まで友達だったその人に勝手に独占欲が湧いて、他の女の子と距離が近かったり、仲が良かったりするとすごく悲しくなる。だからわたしは味方を作ろうとした。わたしがその人の事を好きであると知っている人を作ろうとしたのだ。そうして、協力をしてもらいたい、秘密を知ってもらいたいと思ったのかもしれない。
1番にそのことを報告する人は決まっていた。
昼休みになって、当たり前のように遊ぼうと言ってきた親友に、「秘密の話があるから、トイレ行こ!」とひっそりと言った。親友はびっくりしたように目を少し開いて「え、実は私もあるんだ!言おうと思ってたこと」といった。気が合うなあとその時は思ってた。
いざその時がくると意外と緊張してしまって「あー、うー」みたいな訳分からん言葉しか出てこない自分がすこし可笑しかった。わたしが何を言おうとしているのか大体察したらしい我が親友は、「じゃあ私から」と口を開いた。
「あのね、私…○○くんが好きなの」
そして冒頭に戻るのである。
限界まで目が開いていたと思う。それほどにびっくりした。と、同時にその現実をスっと受け入れた自分がいた。
親友とすきなひとが被っていた。
少し照れたようにする親友。対するわたしの身体は冷たかった。どうしよう、どうすればいい。ここは本当のことを言うべきか。いや、でもこの子を悲しませたくない。でも、親友に嘘はつきたくない。いろいろな思いが身体中を駆け巡った。次はわたしが話さなければいけない番だ。どうしよう、、
「わたしはね、△△くんがすきなんだ」
わたしの口から出たのは、全く違う男の子の名前だった。勝手に口が動いていた。
わたしは、親友を取った。
今はもう全く後悔はしていない。ただ当時は少しだけ、後悔していた。好きな人と自分の親友が仲良くしていて、ましてやそれにわたしが協力しなければならないのが辛かった。
それでもわたしのすきなひとの名を聞いて少し安堵したように笑った親友を失わないでよかったと思う。
全く関係ない△△くん、ごめん。
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