デジタルサービス局前夜

デジタルサービス局は2021年4月に誕生。2020年のコロナ対策において行政のデジタル化があまりに機能しないことが明らかになりなんとかせねば、というところからだった。

局の誕生の前には色々な思考作業がある。その頃のメモが出てきた。この頃はデジタル局と名付けてなぜこんなに行政のデジタル化はうまくいかないのだろうか?をつらつら考えて、対策として専門の部署「デジタル局」を作ろう、部署を作るだけでなく道具、人、作り方、契約調達、会計、評価、スマートシティ、テクノロジー戦略の8大改革をやっていこうと(最後の二つは少し後に追加してるかもしれないけど記憶が曖昧、、)。
他の自治体でもデジタル専門部署を作る動きもあるかもしれないので、その参考になるかもしれないので共有します。なお原文はこの数倍のボリュームで長すぎるので生成AIの力を借りて整える&要約してます。


総論:東京都行政デジタル化の現状と課題

東京都の行政デジタル化は、多くの点で遅れを取っている。コロナ禍でその遅れが顕在化し、保健所と東京都との間のコミュニケーションは未だにファックスに頼り、給付金の支給には膨大な時間とコストがかかり、国と都がビデオ会議をスムーズに行えないなど、現代社会の標準に達していない状況が続いている。こうした現状は、行政システムの技術的な限界を浮き彫りにし、少子高齢化での公務員減少が進む未来に向けて、効率化とデジタル化が喫緊の課題であることを示している。
デジタル局の設立においては、以下の3つの大きな目標を掲げる。

  1. 危機の克服

  2. 未来の機会の獲得

  3. 誰も取り残さないデジタル社会の実現

この20年の取り組みは、奮闘努力してるのに多くの失敗を繰り返しながら、品質の低いサービスや非効率なシステムが作られてきた。これ以上の失敗を防ぐためには、根本的な改革が必要であり、道具、人、作り方、契約調達、会計、評価、スマートシティ、テクノロジー戦略の8つの軸で対策を講じる必要がある。


1. 道具の改革

東京都の職員は依然として20年前の技術を使用して業務を行っている。パソコン、電子メール、パッケージソフトに依存した情報環境では、現代の業務プロセスの高速化や効率化には対応できない。これに対して、民間企業はすでにモバイル端末やビジネスメッセンジャー、SaaS(クラウドベースのサービス)といった「新三種の神器」を活用している。

具体例:

民間企業では、クラウドを利用して複数のメンバーがリアルタイムでドキュメントを共同編集することが日常的に行われているが、都庁ではいまだに紙の資料やメール添付ファイルによるやり取りが続いており、その非効率さは業務の速度と成果に直接影響を与えている。
改革案:

  • 最新のモバイルデバイス、クラウドベースのソフトウェア、SaaSを導入することで、職員が即座にデジタルツールを活用し、業務プロセスを大幅に効率化できる体制を整備する。

  • LGWANや自治体セキュリティクラウドの改善を行い、特にSaaSやクラウドサービスの利用を推進しつつ、データのセキュリティを確保する体制を強化する。

具体的には、SaaSの利用を許可するゲートウェイの設置や、セキュリティ監視機能の強化が求められる。また、「未来型オフィスプロジェクト」と「5つのレスプロジェクト」も重要な施策であり、職員が物理的な都庁に依存せず、デジタル環境のみで業務を遂行できる体制を構築することが必要だ。


2. 人の改革

デジタル化が進まない理由の一つは、技術を持つ職員が極めて少ないことである。行政職員の多くは、技術的な知識を持たないままプロジェクトマネジメントを担当しており、結果として外部業者に業務を丸投げしてしまうケースが多い。このような状況では、プロジェクトの品質や効率性の確保が難しい。
具体例: あるシステム開発プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーが技術的な知識を持たないため、業者に詳細を伝えきれず、結果として開発が遅れ、納品物が期待される水準に達していなかった事例がある。これが都民に提供されるサービスの品質低下につながっている。
改革案:

  • エンジニアやデザイナー、データサイエンティストなどの「作れる人材」を積極的に採用し、組織内での技術力を強化する。特に、土木や建築技術者と同様に、ICT専門職を新設して技術職の集団を形成することが急務だ。

  • 民間企業やシビックテックコミュニティと連携し、外部の技術者をフルタイムや副業として活用できる仕組みを導入する。また、官民交流法を柔軟に適用し、民間と行政の技術者が定期的に交流し、最新の技術を吸収する体制を整備する。


3. 作り方の改革

東京都では、各局が独自にシステムを開発し、結果としてシステム同士が連携できない状況が続いている。また、システムがリリースされた後、十分な改善が行われないため、技術負債が積み重なり、効率的なシステム運用が難しくなっている。
具体例: 東京都内の避難情報提供システムは、台風時にアクセスが集中してダウンしてしまった。また、システム同士が連携できず、市民が何度も同じ情報を入力しなければならないという問題も発生している。
改革案:

  • デジタル局がシステム開発全体の統制を担い、各局はその指示に基づいて開発を進めるべきだ。これにより、システム間の連携や技術負債の最小化が実現できる。

  • 市民との対話を重視した「対話型開発(アジャイル開発)」を導入し、開発段階から市民の意見を反映させ、リリース後も継続的な改善を行う。


4. 契約調達の改革

従来の契約制度は、技術力よりも企業の規模や資本金に依存しており、優れた技術を持つスタートアップや中小企業が参入できない構造になっている。また、納品後の改善作業が十分に行われないため、技術負債が増大し、システムの長期的な運用コストが膨らんでいる。
具体例: 大手企業に発注されたシステムが納品されたものの、後から発覚した問題が多く改善されないまま運用が続けられた事例がある。
改革案:

  • 契約制度の柔軟性を高めるために、委託契約だけでなく準委任契約も活用するべきだ。特に、準委任契約はアジャイル開発に適しており、要件が変動する場合でも柔軟に対応できる。

  • 韓国のファンクションポイント制を参考にし、システムの品質と複雑さを基準にした契約評価を行うことで、納品物の品質を向上させる。

  • 納品後の継続的な改善を支援するため、別途アジャイル改善予算を確保し、年度途中でも改善ができる体制を整える。ソースコード納品後も、その改善が可能なエンジニアやデザイナーを増員し、持続的な改善プロセスを導入する。


5. 会計の改革

現在のデジタル関連予算は、各省庁ごとに管理されており、全体的なコスト構造が不透明である。また、古くなったシステムがそのまま使われ続け、技術負債が蓄積するため、長期的には非効率なシステム運用が続くリスクがある。
具体例: 都庁内のあるシステムでは、運用費や更新費が膨大にかかっているにもかかわらず、新しいシステムへの移行が予算不足で進んでいない。このため、結果的に非効率な運用が続いている。
改革案:

  • デジタル関連費用を横断的に管理し、新規開発、改良、保守に関する予算を一元化する。これにより、デジタル化に必要なコストの全体像を明確にし、予算の適切な配分が可能となる。

  • 公務員の減少を考慮した予算計画を立てる。


6. システム評価の改革

現在のシステム評価は、内部的な視点に偏っており、実際にサービスを利用する市民のフィードバックが十分に反映されていない。そのため、使いにくいシステムが運用され続けている。
具体例: 市民から避難情報システムが使いにくいとのフィードバックがあったにもかかわらず、改善が行われず、台風時にアクセス集中でシステムがダウンした。
改革案:

  • 行政サービスの評価に市民の声を反映させるため、アプリストアのようなレビューシステムを導入する。これにより、市民からのフィードバックを受けて迅速に改善が行える体制を作る。

  • サービスの利用状況や体験の質を数値化し、すべてのデータを公開することで、透明性を高め、継続的な改善サイクルを確立する。

  • アクセシビリティのガイドラインを制定し、社会的弱者や高齢者、障害者の視点を取り入れたシステム評価を行う。


7. スマートシティからスマートシチズンへ

現在のスマートシティ構想は、データによって都市を管理するという発想が主流だが、市民にとっては監視の強化と捉えられ、受け入れられにくい。東京都が目指すべきは、デジタル技術を活用して市民が積極的に行政に参加できる「スマートシチズン」の育成だ。
具体例: オードリー・タンが主導する台湾のGoV0は、市民が政策形成に直接参加するプラットフォームを提供し、非常に高い市民参加率を誇っている。スペインのDecidimも同様に、デジタル民主主義を基盤とした政策形成を推進している。
改革案:

  • 市民が行政のデジタルサービスに直接参加できる仕組みを構築する。たとえば、ユーザーテストやOSSプロジェクトへの参加、デジタルフォーラムでの意見交換など、市民が行政サービスを作り上げるプロセスに関与できるようにする。

  • スマートシティではなくスマートシチズンの方向性を強化し、デジタル技術を使った市民参加を促進するためのインセンティブ制度を導入する。




8. エンジニアリング組織の骨太なテクノロジー戦略

エンジニアリング組織が確立された後は、骨太なテクノロジー戦略が求められる。これは、データセンターやクラウドサービスの活用、内製化戦略、シンクタンク機能の確立といった長期的な視点からの計画を含む。
具体例: データセンターを自前で持つか、パブリッククラウドに依存するか、またはハイブリッド運用するかなど、セキュリティとコストのトレードオフを検討する必要がある。
改革案:

  • 内製化の対象を明確にし、短期的にはモバイルアプリやウェブサービスを優先的に内製化し、徐々に基幹システムへと移行する戦略を取る。

  • データセンターの直営化の可能性を検討し、コストとセキュリティのバランスを考慮した上で、最適な運用形態を選定する。



結論

東京都のデジタル化は、根本的な改革を伴う8つの領域における施策が成功の鍵となる。道具、人、作り方、契約調達、会計、評価、スマートシチズン、そしてテクノロジー戦略の改善を通じて、持続可能で市民に寄り添ったデジタル社会を実現できる。

以上


このメモを作って3年半くらいたった。手を打てたこともあるけど未着手のこともある。そもそも筋が違ってる、、という赤面するものもあります。
この時点では想定から抜けてたのが、区市町村のデジタル化のサポート。特に標準化の対応がここまでパワーがかかるとは想定の外だった。これはガブテック東京を作って挽回しにいってる。

もう一つは国と連携して一緒に作るという視点もこの時点では弱かった。子供領域から国と連携強化を探っている。

生成AIとか当時は当然だけどこれっぽっちも言及できてない。技術の進歩の凄まじさ。冗長で馬鹿みたいにボリュームのでかかったオリジナル原稿をあっさりとわかりやすく要約してくれる。行政デジタル化の敏腕コンサルのつもりでこの原案をボコボコにクリティカルシンキングでぶった斬れというと容赦無くやってくれる。

過去の自分の見通しと今を答え合わせをすると自分の見通しの限界がわかって面白い。自分の力をさほど信用せずに意見をよく聞く、柔軟にやっていきます。力を貸してくださる人いればぜひ採用ページをどうぞ。絶賛採用中です。カジュアル面談からでもどうぞ。


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