新年の挨拶。これまでとこれから。
新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます。
東京都副知事兼GovTech東京理事長の宮坂学です。
まずは、昨年までの取組を振り返りながら、今年の抱負をお伝えしたいと思います。
GovTech東京が掲げるビジョン「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」を軸に、今年も一歩ずつ着実に前進してまいります。皆様のご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
1. GovTech東京の取り組みと成果
組織の設立とビジョン
一昨年7月、「東京全体のDXを推進する」ために「GovTech東京」を立ち上げました。私自身は理事長として、
都庁各局DX
区市町村DX
デジタル基盤強化・共通化
デジタル人材の確保・育成
データ利活用推進
官民共創・新サービス創出
といった6大事業を中心に、まずはクイックウイン(速やかな成果)の創出に取り組んできました。
GovTech東京のビジョンは「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」。都内62区市町村はもちろん、“首都・東京”として全国1700以上の自治体、さらには世界で民主主義の価値観を信じる都市のデジタル化に貢献していきたいと考えています。
区市町村との協働事例
自治体システムの標準化支援
現在自治体にとって最も重要なテーマである「自治体システムの標準化」について、すべての区市町村がスムーズに移行できるよう支援を強化しています。広域自治体の立場から、現場である区市町村の声を取りまとめ国と精力的に調整するなど、“首都・東京”としての役割を果たしました。国側が自治体の実情に即した方針改正に動き出すなど、一定の成果につながっています。デジタルツール等の共同調達
RPA、AI-OCR、パソコン端末等の調達で20億円以上のコスト削減を実現しました。単独調達よりも10%〜50%超のコストメリットを得られるケースもあり、参画自治体間でナレッジを共有できる場も構築。財政・運用の両面で持続可能な構造を育んでいます。区市町村DXアワード
各自治体のデジタル化事例を共有し合う試みとして実施しました。多くの区市町村の情報化担当者の皆さんと「顔の見える関係」を築けたことは、今後の更なる連携に向けて大変大きな成果となりました。
中期経営計画の策定
設立後初となる中期経営計画を策定し、2040年に向けて以下3つの目標(KGI)を掲げました。
デジタルサービスに対する都民の90%以上がポジティブに評価
誰もが使いたくなるサービスを生み出し、全国の半数以上の自治体で採用
1000人以上のデジタル人材が公共領域で活躍し、うち100人以上がCIO等の主要ポストで活躍
その第一歩として、2027年を目標に3つの軸で取組を展開します。
サービス品質の変革:「ダメなサービスを撲滅し、ダメなサービスを放置しない」を徹底
内製開発力の獲得:外注開発+内製開発のハイブリッド型に転換
持続可能な経営基盤の確立:サービス品質の変革や内製開発を持続的に進める経営の仕組みづくり
つながるDX:子供分野(保活)の事例
都・国・区市町村・民間企業など、さまざまな組織をまたぐサービス連携が不可欠であるという考えのもと、まず「保活のワンストップ化」を進めました。保護者向け民間アプリや保育所の園務管理システムを連携させ、保育園探しから入園手続きまでオンラインで完結できる仕組みを整備中です。
「デジタル行政サービスを提供する意義は、市民が窓口に並んだり電話を何件もかけたりする手間を省き、“手取り時間を増やす”ことにある」――改めて実感する大きな学びとなりました。
2. 都庁のデジタル化の推進
都庁DXの進展と「良い開発の型」
都庁自体のデジタル化も進んでいます。各局の優れた取組を共有する「都庁DXアワード」には、23局から31件のエントリーがありました。
今後は「良い開発の型」を確立し、誰が作っても“より良いもの”が安定的に生まれる環境づくりを進めていきます。
人を育て活かす
持続可能な行政サービスを提供し続けるためには、行政知識と情報技術の両方に精通した人材が欠かせません。そこで「公務員技術者(ICT職)」を創設し、早期に情報技術政策の主要部門を担えるよう育成プログラムを強化しています。
都庁内情報システムのクラウド化
メールやチャット、ファイル共有などの基本的な情報システムの機能を大幅にクラウド環境に移行しています(2025年度完了・運用開始)。
「よりよい仕事のためには、よりよい道具から」。生成AIなど常によい道具を職員へ提供し、都民サービスの向上へとつなげます。あわせて、各種業務システムのクラウド対応も始まっており、個別最適なクラウドシフトを防ぐため全庁的なクラウド戦略を策定。数百に上る業務システムのクラウド化を計画的に進める土台を整えました。
AI社会への取組
急速に進む生成AIの活用に対応するため、「文章生成AI利活用ガイドライン」を策定しました。また、AIを徹底活用した業務効率化や都民サービスの変革に向けた戦略の策定に向け、昨年末に「東京都AI戦略会議」を設置し、東京大学の松尾豊先生を座長に第一線で活躍されている専門家の方々と議論を進めています。
GovTech東京では内製による開発環境を整え、都庁各局がバラバラにAIを導入しないようガバナンスをかけるとともに、そこで生まれた知的資源を積極的にオープン化していく予定です。さらにAIエンジニアである安野貴博さんにアドバイザーに就任していただき、内製開発でブロードリスニングを実施しました。
(シン東京2050(仮称)策定に向けたご意見大募集 ~みんなでつくる「シン東京2050」プロジェクト~ https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/choki-plan/ikenbosyu)
つながる東京
令和6年能登半島地震から得た大きな教訓の一つが「通信の重要性」です。いかなる事態にも耐えうる「つながる東京」を目指し、
全ての自治体へのスターリンク配備
海底ケーブルの二重化
携帯キャリア各社トップと都知事のラウンドテーブル開催
といった取組を推進しています。今後も通信インフラを守るため、着実に施策を前進させてまいります。
都庁の構造改革「シン・トセイ」
デジタル技術の導入を契機に始まった都庁の構造改革「シン・トセイ」は4年目に入りました。当初は紙・FAX・現金払いなど“原始的”な慣行の撤廃からスタートし、行政手続のデジタル化へと重心を移行。手続きのデジタル化率は5%から80%を超えるまでに進み、あわせてアナログ規制の見直しも推進しています。
(行政手続デジタル化ダッシュボード https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/procedure/progress )
3. 官民連携・イノベーション推進
Tokyo Innovation Base
2023年11月にオープンした、世界中のイノベーションの結節点を目指す「Tokyo Innovation Base」は、多様な人々が交流し、革新的なアイデアやテクノロジーを社会へ実装する拠点として、1年で10万人を超える来場がありました。世界40カ国以上・国内100以上の自治体の方にお越しいただきました。
SusHi Tech Tokyo
昨年5月、世界が直面する課題に立ち向かうテクノロジーやアイデアが集結する「SusHi Tech Tokyo 2024」を開催し、430社のスタートアップ、国内外45都市が参加、60万人の来場を実現しました。今年の「SusHi Tech Tokyo 2025」は5月8日から10日まで開催予定ですので、ぜひ日程の確保をお願いいたします。
4. 2025年に向けて
「脱皮しない蛇は滅びる」(ニーチェ)
この言葉は、デジタルガバメントを担う私たちすべてが胸に刻むべきものです。巳年にふさわしく、私たちは新たに脱皮し、進化した組織へと成長していきます。
ここ数年で都庁のデジタル化は着実に進んだとはいえ、都民の期待にはまだ十分に応えられていません。今年はちょうど昭和100年であり、終戦から80年、男女雇用機会均等法成立から40年、そしてIT基本法成立から25年という節目の年でもあります。
数年後に「2025年は行政のデジタル化にとって大きな転機だった」と振り返られるよう、成果を残していきます。
「手取り時間を増やす」
先日の会議で子育て世帯の方から、「さまざまな子育て支援はうれしいが、何より忙しいのでワンストップで便利なデジタル化こそが一番助かる」というご意見をいただきました。
行政のデジタル化が最終的にもたらすものは、都民一人ひとりの「かけがえのない時間」を取り戻すことだと考えています。いつでも・どこでも・誰もが簡単に行政手続を行える環境を整え、都民の「手取り時間を増やす」ことに挑戦してまいります。
政策DXの取組
そのために力を入れるのが「政策DX」です。従来のデジタル化は部署単位・業務単位のアナログを置き換える仕事でしたが、これからは組織横断、さらには国や区市町村との連携を見据えたBPRである「BPX(ビジネスプロセストランスフォーメーション)」を行い、そのうえでDXを実装していくアプローチを増やしていきます。
組織の壁を超え、国や区市町村をも巻き込むことは難易度が高いですが、効果は絶大なはずです。あえて難しいことに挑戦し、都民の「手取り時間を増やす」サービスを生み出していきます。
「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」
GovTech東京が掲げる「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」というビジョンのもと、未来を作り出す姿勢で邁進します。デジタル化やAIといった技術革新が起こってから慌てて対応するのでは後手に回るばかり。進取の精神で、新たな技術や考え方を常にキャッチアップし、起こるべき未来を先取りして構想・実行していきます。
そして、その成果はデジタル公共財として都庁だけでなく、62区市町村や全国の自治体、さらには世界へも開放し、広く貢献していきたいと考えています。そのためにも重要なのは内製への挑戦です。システムだけでなくノウハウや制度、ガイドラインなどあらゆるデジタルの知的資産を、外部から調達する従来のやり方に加え、新たに内製開発することで、著作権を行政でコントロールできるデジタル公共財を増やしていきます。行政分野でサービスや制度の内製開発に関心のある方はぜひお声がけください。
皆様からのご指導・ご協力をいただきながら、一歩ずつ着実に前に進んでいく所存です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
東京都副知事 宮坂学
(参考リンク一覧)
GovTech東京 https://www.govtechtokyo.or.jp/
区市町村DXアワード https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/kushichoson-dx/dxaward/2024
東京都デジタルサービス局 事例紹介
文章生成AI利活用ガイドライン https://note.com/kouzoukaikaku/n/nf4397ae3f0dc
通信強化策「つながる東京」 https://note.com/smart_tokyo/n/n577b25001e4a
Tokyo Innovation Base https://tib.metro.tokyo.lg.jp/
SusHi Tech Tokyo 2025 https://sushitech-startup.metro.tokyo.lg.jp/