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最初の100日で何をすべきで何をすべきではないか?

人は無能に到達するまで昇進するという「ピーターの法則」というのがある。

「階層型の組織においては、どんな人も、昇進を繰り返すことでいずれは能力の限界に達し、十分に職責を果たせなくなって無能化する。その結果、「あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる」という。 
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-20919.html

グロービス

とくにリーダーが劇的な環境変化に異動、転職、抜擢で放り込まれるとこの法則が強烈に作用する。なぜなら周りの方が知識や経験があり自分がその組織内で最もそれがない人になってしまうからだ。一方で、この人は何かしてくれるのでは?という期待を関係者からは持たれる。「組織内で最も無能なのに最も期待される」という特殊状態を過ごすことになる。

12年ほど前に突然、社長をというキャリアチェンジを経験をしことがある。そして5年ほど前に副知事をというキャリアチェンジも経験したことがある。いずれも直前の仕事とあまりに違うキャリアチェンジ。準備不足のままリーダーとして振る舞う特殊な経験だった。

特に前者の時は右往左往していた。どうしていいかわからない?そんな時にいろんな人に話を聞きにいったり本にすがったりしたのだけど、最も役立った一冊は「CEO 最高経営責任者」。残念ながら絶版。

この本のユニークさはまずは選ばれてる人の豪華さにある。
財務長官からハーバードの学長になったサマーズ。
RJRナビスコからIBMに移籍したガースナー。
ジャックウェルチから引き継いだイメルト。
など米国の当時のトップリーダーが全く違う環境に異動した際の経験談が語られている。そして二つ目のユニークさは成功体験を自慢するのではなく失敗したことを赤裸々に語っていること、いわばしくじり先生として話をしてくれてる点だ。

歴史に名を残すスターなリーダーでさえ最初の100日は過酷だったことが赤裸々に語られる。それでは新任リーダが最初の100日ですべきは?してはいけないことは?なにだろうか?

最初の100日でもっともしてはいけないことで共通するのが「華麗にビジョンを語り戦略を策定して期待値をあげること」はしてはいけない。逆に最初にすべきことはなにか?「勉強マシーンになること。具体的には資料を読み人に会って話を聞きまくる」こと。つまり最初の100日は「口はほどほどにして耳と目と足を動かせ」ということだ。

例えばこいういう問いをひたすら繰り返しして過ごした著名経営者がいる。

一人1時間、精神分析医のようにひたすら聞き続ける。それを50人。ものすごく消耗する仕事だけどこのインプットが次の100日の基礎になった。

守り続けるべきことを5つ挙げるとしたらそれは何か?その理由は?
逆に変えるべきことを3つ挙げるとしたらそれは何か?その理由は?
私に期待することは何か?
私について懸念することは何か?
私に何か助言してもらえることはあるか?
このほかに私に話したいこと、質問したいことはあるか?

CEO 最高経営責任者

そのほかの印象的な肉声が以下。以下は複数のリーダが語っている言葉だけど驚くほど共通性があるのに気がつくと思う。

  • いま知識が豊富だからという理由で昇進することなどありえない。どれだけはやく深く学習し身につけられるかが評価される

  • 何が問題かわかっていると思っていた。そして、それは間違いだった

  • 前任者をどう扱うは極めて重要であり、しかもひどく簡単に過ちを犯しやすい

  • よそ者には、バカな質問が許されるという得難い特権が与えられる

  • 自分は何も知らない部外者だと考えるようにした

  • せっかちすぎて上手く進まなかったことがいまになるとわかる。

  • 最初にすべきことは何もしないことだ。新任リーダーは自分が思ってるほど状況を理解していない。仕事ができることを見せつけようとか思わないことだ。まずは立ち止まってできるだけ聞き役に徹すること。それがトップとして最も大切なことだ。

  • 口を開く前にやるべきことがあることを理解していなかった(サマーズ)

  • 座って聞くだけで、多くを成し遂げられるのだということを私は学んだ。

  • たとえ危機が迫っていても、聞くことに時間を費やすのは無駄ではない

  • 人間は自分の話を聞いてもらうのが大好きである。

  • 人を知るには質問することだ

  • 今、現在のIBMに最も必要でないもの、それはビジョンである。たった今求められてるものは実践性の高い事業ごとの戦略である(ガースナー)

  • 短期戦略は「小さな約束、大きな成果」

  • 新CEOが着任するなり、戦略を披露するなんて馬鹿げている

  • 新しい事業環境に乗り込んできた新米経営者は必ず苦い現実に気が付く。それは、最も無知な時に最も自分の最高を発揮しなければならないという事実だ

  • 文化に馴染めないトップは簡単に弾き出される

  • 改革は上から命じるものではなく、中から生み出すものだ。何万人もの社員の考え方や行動を変えるのは、大変な難事業だ。二、三度演説をしたり宣言文を書いたぐらいでは何も変わらない。社員を信じなければダメだ。(ガースナー)

  • 誰、ではなく、何、が悪かったのか?

  • 上司(または取締役会)の仕事へのモチベーションを理解する

  • 株主にもっと高い価値を提供する、などと言っても社員は心を動かされない

  • 最も好ましくない過ちは立派な約束をしてお粗末な結果を出すこと

  • 会議にはかならず2分前に到着する

  • 最初の100日はあちこちに回って有権者に訴える選挙運動期間のようなもの


どうでしょうか?特に自分はサマーズさんとガースナーさんの言葉が強く響くことが多かった。ガースナーさんの名著といえば「巨像も踊る」。これは大組織で新任リーダをする人にはおすすめです。

最初の100日はその後の100マイルトレイルランニングレースのウォーミングアップみたいなもの。結果を本当に出すのはその後の100マイルであって100日ではない。当時はトレイルランニングをしてたからこのことを自分に言い聞かせながらやっていた。それでもせっかちにペースアップしてしまったけどね。

新年度、自分も新しい役割もあり、今年度の最初の100日が始まります。しっかりウォーミングアップして取り組みます。

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