大きな数も小さな数も,想像できないのに
海の深淵を画面スクロールで体感できる楽しいサイト (https://neal.fun/deep-sea/) を教えていただきました.深海1万メートルの「1万」,こんなにも大きな数だったんだなと驚きます.
私たちの太陽系がどれだけ広いのかを体感できるサイトもあります.このサイト,スクロールしてもスクロールしても次の惑星にたどり着けないという,この圧倒的な広大さ!
宇宙規模のスケールから原子核のスケールまでを俯瞰するすばらしい映像教材が,こちらのPowers of Tenです.
日本語版はこちら
1万,1億,1兆,1京,...と数が大きくなっても,その数の表記に必要な文字数は変わらないままなので,だからこそ,大きな数字を記録したり,自在に計算できたりするんですよね.
Powers of Tenの「Power」とは「べき」のこと.1000を10の3乗,10000を10の4乗,,,のように3乗,4乗,...と桁を表す部分のことです.
以前の記事で,kHz, GHz, ZHzという回転数について触れたのですが,この速さ,全然想像できなくないですか?
たとえば,回転速度が10kHz,つまり1秒間に1万回も回転するとはどういう状況でしょうか?
回転によって生じる遠心力は,(物体の質量)×(回転軸から距離)×(角速度)×(角速度)なので,遠心力による加速度としては,(回転軸から距離)×(角速度)×(角速度).10kHzの場合,回転軸から1mmほど離れたところであっても,(10の-3乗 m)×(10の5乗 1/s)×(10の5乗 1/s)= (10の7乗 m/s^2).地球上の重力加速度は9.8 m/s^2 なので これは地球上の重力の10の7乗倍程度!1千万倍の重力!
アリさんの重さは0.004g程度らしいので,この遠心力の世界では,アリ1匹が,人間一人分の重さになる.う,,,想像するとなんか怖い.
宇宙には,白色矮星というのがあって,例えばシリウスBという白色矮星は,太陽と同程度の質量,半径は太陽の0.016倍,その表面重力は地球上の11万6千倍らしいです. (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E8%89%B2%E7%9F%AE%E6%98%9F)
つまり,10kHzで回る回転体の回転半径1ミリメートルでの遠心力は,白色矮星シリウスBの表面重力の100倍ものGに相当するらしい.う,,,よくわからない.
我々のグループで使っている超高速ローターは管径数ミリ程度のものが数十kHz回転するのですが,ローター自体が白色矮星の表面重力の100倍などというとてつもなく巨大な遠心加速で破壊されないように,めっちゃめちゃ硬い素材(ジルコニア)でできているらしいです.このめっちゃめちゃ硬い素材を利用できなかった時代には,1秒間に数万回転というのは実現できなかったんですね.回転数を上げるとローター自体が遠心力で破壊されるらしいです.う,,,思い出すたびに圧倒されます.
宇宙,海,原子,原子核,... こうした巨大や微小な数を,自在に計算できたとしても,実感が伴わないのが歯がゆかったりします.想像できなくても記号操作できるという数学の抽象化の力というのは,スバラシイですよね.
最後に,ここまでに登場した数なんて巨大なうちには入らないよ,という,もう,一体どういうことかとあ然とする数学の世界,「巨大数」へのリンクをシェアしておきます.
なかでもグラハム数というのは,「数学の証明で使われたことのある最大の数」と1980年ギネスブックに認定されているとか.
もう,冒頭からぶっ飛んでいます.
極めて巨大な自然数であり、指数表記を用いるのは事実上不可能なため、特別な表記法を用いて表される
こんな記述も.
G(2) までは関数電卓やパソコンでも普通に計算できるが、G(3) ですら既に3の累乗を7兆6,255億回以上繰り返した数であるため、現実世界の現象で例えることなど到底不可能な巨大数になっており、
この頁のクヌースの矢印表記で書かれた数式たちの美しさ.なんか見ているだけで楽しいですね.圧倒され過ぎて(その数学的内容を把握しようという脳みその回路は瞬時にショートするので),アート作品を鑑賞するかのように,数式のデザインの素晴らしさに感じ入ります.
コンウェイのチェーン表記というのも教えていただきました.
そこに登場する数たちの巨大さを思うと,なんか,もう,とてつもない畏怖を感じるというか,畏怖を超えた世界があるというか.グラハム数やアッカーマン関数のことを教えてもらった日の夜は,触れてはならないものに触れてしまったような,なんとも奇妙な気分になって,眠れませんでした.
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