なぜカスタマーと共にマーケティングに取り組むか?コミュニティブランドVECTORという考え方
*このnoteは cmkt コミュニティの #Adventar 企画の投稿です。
実はつい先日まで「カスタマーマーケティング」という言葉を知らなかったんです。でも、Adventar1日目のこの記事を読み、「これまでコミュニティマーケティングという文脈で考えてきたことと似てる!」とすごく共感して、Adventarに参加することにしました。
特にこの部分は、コミュニティマーケティングを10年ぐらい代理店時代から支援してきた中でずっと課題でした。
ハイタッチではないスケールする方法で、見込み顧客にリーチすることで、既存顧客から新規顧客の獲得の部分のサイクルを意図的に再現する、ということです。すなわち、カスタマーマーケティングとは、カスタマーサクセスをマーケティングの手法でスケールさせるための考え方なのではないか
この課題を突破するために事業会社の中に入って、コミュニティをマーケティングに活かそうと思ったたぐらいに。(今の仕事は↓です)
カスタマーマーケティングとは「カスタマーを獲得した ”後” に彼らに対して行うマーケティング活動のすべて」とのことです。
でも、マーケティング手法なんてめちゃくちゃたくさんあるんです。デジタルマーケティングだけでも「本屋の本棚いくつ占拠するの!?」ってぐらい本がある。
なぜ「カスタマーマーケティング」や「コミュニティマーケティング」みたいなカスタマーを巻き込む・面倒な手間のかかるマーケティング手法を取らなくちゃならないの?
紹介(リファラル)で顧客が増える、LTVが増える。とかあるけれど、なんとなくそれだけじゃ説明できない価値をモヤモヤと感じていました。
カスタマーを巻き込まないとできないこと、自社で取り組むにはどうしたらいいのか?をフレームワークを交えて紹介します!
「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」
これは、T・レビット博士(1968)の有名な言葉で、ジョブ理論などでも引用されていますね。つまり、ドリルというProduct(商品)ではなく、ドリルを使って得られるExperience(便益)=穴が重要ということです。
確かにそう思う。間違っていない。
でも、ずっとこの言葉に実は違和感を感じていました。。。
え?感じません?
僕の違和感は、
「最近、穴がほしいと思ったことなんて何年もないんだよな。。。」
マンションぐらしでDIYが趣味とかじゃない限り、穴をあけたいことってあまりないと思うんです。
つまり、「穴をあけたい」というニーズには、その前提として「マイホームに住んでいて、DIYが必要になる」というCulture(文化)が背後にあると思うんです。
そう考えると、いろいろなマーケティング課題の背景が見えてきます。
「なぜ、若者はビール離れするのか?」ここにも、ドリルの穴と同じ文化的背景があります。
昭和の時代には、飲みに行くのも仕事のうちで、社内の人間関係をそこで作ることが終身雇用の仕事関係の中で必須だったと思うんです。
忘年会に行かない #忘年会スルー とか許されなかったわけです。
そして、そこには「とりあえずビール」、「一杯目はビールだろう」という文化があったんです。
だから、もしビールメーカーのマーケターだったとして、「若者のビール離れ」を解決したいと思ったらどうするか?
Productを作っても、Experienceを改善しても売れないんです。
ビールを飲む文化を新たに作らないといけないんです。
若者のクルマ離れも同じですよね。
交通機関が発達した都市部に人が集中し、「クルマがなくても生活できる」、「クルマ持ってる男のほうがかっこいい?関係なくない?」という文化があるんです。
クルマが欲しいと思う文化をどう作るかがマーケターの腕の見せ所です。
(実際、新車販売は落ち込んでいますが、レンタカーやカーシェア需要は増加傾向にあり、所有→利用という文化の変化があります)
文化づくりにはカスタマー巻き込みが不可欠
なぜ「カスタマーマーケティング」や「コミュニティマーケティング」みたいなカスタマーを巻き込む・面倒な手間のかかるマーケティング手法を取らなくちゃならないの?
その答えは、文化は企業側だけでは作れないからです。そもそも、ビールを飲む文化、クルマに乗る文化はカスタマーを含む消費者側のものです。
だから、カスタマーを熱狂的ファンチームとして巻き込んでともに文化を作るコミュニティブランドに企業はなるべきだと思っています。
ここまでは講演で何度か紹介してきました。でも、
「文化づくりと急に言われても・・・」、「どんな文化を作りたいかわからないんです」という声が多く、どうしたら考えられるかをこの1年ぐるぐると悩んできて、ついにフレームワーク化を考えました。
フレームワーク:コミュニティブランドVECTOR
Vision、Experience、Culture、Togetherから文字をとってコミュニティブランドVECTORを定義することが文化づくりの一歩です。
先程、「若者のビール離れ」を話しました。
まさに、この文化的課題を解決していると思うブランドがあります。
ファンとともに、若者がビールを飲む文化を作っているよなよなエールのヤッホーブルーイングです。
そこで、コミュニティブランドVECTORを考えてみましょう。(この本などを参考にしましたが、あくまでも想定です)
ヤッホーブルーイングのコミュニティブランドVECTORを勝手に考えてみた
ヤッホーブルーイングのサイトのストーリーのところに、クラフトビールブームが終わった後に苦境に陥った話が書かれています。
8年連続の赤字のどん底時代とV字回復
しかし、ものの3年でブームは崩壊。
結果、業績はみるみるうちに急降下、
8年連続赤字を記録。
造っては売れていった日々は嘘のように、
営業に行っても門前払い。
何をやっても売れませんでした
日本の中では一番搾りやスーパードライのようなピルスナーという種類のビールが一般的ですが、その中でよなよなエールはエールビールという種類です。
でも、わざわざエールビールを飲む文化はないわけです。
飲み会に行けば、その場にある「とりあえずビール」が一般的な文化です。
そのなかで、多様なビールを飲んでもらうにはどんなCultureが必要か。
そう考えたと思うんです。
ただ、飲むのではなくビールの違いや味を楽しみたい。ワインはそういう文化が以前からあります。
同僚と飲むのではなく、ビール好き同士でビールを通じてつながった仲間と飲みたい。
そういうCultureが作れれば多様なビールが飲まれる市場が作れるのでは。
だから、こういうVISIONを掲げれば?
ビールに味を!人生に幸せを!
画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出することでビールファンにささやかな幸せをお届けしたい。
それがヤッホーブルーイングのミッションです。
Experience(ブランド体験)から、それが普及した時のCulture(ライフスタイル・文化)を考えて、VISIONをフレームワークにまとめるとこうなります。
では、ビールを作って売るだけでこのCultureが作れるだろうか?
同じビールでも製法が違って、味も違う。それを伝える必要がある。(僕も以前、ビール会社の支援をしていてビールに詳しくなればなるほど、ビール好きになった経験があります。)
だから、醸造所ツアーをしてみては。
ビール好き同士で飲みたくても、そもそも出会う機会がない。
だったら店舗を作ったり、超宴というイベンを作ったらどうだろう。
作りたい文化(Culture)とブランド体験(Experience)の差分からファンと一緒に取り組むべきこと(Together)が編み出されていきます。
このように考えると、カスタマーを巻き込むカスタマーマーケティングやコミュニティマーケティングに取り組むべき意義が考えやすいのではないでしょうか。
そして、ファンとの取り組みTogetherが強化されると、Cultureも強化され、それができるとVISIONも強化され、、、という相乗効果を生み出します。
先日、ある企業向けにコミュニティブランドVECTORを作るワークショップを実施しましたが、
これまで、なんとなく目的や位置づけが曖昧だったコミュニティに対する取り組みがすごく整理されて、良かったです。
という感想をいただき、とても好評でした。
みなさんも一度、自社サービスがどんなコミュニティブランドVECTORを作ろうとしているのか、考えてみてはいかがでしょう?
続きはTwitterで!
今度コミュニティブランドVECTORの実際の作り方も紹介しようと思ってます。
Adventカレンダーもまだまだ続きます!
明日は、カスタマーサクセスの浜内たるぽさん!