見出し画像

「ライター適性検査」を考えてみた。

文章がうまいことは、ライターに求められる適性の1つではあっても、けっしてすべてではない。では、求められるほかの適性とは? 10問10答のかんたんな適性検査を作ってみた。配点は各問とも「はい」が10点、「いいえ」は0点、「どちらともいえない」が5点である。

Q1.子どものころから作文が得意でしたか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●意外なことに、「子どものころから作文が得意だった」という人は、ライターにはけっして多くない。少年時代に「作文コンクールあらし」と呼ばれた私(やや自慢)のようなタイプは、むしろ少数派なのだ。だから、この問いに「はい」と答えられなくても、気にすることはない。

Q2.勉強が好きですか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●ライターの仕事は一夜漬けの勉強のくり返しだから、勉強すること自体が苦痛で仕方ない人は、ライターには向かない。ただし、ここでいう「勉強が好き」とは、「成績がよかった」ことを意味するものではない。たとえ学校では劣等生であっても、知的好奇心が旺盛で、調べものをすることが苦痛でなければそれでよいのだ。だいたい、学校の勉強なんてつまらないに決まっている。私にしても、「勉強が楽しい」と思えるようになったのはライターになってからだ。

Q3.初めて会う人とも、すぐ普通に話ができますか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●未知の人に会って話を聞くことはライターの仕事の半分くらいを占めているから、社交的で人あたりがよいに越したことはない。人見知りの激しい人には向かない。未知の人に会って話を聞くことを楽しいと思えるならライターの仕事は楽しいし、そうしたことが苦痛ならライターの仕事も苦痛でしかない。
ただし、これもある程度は「慣れ」の問題である。最初は苦痛でも、取材経験を積み重ねると平気になってくる場合が多い。また、「普通に話ができる」という点が重要なのであって、能弁である必要はない。

Q4.孤独への耐性がありますか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●社交的なだけではダメ。ライターは一面ではすごく孤独な仕事だから、社交的すぎて孤独に耐えられないような人には向かない。たとえば、単行本の執筆が佳境にさしかかると、一週間くらい家にこもりきりになる場合もざらにある。それに耐えられなければならない。そもそも、執筆自体が本来孤独な作業である。だから、「時と場合に応じて社交的になれる半ひきこもり」という感じのやや矛盾したキャラが、ライターには求められる。

Q5.整理整頓が得意ですか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●一見どうでもよいことのようだが、これはけっこう重要なポイントだ。「山根式袋ファイル」で知られる山根一眞や、『メモの技術』を書いたノンフィクション作家・中野不二男など、物書きには整理術に対して一家言ある人が多い。なぜかというと、大量の資料をさばきつつ仕事をこなしていく売れっ子ライターになるためには、整理整頓が得意でなければならないからだ。「整理魔」と呼ばれるくらいが望ましい。もちろん、中にはグチャグチャになった資料に埋もれたままのライターもいるが、そういう人はえてしてあまり有能ではない。

Q6.オプティミストですか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●ここでいう「オプティミスト(楽観主義者)」とは、「ネアカ/ネクラ」の二分法でいう「ネアカ」のことではない。フリーライターという仕事に宿命的につきまとう将来への不安と生活不安定を、気にせずにいられる図太い神経の持ち主だということだ。たとえ見た目がネクラであったとしても、フリーライターとしてちゃんとやっている人は、根っこの部分でオプティミストである。「一寸先は闇だけれど、光であるかもしれない。オレの力で一寸先を光にするから、だいじょうぶ」と思えるくらい楽観主義者でないと、フリーでやっていくのはむずかしい。

Q7.「書きたいテーマ」がありますか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●ただ漠然と「ライターになりたい」と思っているだけの人より、「いつかはこんなテーマで著書を出したい」という具体的な目標をもっている人のほうが、はるかにプロに近い。要は、将来へのヴィジョンと向上心があるかどうかという問題。

Q8.マメですか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●マメな人ほどライターに向いている。面倒くさがりには向かない。記事を仕上げるとき、「もう1本の確認電話」を怠ったばかりに、重大な誤報を犯してしまうかもしれない。あるいは、取材相手への1枚の礼状が、次のもっと大きな仕事に結びつくかもしれない。こまごまとしたマメな気配りができる人とそうでない人は、ライターとしてのキャリアを積めば積むほど、大きく差が開いていく。

Q9.健康に気をつかうほうですか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●三島由紀夫は、「歌道の極意は身養生にあり」という藤原定家の言葉を座右の銘にしていた。不健康で自堕落な生活をつづけ、そのことをむしろ“売り”にしているような人が多い小説家のなかにあって、三島はよい作品を書くために健康であろうと心がけていたのだ(三島が敬愛していたトーマス・マンもそうであった)。ライターもしかり。不規則・不健康な生活になりがちだからこそ、また、身体を壊した場合の保障がない仕事だからこそ、ライターは人一倍健康に気をつかわなくてはならない。ライターも究極のところは「体力勝負」であるのだし……。

Q10.「自分には才能がある」と確信できますか?
 はい/いいえ/どちらともいえない

●「もうライターやめようかな」と思うようなぎりぎりのところでライターを支えてくれるのは、この確信である。これがないと長続きしない。私の知人の駆け出しライターは、A社に原稿持ち込みをしてけんもほろろにことわられたあと、その足で「ついでだから」とB社にも持ち込みをした。これくらいの根性があれば生き残っていける。たった1人の編集者に否定されたくらいで落ちこんでしまうようではダメだ。
もっとも、才能がないのにプライドばかり高いライターほど始末に負えないものはないから、そのへんの兼ね合いがむずかしい。編集者からのリテイク要求には素直に従いつつ、なおかつ胸の奥では自分の才能を確信しつづける――そういう姿勢が望ましい。

■いかがでしたか? ちなみに私の自己採点は当然100点満点です(笑)。これはあくまで私が考える適性にすぎないので、点数が低くてもあまり気になさらぬように……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?