父が脳梗塞で倒れた話7
6日目の早朝、病院からの着信と留守電があった。
心臓が縮み上がった。
明日の造影剤の検査のお知らせだった。
今日は弟の仕事が休みのため一緒に病院へ。
おばちゃんは、祖父を散髪屋に連れて行くので今日は来なかった。
行く前に、よく父とも行ってた地元のうどん屋さんでランチ。
弟はカツカレー丼定食、私はそぼろ定食。
ドラッグストアでオムツとティッシュを買い、市場を通って病院へ。
病院の事務局に寄ったが、ここの人は不親切というか潔く事務的というか…うんざりした。
どうやら父は自分で座りたいらしく、座ろうともぞもぞしていたところ、看護師さんがベッドの背もたれをあげてくれた。
この看護師さんは好き。
弟は、父に写真を持ってきて見せていた。
よっしゃ!あのな……えーとな…おまえの…うーん…
今日はこれの繰り返し。
今日もよく笑ってた。
弟は途中で帰った。
なんで倒れたんかわかる?と聞くと、目を伏せて首を横に振った。
脳梗塞やでー。糖尿放ってるからやん。首の血管が詰まったんやて。こんな太い血管、なかなか詰まらんらしいで!友達といたから助かったんやて。たまたま新しい薬も使えたんやて。よかったなー。
話す間、ふんふんと聞いていた父。
明日、造影剤の検査らしいわと伝えると、へえ~って。
知らんのかいな。
患者には説明しないのかな。
しても無駄と思ってるとか?と勘繰る。
しばらくしたら、また
あのな……えーとな…おまえの…うーん…
せなあかんことが…
ん?私のせなあかんこと??
して欲しいことがあるのか、私に学校に行けって言うてるのか。
動く左手だけで酸素マスクの紐を結ぼうとしていた。
あえて手助けをするつもりはない。
できることは、自分でね。
無理やろ~とかも言わないようにしたいな。
父はうーんってしばらく考えると、頭が疲れるみたい。
あ~…っと諦めていた
明日検査やし脳みそ疲れたらあかんし帰るわな~!と帰ってきた。
何の薬を何のために使ってどういう治療をしてるんか聞きたかったけど聞くの忘れてた。
必要な手続きが多すぎてだるい。
ま、しばらくしゃあないわなと自分に言い聞かせた。
大学は行かなくても人生は進むけれど、息子の用事は無くならない。
毎日父の病院の後保育園へ迎えに行き、この日は歯医者へ連れて行った。
そろそろ息子にも父のことを話さないとなあと思った。