『老舗ミニシアター 第二章へ着々』 no.5
先月半ばにオープンしたばかりの『ナゴヤキネマ・ノイ』に行ってきた。
ドキュメンタリー『その鼓動に耳をあてよ』は、夕方からの上映だった。
自ら選ばない類の作品だけど、オープニングにここが選んだ作品なので楽しみでもあった。
『シネマテーク』が閉館してから、このビルに来たのははじめてだ。
何も変わってないことに些か驚きながら、まあこのビルはそうだよねと、ひとり頷きながら階段を上がる。
ニューオープンと言うべきか、リニューアルの言葉が当てはまるのか、入口には『ナゴヤキネマ・ノイ』のネオンサインがあった。
通路は以前と同じようにポスターが貼ってあり、照明は前より少し明るくなっている。
器具はそのままのようだけど、電球をLEDに変えたのかもしれない。
チケットカウンターもロビーも特に変わった気がしない。
どこが変わったんだろう?
私はカウンターの前に突っ立ったまま、変わった場所はどこなのか無意識に探していた。
奥から人の話し声や笑い声が聞こえてくる。
オープンしたての浮き足だったような賑わいを、そこはかと感じた。
雨降りの平日なのに。
カウンターで残席を確認すると、タブレットを提示された。
座席はほどんど埋まっていたけれど、中央が空いている。
CFのページで見かけた男性からチケットを受け取り「オープンおめでとうございます」と声をかけた。
「ありがとうございます」
素っ気ない返事に思わず頬が緩んだ。
シネマテーク時代、彼はずっと映写機の担当で人前になど出なかったそうだ。
でも、今はそれどころではないのだろう。
スタッフ全員で切り盛りしないと人手も足りない。
こんな裏事情はCFに参加したからわかるだけで、そうでなければ知る由もない。
変わったのは見かけではなく、私の意識かもしれない。
以前はチケットを買うと整理券を渡されて、上映前になると順番に呼ばれた。
今はタブレットで残席がわかる。
これは、明らかに変化だと思う。
場内の雰囲気もあの頃とほとんど変わらない。
よく見ると壁や天井のクロスがきれいになっている。
座席のシートも新しくなっていた。
これからもここで映画が見られる。
そう実感した。