ふたりは仲良し?
「ホントに仲良しだねえ」
遊びにきたYさんが、うちの猫たちを見て目を細める。
「そうかなあ。寝るときだけ、くっついているんだけど」
一度、いさかいが始まると激しい取っ組み合いになる。噛みつきあったり、毛をむしりあったり、格闘技のように睨み合い、唸り声を上げ続ける。
ようやく一段落した時には、抜けた毛がふわふわと床を漂い掃除する始末に‥
仲がいい証拠だと、Yさんはいう。
彼女の家にも猫が2匹いるけれど、お互い近づかないらしい。
一階に黒猫、二階には茶白が居て、どちらもお互いの領域は侵さないとか。
「そうなんだ」と、私はあいまいに相づちを打った。
猫は好きだけど、それほど詳しくない。
人生の大半は自宅に猫がいるけれど、多頭飼いはこの猫たちが初めて。兄弟なので、生まれた時からずっと一緒にいるんだし、こんなもんだと思っていた。
猫にも相性があるのだ。あたり前のことだけど。
「見においでよ」
誘ってくれたので、後日、お邪魔することに。
Yさん一家は、郊外の大きな家に家族五人で暮らしている。
もともと二世帯住宅ではなく、最近リフォームして住まいを上下に分けたらしい。
1階はお義母様と黒猫、2階はYさん夫婦と茶白の猫、社会人の娘さんは、寝室が下で食事とお風呂が上と、なんとなく複雑な感じ。
玄関を開けると、吹き抜けの二階から茶白の子猫が見下ろしていた。
どこからか、静かに黒猫が現れ階段の一番下にすわる。
「ほらね」とYさん。
「見張ってるの!」
茶白は二階の踊り場でじっと待っている。
なんだろう? この空気は・・・
私は2匹を交互に見た。
茶白は見るからに気弱そうな子猫で、黒猫は毛がツヤツヤだ。
足もとですぐに毛繕いを始めた。
「すぐいくから、待っててね」
Yさんは笑顔で茶白に声をかけた。黒猫には目もくれない。
待ちきれなくなった茶白は、一段だけ降りようとした。その瞬間「フーッ!」と、黒猫が唸り声を上げた。毛が逆立ち、背中を上げて威嚇している。
茶白に目をやると、もういなかった。
黒猫がYさんの脚にスリ寄ったが、あっさりスルーされてしまった。
ちょっと気の毒な気がする。目が合うと黒猫は、私の脚にもスリスリしたので、しゃがんで背中をなでてあげた。
Yさんの後を追って、私も2階に上がる。
茶白はずっと2階にいて、一度も降りたことがないという。
「黒猫も上に来ないの?」
「あれは下、おばあさんの猫だから」
「・・・・・」
飼い主関係と、似ただけかもしれない‥
THE CATSLIFE =キジトラ兄弟の記録