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映画 「コンパートメント No.6」 を観る
この映画のことは朝刊の広告で知った。
モノクロの小さな広告だったけれど、車窓にもたれて眠っている女性の顔にどこか惹かれるものがあった。彼女はどこに向かっているんだろう。
ロードムービーだとすぐにわかるタイトルだった。
数年前まで新聞には映画欄があった。
テレビ欄と比べると、それはとても小さかったけれど、近くで上映されている映画が一目でわかった。
上映館とタイトルと期間だけ。私にはそれで十分だった。
いつの間にかというより、コロナウイルスの流行で映画館も閉鎖され、その時に紙面から消えた。
そしてその後、映画欄は復活しなかった。
私にとって都合の良い情報源だったので、とても残念に思っている。
今からでも復活してくれないだろうか?
映画館は平日のわりに人がいた。
今日の上映は3回で、私は午後の回にした。
本当はお昼前に行きたかったけれど、空席が少なかったのだ。
ストーリーはいたってシンプルで、モスクワに留学中のフィンランド人学生のラウラが、モスクワから寝台列車でムルマンスクに向かう。それだけだった。
旅の目的もシンプルで、古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見にいく。それだけだ。
この設定だけで、私はこの作品に魅力を感じてしまう。
でも「なんだそれは?」と思う人もいるだろうな、とも思う。
行ったことがなくても、モスクワは知っている。
ムルマンスクは初めて聞く地名だった。
モスクワから2000km、世界最北端の駅らしい。
途中、停車する駅も車窓も雪ばかりだった。
寝台列車の6号コンパートメントに、ラウラが乗り合わせたは粗野なロシア人労働者のリョーハだった。
出会いは偶然でしかなくても、同じ空間にいれば嫌でも言葉は交わす。
誰にも出会わなければ、物語は生まれない。
彼の素性はまったくわからないまま列車は雪の中を走り続ける。
一方、ラウラの素性もよくわからない。
モスクワでの彼女は居心地が悪そうで、幸せそうには見えなかった。
寝台列者の旅は意外に短かかった。
雪に埋もれたムルマンスクは人も街もどこか温かい。
彼女はモスクワに戻っても、旅立つ前とは違うはずだ。
この作品は原作があるようだけど、翻訳がないのは残念だった。
活字でも読みたいけれど、印象はかなり変わると思う。