『老舗ミニシアター 第二章へ着々』 no.1
朝刊の見出しに、目が釘付けになった。
夏に閉館したミニシアターが、新たに始まる記事だった。
いつか誰かがと、ずっとずっと思っていた。
その日がこんなに早く来るなんて…
紙面の文字を追いながら、目の前がぼやけてきた。
本当に嬉しかった。
足繁く通ったわけではない。
ただ、私が見たい映画の上映館はここしかなかったのだ。
閉館してから、胸の中に空洞ができてしまったような気がしていた。
他の映画館に行くたび、なぜか淋しさがつのる。
あの場所はもうないのだと、思い出してしまうから…
最後に見たのは、ジョン・カサヴェテス監督の『アメリカの影』だった。
夕方、映画館を出てから、この映画館の看板を見上げていたのを覚えている。
もうすぐこのネオンサインの灯りが消える。
その淋しさは言葉にできなかった。
あれから5ヶ月。
旧ミニシアターで30年近くスタッフだった3名が、共同代表となり合同会社を設立するに至った。
彼らの背中を押したのは、ファンや地元商店主の声。
建物所有者の協力もあったようだ。
昨日からスタートしたCFの目標は1000万円。
2日目の今日、すでに800万円を超える金額に達していた。
私と同じようにあの場所を必要としていた人たちがいる。
そのことを実感する数字だった。
『どうしてわざわざお金を払って映画館に足を運ぶのか?』
毎週聴いているPodcast『MEDIA TALK』で、話題に上ったことがあった。
映画館に足を運ぶのは、ただ一本の映画を見るだけが目的ではない。
その場所にしかない、その場所でしか得られないモノがある。
体験こそが、映画館に足を運ぶ理由だと思う。
来年2月にオープン予定のこのミニシアターは、今までと同じ場所で『ノイ』という名前になる。
『新』を意味するドイツ語らしい。
従来のファンだけでは続かなかったからこそ、新たなファンを獲得して欲しい。
ミニシアターの存在は文化そのものだ。
次の世代にバトンを、必ず渡して欲しいと願っている。