一期一会
台湾への単身留学。一人ぼっちの海外があそこまで心細いとは思わなかった。
とりあえず、気分を上げるためには美味しいご飯をお腹いっぱい食べるのが手っ取り早い。ガイドブックを見る気分にはなれなくて、駅の地図をじーっと見つめていた。
「お姉さん、どこ行きたいの?」
流暢な日本語に意識が奪われた。振り向くと小柄なおばちゃん。
「あ、夜ご飯食べたくて」
「それじゃあ、近くに知ってるところあるから連れて行くよ」
今振り返れば、どこに連れて行かれるかもわからない中ほいほいついていった自分の無防備さにはほんのちょっぴり反省している。
でもおばちゃんはちゃんと夜ご飯のお店に連れて行ってくれたし、台湾茶のお店にも連れて行ってくれた。その時買った日月潭紅茶はあの日の運命的な出会いを思い起こさせてくれる。
「一期一会だからね」
駅からご飯屋さんまでの道中、おばちゃんは笑顔でそう言った。日本語の意味をこんなに噛み締めたことはなかった。
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