人口が伸びる政令市に死角はあるか?福岡市の財政について調べてみた件
こんにちは、海原雄山です。
今回は、福岡市の財政について調べてみました。
統一地方選において実施される福岡市議選に、維新は積極的な候補者擁立を実施しています。
福岡は全体として大阪から遠方にあるにもかかわらず、地方選挙の成績もよく、福岡市議選を含め統一地方選で議席の大幅増が期待されます。
そんな福岡市議選において、論点となり得るものは何か、財政面から考えていきましょう。
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福岡市ってどんなところ?
まず、そもそもで福岡市がどんなところかについて簡単にご説明させていただきます。
人口約156万人(令和3年1月1日現在、住民基本台帳ベース)の人口を抱える政令市です。
九州地方の行政・経済・交通の中心地であり同地方最大の人口を有し、西日本においても大阪市に次ぐ人口を擁する都市です。
2010年から2020年の間で、約12万人程人口が増えています。
維新市政で人口が増えている大阪市ですら同期間中に約5万人の伸びなので、福岡市の成長ぶりが顕著であることが伺えます。
東京や大阪より大陸に近く、博多港、福岡空港から韓国や中国、台湾などのほか東南アジアの主要都市への国際航路が多く設定されており、これらの地域からの観光客が増加傾向にあると言われております。
福岡空港は市内中心部と地下鉄でつながり、非常にアクセスも良く、交通インフラの利便性も高いのはポイントが高いです。
また、14の大学や9の短期大学が立地する全国有数の学生街であり、人口に占める学生の割合は政令指定都市の中では京都市に次ぐ第2位と言われています。
福岡市の財政について
では、本題に入りましょう。
今回は、2020年度までの直近5年間の決算カード等をもとに分析していきますので、特に断りが無ければ、2020年度の数字であると捉えてください。
また、類似団体とは、各市町村等を人口および産業構造等により全国の市町村を35のグループに分類したもので、福岡市は「政令市」という類型に属しています。
政令市の中でも人口規模が近いものとしては、京都市(約140万人)、神戸市(約150万人)、川崎市(約150万人)があります。
各種指標の状況
①財政力指数
財政力指数は「0.89」で、類似団体の平均「0.86」を上回っています。
財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で割り算して得た数値の過去3年間の平均値ですが、ここで基準財政収入額(同需要額)は、だいたいどれくらい自治体運営にあたって財源を確保できそうか(どれくらいかかりそうか)を示す指標だととらえてください。
その数値が高いほど収入にゆとりがあり、1を下回っていれば、地方交付税交付金がその分支給されると大まかに捉えてください。
福岡市は、他の類似団体に比べても、歳出の割に税収がやや豊かといえます。
②経常収支比率
経常収支比率は「93.8%」で、類似団体の平均「97.3%」より数字として良いと考えられます。
経常収支比率とは、経常的な経費に経常的な収入がどの程度充当されているかを見るものです。比率が高いほど自由な施策が打てなくなり財政構造の硬直化が進んでいることを表すものです。
つまり福岡市は、他の政令市と比べ財政の自由度が比較的高いと言えるでしょう。
③将来負担比率
将来負担比率は「107.1%」で、類似団体の平均「86.0%」より、数字として少し悪いです。
将来負担比率とは、地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標で、標準財政規模(地方公共団体の標準的な状態での通常の収入と捉えてください)に対する「特別会計、第三セクターまで含めた地方公共団体の負債総額から積立金などを差し引いたもの」の割合を示したものです。
つまり、借金から貯金を引いたものが収入に対してどれくらいの割合かを示したものと捉えてください。(早期健全化基準:政令市では 400%)
福岡市の将来負担比率は年々低下していますので、早期健全化基準よりも遥かに下ですし、特別大きな問題のある数字とは言えないでしょう。
④公債費負担比率
公債費負担比率は、一般財源に占める公債費(地方債の元利償還等に要する経費)の比率で、この数字が高ければ財政構造の硬直化が進んでいることを表します。
福岡市は、「18.20%」で、類似団体平均の「16.0%」よりやや高い水準です。
⑤実質収支比率
実質収支の標準財政規模に対する割合。簡単に言うと、収入に対して当年度の収入と支出との実質的な差額が、どれくらいの割合かを示すものです。
福岡市は、「2.0%」で、類似団体平均の「1.6%」を上回っています。
歳入の状況
では、歳入の状況を見てみましょう。
2020年度以降は、コロナ対策の国庫支出金を多く受け取ったため、大幅に増えていますが、そういう一時的な要因を除くために、経常一般財源等で見ていくと下記のとおりです。
経常一般財源等は、歳入のうち毎年度経常的に歳入されるもののことです。
こう見ると、2017年度に約500憶円近く伸びて以後基本的には右肩上がりです。
もう少し詳しく歳入をみていきましょう。
市町村の歳入の多くは、地方税です。
基本的に横ばいで、2018年度から少々上昇傾向でしたが、2020年度には逆に減収となっています。
先ほどの歳入全体の大幅な伸びは2017年度でしたので、2016年度から2017年度にかけて約48憶円程の地方税の増収だけが要因ではなさそうです。
2016年度から2017年度にかけて地方交付税の伸びは100憶円程度の増収要因です。
地方消費税交付金は2016年度から2017年度にかけて10憶円程の伸び。
2017年度決算によるとこれら地方交付税や交付金その他もろもろの増収によるもののようです。
(参考)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/65427/1/29aramashi.pdf?20190327114201
①市町村民税
ここから地方税を細かく見ていきますが、「臨時」に付与されたり「特定」の目的にも使う財源等も含むことをご了承ください。(それでも傾向は掴めるかと思います。)
地方税の多くは市町村民税と固定資産税で、だいたいの市町村において、これら2つで地方税収の約85%を占めています。
市町村民税は2017年度から翌年度にかけて約350憶円程大きく上昇しました。
2019年度から2020年度にかけては55憶円程の減収です。
市町村民税を個人分と法人分で分けてみてみましょう。
まず、個人分です。
一貫して右肩上がりですが、所得割が2017年度から2018年度にかけて大きく伸びています。
これは2018年度の財政のあらましにおいて「個人市民税における県費負担教職員制度の権限移譲に伴う税率変更の影響及び納税義務者数の増加」があったとのことです、
人口増が個人市民税の増収にもつながっている例と言えるでしょう。
一方、法人分についてですが、
法人均等割、法人税割とも2020年度に減少しています。
だいたいの市町村では、個人に課す市町村民税に対して法人分の金額が小さいですが、福岡市も同様です(地方税全体に対する割合は、個人:約39.4%に対し、法人:約10.7%)ので、市町村民税全体の増減は個人の市町村民税の増減に大きく影響されるはずです。
しかし、福岡市も、法人税割の減少額が大きく(約80憶円)、2020年度の市町村民税の減収の多くは、この法人分の減収で説明がつくでしょう。
これは他の自治体も同様です。
2021年度のデータですが、地方税における法人市民税の割合について言うと、福岡市は大阪市や京都市に次いで多いです。
人口一人当たりの地方税収は、福岡市は201,855円と政令市平均197,663円よりも多いことを考えると、法人市民税の割合の高さは人口規模の割に稼げる企業が多く、財政を支えている証拠なのかもしれませんし、隣接自治体等からも多くの人が集まる都市の性格を持っているのかもしれません。
京都市も法人市民税の割合が高い方で同じカテゴリーのように見えますが、そもそも人口一人当たりの地方税収が190,701円しかないので、福岡市と少々事情が異なるようです。
②固定資産税
地方税のもう一つ大きな柱は、固定資産税になります。
固定資産税収は、この5年で約100憶円ほどの伸びです。2020年度では前年度より約18憶円程の伸びです。
固定資産税は、土地・家屋等に対して課税され、ざっくり言うとその評価額を基準として税額が決まるので、近年の金融緩和による土地等の資産価格の上昇が、固定資産税収に追い風となった自治体もあるようです。
やはり、地方税収全体としては固定資産税がやや伸びたものの、法人の市町村民税が落ち込んでしまったことが、足を引っ張る結果となったと言えるでしょう。
歳出の状況
ここからは歳出の状況です。性質別で見ていきます。
一時的な要因を除くべく、経常的な費用に充当される一般財源の金額を示す「経常経費充当一般財源等」の金額で確認していきましょう。
まず、義務的経費です。
これは、人件費、扶助費 (生活保護費、児童福祉費老人福祉費など) 、公債費など、その支出が法律上義務づけられたものや国の指示によって事実上強制されるもので、任意に節減できない極めて硬直性の強い経費とされています。
2017年度を境にドンと増えてますが、下記のとおり、義務的経費の経常収支に占める比率は63.4%です。
政令市の平均が約66.1%ですから、やや低い水準と言えるでしょう。
しかし、経常収支比率が上昇傾向であるのは見過ごせない点と言えます。
では、人件費、扶助費、公債費のうち何が要因なのか、みていきましょう。
①扶助費
扶助費は基本的に右肩上がり基調のようです。
扶助費の経常収支比率(扶助費が経常的な収入に対しどれくらいを占めるか)は類似団体平均と同水準ですが(類似団体平均:16%、福岡市:16.3%)、人口一人当たりの金額もほぼ同じか少し高い水準です(類似団体平均:44,512円、福岡市:45,339円)。
経常収支比率も2017年度を境に上昇傾向です。
福岡市は、「高齢化の進行や障がい福祉サービスの利用増、保育所入所児童数の増加等により、扶助費については今後も増加が見込まれる。」と分析しており、現在は問題ない水準と言えども今後についてはどのように扶助費を手当していくかがポイントになりそうです。
②公債費
公債費は、上下動はありますが、910憶円から920憶円前後で安定しています。
福岡市の一人当たり公債費は58,360円(経常収支比率21.0%)、 類似団体平均は51,054円(18.3%)となり、福岡市は類似団体と比較して公債費による負担はやや大きいものと言えます。
経常収支比率は政令市の中で最も高いレベルであり、借金返済が福岡市の財政をやや圧迫している様子が見えます。
③人件費
人件費は2017年度に大きく伸びていますが先述の権限等の移譲に伴うものかと考えられます。
福岡市は類似団体に比べて人件費の経常収支比率が低いです。(類似団体平均:31.8%、福岡市:26%)
また、人口一人当たりの金額も類似団体平均より約20%近く低いようです。(類似団体平均:88,775円:福岡市:72,285円)
福岡市は、「業務のアウトソーシングや業務の実施体制の見直しなどに早くから取り組んできた結果、類似団体と比較して人口1,000人当たり職員数が少ないことや、退職手当の段階的引き下げ(平成25・26年度で段階的に実施し、平均で15.4%の水準引き上げ)、平成28年度からの給料水準の平均1.5%の引き下げ等により、人件費に係る経常収支比率は類似団体内で最も低くなっている。」と総括しており、早くから人件費を抑制するための努力を行ってきたことが伺えます。
以上を総合すると、義務的経費の経常収支比率が緩やかに上昇している理由としては、恐らく扶助費の経常収支比率増等によるものと考えられます。
④その他の歳出
さて、義務的経費以外のもので注目すべきは、「物件費」、「補助費等」と「繰出金」です。
物件費とは、人件費、維持補修費、扶助費、補助費等以外の地方公共団体が支出する消費的性質の経費の総称で、旅費、交際費、需用費、役務費等が含まれています。
物件費については、経常収支比率としては、12.5%と類似団体平均の12%より少し高い比率となっており、人口一人当たりの金額にしても、34,740円と類似団体平均の 33,713円より少し高い金額になっています。
ですが、ほぼ平均水準ですので、問題ないように考えられます。
補助費等とは、各種団体に対する助成金や一部事務組合への負担金のことです。
この補助費は経常収支比率としては、6.9%と類似団体平均の7.8%よりやや低い水準で緩やかに低下傾向です。
人口一人当たりの金額にすると、19,135円と類似団体平均の21,841円よりも10%以上低い金額になっております。
福岡市は、「補助費等に係る経常収支比率が類似団体平均を下回っているのは、補助金に関して、毎年度の予算編成において、事業目的、事業内容、補助金の使途等を精査するとともに、補助対象範囲、補助対象経費について不断の見直しを行っていること等が考えられる。また、長期にわたる補助金への対応や補助金の公募化に係る全市的なルールを定めた「補助金ガイドライン」を策定(平成25年10月)し、それに伴い補助金交付規則も改正(平成26年4月1日施行)し、更なる適正化を図っている。」としており、補助金に対してかなり厳格な対応を行っている様子が伺えます。
繰出金とは、会計間相互に支出される経費をいい、ここでは一般会計から介護保険事業会計や後期高齢者医療保険事業会計と言った特別会計や公営企業への言わば仕送りのことを指します。
繰出金の経常収支比率としては、福岡市9.5%と類似団体平均の9.3%よりやや高く、2018年度まで低下していたものの、その後は上昇に転じています。
人口一人当たりの金額にしても、26,318円と類似団体平均の25,819円よりほんの少し高い水準です。
福岡市は、「国民健康保険事業への繰出金の増、老年人口、特に75歳以上(後期高齢者)の人口の増加等に伴う、介護保険事業への繰出金の増、後期高齢者医療事業への繰出金の増などが主な要因である。住民基本台帳に基づく65歳以上の高齢者が総人口に占める割合について、平成31年4月1日現在は21.6%であったのに対し、令和2年4月1日現在では21.8%となっており、75歳以上の高齢者が総人口に占める割合についても同様に10.3%から10.5%と増加している。今後も高齢化に伴い、介護保険事業や後期高齢者医療事業への繰出金は増加するものと考えられる。」としており、高齢化が繰出金にも影響を与えている様子が垣間見られます。
これは、福岡市に限らず、多くの自治体で共通している事象です。
有形固定資産減価償却率(公共施設等の老朽度)
見過ごしてはならないのは有形固定資産減価償却率です。
これは、有形固定資産の老朽化度合を測定する指標で、減価償却がどの程度進行しているかを示し、100%に近いほど保有資産が法定耐用年数に近づいていること(=施設が古びている)を意味します。
(赤:福岡市 青:政令市平均)
福岡市の場合、61%と政令市平均の64.2%より低い水準ではあります。
資産別に見ていきましょう。
道路は減価償却率は低いものの橋りょう・トンネルは平均並みと濃淡があります。
公営住宅は平均より少々高いようです。
福岡市の強みの一つである港湾も、やや減価償却率が進みがちなようです。
しかし、児童館や公民館は政令市の中でも減価償却率は低く、新しめの施設や更新が進んだ施設が多そうです。
政令市で最も低い減価償却率の公民館について、福岡市は、「老人いこいの家との合築による建て替えを進めており、有形固定資産減価償却率が他の類似団体と比べ低い水準となっている。」と総括しています。
一方・・・、
認定こども園・幼稚園・保育所、児童館、体育館・プールは、政令市兵器によりかなり減価償却率が低い水準であるものの、人口一人当たりの面積が小さく、施設の充実度について問題がないかは検証が必要かもしれません。
消防施設も減価償却率は低いものの、消防施設の一人当たりの面積は小さく、安全面で問題がないかは疑問です。
庁舎、保健センター・保険所、市民会館、福祉施設は、政令市最悪レベルまで減価償却率は高まっており、なおかつ人口一人当たりの面積も小さいため、施設の充実度に加えて老朽化・陳腐化も課題に見えます。
ニーズに応じて対応していくことは大事ですが、老朽化が激しいものと更新が大きく進んでいるものとの間で差が激しいのが福岡市の特徴なのかもしれません。
収支の状況
では、収支の状況を見ていきましょう。
歳入と歳出の差額から、翌年度繰り越すべきお金を差し引いたものが実質収支です。
実質収支は一貫して黒字です。
実質収支には、前年度から持ち越されているものもあるため、ストック性があるため、純粋なフローを見るとなると単年度収支(=今年度と前年度の実質収支の差額)を見たほうが、より収支というイメージに近い数字を見ることができます。
単年度収支は、2018年度こそ黒字であるものの、ほぼ赤字。
単年度収支の金額は、基金への積立金や市債の繰り上げ償還等は差し引かれていますし、基金の積み立てを取り崩した金額は逆に上乗せされています。
そのため、これらを逆にすれば、さらに実態に近いフローの状況を確認できます。
積立金や繰り上げ償還等は足し上げ、基金の取り崩しは、差し引くと、実質単年度収支という数字になります。
毎年の積み立て額は50憶円前後で安定しています。
繰上償還金は行われていません
積立金の取り崩し額は以下のとおりです。
ほぼ毎年のように取り崩しを行っているようで、数十億規模で取り崩している年が多いです。
しかし、積立もそれ以上に行われています。
ここで、基金の状況を見ておきましょう。
貯金にあたる財政調整基金は一貫して増えています。減債基金も同様に増え続けており、市債償還へ備えを怠らない姿勢が見えます。
特定目的基金についても、多少凸凹はあるものの右肩上がり基調です。
来るべき将来の事業に対する資金的手当てを実施しているものと考えられます。
福岡市の特定目的基金の主なものは以下のとおりです。
・高速鉄道建設基金
・庁舎建設等資金積立金
・ユニバーシアード福岡大会記念スポーツ振興基金
・市営住宅敷金基金
・こども未来基金
先述のように庁舎の減価償却率が政令市最悪レベルでありますが、一定の基金による手当てはされているようです。
基金残高について、人口一人当たりに直すと47,547円と類似団体平均の37,677円より約1万円も高い水準です。
積極的に積立金を積み立てており、その結果が数字になって表れているように思われます。
話を戻して、これらを踏まえて、実質単年度は以下のとおりになります。
こうしてみると一貫して黒字です。
単年度収支が赤字だったのは、恐らく積立金を多く積んでいたことによるもので、収支状況に問題はないと考えられます。
ちなみに地方債残高ですが、人口一人当たりに直すと752,921円と類似団体平均の653,597円より10万円程高い水準となっていますが、京都と異なり地方債残高は徐々に徐々に減少しており、ひとまずは問題は見当たりません。
まとめ
福岡市の財政をまとめると以下のとおりと考えられます。
・財政力指数は政令市平均よりやや高く、経常収支比率も低い。
・将来負担比率は政令市平均よりやや高く、人口一人当たりの地方債残高もやや高い
・歳入においては、地方税収は個人については増収傾向だが、大阪市、京都市に次いで高い比率である法人市民税の落ち込みが足を引っ張っている
・歳出においては、義務的経費の経常収支比率は比較的低いものの、扶助費の増加等で緩やかに上昇傾向
・公債費の経常収支比率が政令市の中でも高めである一方、人件費の経常収支比率はかなり抑制されている
・物件費や補助費等は抑えられているが、繰出金は上昇傾向
・有形固定資産減価償却率は政令市平均よりやや低い水準であるものの、更新が進んでいるものと遅れているものの差がかなり激しい
・施設の充実度については要検証
・実質収支は一貫して黒字
・単年度収支は赤字の年度も多いが、積立金をコンスタントに積み上げられており、実質単年度収支は一貫して黒字
・人口一人当たりの基金残高は政令市平均より多く比較的潤沢
・人口一人当たりの残高も政令市平均に比べ重いものの、地方債残高は減少傾向
負債は多いものの、基金も多く積み立てており、収支も良好です。
かなり以前から経費の節減に尽力しているようで、その成果が数字となって表れているように見えます。
しかし、各種公共施設は更新等が進んでいるものとそうでないものの差が激しく、市民会館に至っては減価償却率は100%に達しています。
加えて他の政令市に比べ人口一人当たりの面積が小さく、増大する人口に対して施設の提供が十分ではない可能性も伺われます。
したがって、見かけ上、財政はかなり優秀に見えますが、市民サービスが十分と言えるかは検証が必要かもしれません。
今後もしばらくは人口増が見込まれ、実質単年度収支も一貫して黒字で経常収支比率も比較的低く投資的経費に振り向ける余力はあるわけなので、インフラや公共施設の整備・更新等にどのような優先順位でお金をつけていくのかは議論の余地がありそうです。
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