地方の将来の縮図か?奈良県河合町の財政について調べてみた件
こんにちは、海原雄山です。
今回は、奈良県の河合町の財政について調べてみました。
今回の統一地方選において実施される河合町長選に、維新公認候補が出馬します。
奈良県知事選、生駒市長選に並び、奈良で維新の公認首長が誕生するか、非常に注目の選挙です。
今回は、その河合「町」という「市」でも「特別区」でもない基礎自治体の現況について、財政面から迫っていきたいと思います。
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河合町ってどんなところ?
まず、そもそもで河合町がどんなところかについて簡単にご説明させていただきます。
人口約1万7,500人(令和3年1月1日現在、住民基本台帳ベース)の人口を抱える奈良県北葛城郡を構成する町です。
1992年には人口2万人を突破しましたが、現在は減少傾向です。
近鉄の駅が3つ存在し、西名阪自動車道が町内を走り、交通インフラは充実しているように見えます。
町内には、大塚山古墳や大輪田城内遺跡等数々の史跡が点在しており、史跡巡りを趣味とされている方には、人気があるのではないでしょうか。
河合町の財政について
では、本題に入りましょう。
今回は、2020年度までの直近5年間の決算カード等をもとに分析していきますので、特に断りが無ければ、2020年度の数字であると捉えてください。
また、類似団体とは、各市町村等を人口および産業構造等により全国の市町村を35のグループに分類したもので、河合町は「Ⅳー2」という類型に属しています。
同じグループには、日立市、ひたちなか市(ともに茨城県)、高岡市(富山県)、松坂市(三重県)、平群町(奈良県)等があります。
各種指標の状況
①財政力指数
財政力指数は「0.53」で、類似団体の平均「0.55」を下回っています。
財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で割り算して得た数値の過去3年間の平均値ですが、ここで基準財政収入額(同需要額)は、だいたいどれくらい自治体運営にあたって財源を確保できそうか(どれくらいかかりそうか)を示す指標だととらえてください。
その数値が高いほど収入にゆとりがあり、1を下回っていれば、地方交付税交付金がその分支給されると大まかに捉えてください。
河合町は、他の類似団体に比べても、歳出の割に税収がやや豊かとはいえないと考えられます。
その理由として河合町は2020年度の財政状況資料集の中で以下のように総括しています。
「本町では、人口減少や少子高齢化の影響による町税や地方交付税などの自主財源の減少が懸念され、今後も厳しい状況が続く見込みである。」
つまり、人口減少により税源の確保が難しい状況であると言えます。
②経常収支比率
経常収支比率は「93.9%」で、類似団体の平均「90.1%」より数字として悪いと考えられます。
経常収支比率とは、経常的な経費に経常的な収入がどの程度充当されているかを見るものです。比率が高いほど自由な施策が打てなくなり財政構造の硬直化が進んでいることを表すもので、70~80%が%が適正水準と言われています。
つまり、河合町は他の類似団体と比べ財政の自由度が低いと言えるでしょう。
2019年度まではなんと100%を超える(≒経常的に見込める収入で経常的な経費が賄えていない)異常な状況でありましたが、2020年度には大幅に改善されています。
とはいえ、まだ他の類似団体と比べて高い水準です。
河合町は2020年度の財政状況資料集の中で以下のように総括しています。
「令和2年度は、経常一般財源で、税率改正の影響により法人住民税が減額となったが、償却資産に係る未申告調査の実施により固定資産税等が増額となったことに加え、交付金・交付税が増加したほか、一部地方債の償還条件見直しにより公債費が減少したため、前年度に比べ8.3%改善している。しかし、類似団体平均と比較すると3.8%高くなっていることから、今後も事務事業の見直しを進めるとともに経常経費の削減に努めるなど、財政構造の弾力化を図る。」
公債費等については後述します。
③将来負担比率
将来負担比率は「199%」で、類似団体の平均「12.8%」より将来への負担はかなり高いと言えます。
将来負担比率とは、地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標で、標準財政規模(地方公共団体の標準的な状態での通常の収入と捉えてください)に対する「特別会計、第三セクターまで含めた地方公共団体の負債総額から積立金などを差し引いたもの」の割合を示したものです。
つまり、借金から貯金を引いたものが収入に対してどれくらいの割合かを示したものと捉えてください。(早期健全化基準:市町村では 350%)
近年低下傾向ではあるものの、類似団体内ではほぼ最下位レベルの水準であることは注目すべきと考えられます。
④公債費負担比率
公債費負担比率は、一般財源に占める公債費(地方債の元利償還等に要する経費)の比率で、この数字が高ければ財政構造の硬直化が進んでいることを表す。
河合町は、「16.90%」で、類似団体平均の「12.7%」より悪く公債費の負担が財政を圧迫しています。
⑤実質収支比率
実質収支の標準財政規模に対する割合。簡単に言うと、収入に対して当年度の収入と支出との実質的な差額が、どれくらいの割合かを示すものです。
河合町は、「5%」で、類似団体平均の「5.5%」を下回っています。
類似団体平均には劣るものの、直近では数字が上昇しています。
全体的に各種指標は直近一年では各種数値は改善しているものの、類似団体平均より(かなり)悪い指標も多くあり、厳しい財政運営が今後も続くものと考えられます。
歳入の状況
では、歳入の状況を見てみましょう。
2020年度以降は、コロナ対策の国庫支出金を多く受け取ったため、大幅に増えていますが、そういう一時的な要因を除くために、経常一般財源等で見ていくと下記のとおりです。経常一般財源等は、歳入のうち毎年度経常的に歳入されるもののことです。
基本的に安定しています。
2019年度から2020年度にかけて2億4,000万円程の大幅な増収となっています。
もう少し詳しく歳入をみていきましょう。
市町村の歳入の多くは、地方税です。
上下動はありますが、2020年度は前年度に比べ約5,000万円増。
地方消費税交付金は直近で伸びて前年度比約6千万円増
地方交付税は1憶4,000万円程の増加です。
これらの増加(他こまごまとした増減)を合わせて、全体的に歳入が増えたと考えられます。
ここから地方税を細かく見ていきますが、「臨時」に付与されたり「特定」の目的にも使う財源等も含むことをご了承ください。(それでも傾向は掴めるかと思います。)
地方税の多くは市町村民税と固定資産税で、だいたいの市町村において、これら2つで地方税収の約85%を占めています。
①市町村民税
市町村民税は2017年度から翌年度にかけて上昇しましたが、その後もとの水準に戻っています。
市町村民税を個人分と法人分で分けてみてみましょう。
まず、個人分です。
均等割りは金額としては少ないものの右肩上がりである一方、所得割は2017年度に伸びた後、元の水準に戻ってます。
所得割が市町村民税のほとんどを占めるためか、市町村民税全体とパラレルに動いているように見えます。
一方、法人分についてですが、
個人の均等割りと違い、法人均等割は一貫して減少傾向。
裏腹に法人割は、直近1年で減収となったものの、ほぼ一定の範囲で安定しているように見えます。
だいたいの市町村では、個人に課す市町村民税に対して法人分の金額が小さいですが、河合町は今までのこのnoteで見てきた基礎自治体の中でもその傾向が顕著です。
地方税全体に対する割合は、河合町は、個人:約47.5%に対し、法人:約6.1%です。(単純に比較できませんが、神戸市は、個人:約41.9%に対し、法人:約7%)
市町村民税全体の増減は個人の市町村民税の増減に大きく影響されるはずで、実際河合町においてはほぼ個人所得割に連動しているようです。
②固定資産税
地方税のもう一つ大きな柱は、固定資産税になります。
固定資産税収は、直近で約5憶円ほどの伸びです。
固定資産税は、土地・家屋等に対して課税され、ざっくり言うとその評価額を基準として税額が決まるので、近年の金融緩和による土地等の資産価格の上昇が、固定資産税収に追い風となった自治体もあるようです。
ですが、河合町の場合、他の自治体と違って、直近1年で急に伸びているのが、コンスタントに固定資産税収を伸ばしてきた他の基礎自治体とは異なります。
2020年度の河合町の決算概要によると、町内における課税資産の未申告調査等があったようで、徴収から漏れていた分を回収することで増収につなげたことが伺えます。
③その他の歳入
ところで、人口一人当たりの地方税収は河合町は122,024 円と、類似団体平均の133,115円より少ない水準です。(経常一般財源等ベース)
地方交付税は、河合町102,801円、類似団体平均132,073円、地方消費税交付金は河合町18,701円、類似団体平均 21,632円となっており、歳入全体でも、河合町252,889円、類似団体平均299,786円と大きく水をあけられている状況です。
そんな中、河合町が類似団体平均より上回っているのは、使用料というもの。
河合町1,426円、類似団体平均632円と金額規模は小さいながら、倍の金額となっています。
使用料は、体育館や駐輪場等公共施設の利用の料金で、河合町はそれらの収入が人口規模の割に多いことがわかります。
河合町のHPを見ると、体育館やグラウンド等の施設が充実しており、これらの利用が多いと言うことなのかもしれません。
歳出の状況
ここからは歳出の状況です。性質別で見ていきます。
一時的な要因を除くべく、経常的な費用に充当される一般財源の金額を示す「経常経費充当一般財源等」の金額で確認していきましょう。
まず、義務的経費です。
これは、人件費、扶助費 (生活保護費、児童福祉費老人福祉費など) 、公債費など、その支出が法律上義務づけられたものや国の指示によって事実上強制されるもので、任意に節減できない極めて硬直性の強い経費とされています。
経費は順調に減っていっています。
また、下記のとおり、義務的経費の経常収支に占める比率は、ここ5年でかなり低下してきています。
類似団体平均が約46.5%ですから、平均よりは高い状況ではあります。
では、この推移は人件費、扶助費、公債費のうち何が要因なのか、みていきましょう。
①扶助費
扶助費は、年度によって上下動があります。
扶助費の経常収支比率(扶助費が経常的な収入に対しどれくらいを占めるか)は類似団体平均より少し低い水準ですが(類似団体平均:6.3%、河合町:5.3%)、人口一人当たりの金額も類似団体より5,000円以上低いです(類似団体平均:19,829円、河合町:14,119 円)。
河合町は、「扶助費については、健全化計画などにおいて町単独事業の見直しなどを実施したことにより、類似団体平均を下回る結果が続いている。」と分析し、コスト削減に励んでそれが功を奏している様子が伺えます。
②公債費
公債費は、2020年度に一気に減少しました。経常収支比率も同様です。
河合町の一人当たり公債費は51,588 円(経常収支比率19.4%)、 類似団体平均は46,072円(14.8%)となり、類似団体と比較して公債費による負担額が大きいと言えますし、また平均以上に経常収支を圧迫させています。
河合町は、「令和2年度は一部地方債の償還条件見直し等により5.5%減少している。」としております。
これは、具体的にどういうものを指すのか明示された資料を見つけられませんでしたが、河合町健全化計画の改定版では、今後町債償還の平準化、無理し借り換え等が掲げられており、そういう方向の償還条件見直しが行われたかもしれません。
③人件費
2016年度から2019年度にかけての人件費は下がっていましたが、2020年度は逆に元の水準に戻っております。
河合町は類似団体に比べて人件費の経常収支比率がやや高いです。(類似団体平均:25.4%、河合町:28.2%)
一方、人口一人当たりの金額も類似団体平均より少々低いようです。(類似団体平均:79,182円、河合町:75,085 円)
河合町は、人件費の削減に努めており、「積極的に早期退職者を募り、財政健全化による職員等の給与削減を実施するなど人件費の削減に努めてきた結果」と総括しております。
こちらは人口千人当たりの職員数と職員給です。
見てみるとトータルとしては、職員数も職員給も平均以下ではありますが、職員数における教育公務員の数が平均より3倍多く、施設の職員給も平均よりかなり多いです。
ここらへんに、経常収支比率の高さを是正するヒントがあるかもしれません。
義務的経費の直近1年の経常収支比率の低下について言うと、主に公債費によるものと考えられますが、類似団体平均より経常収支比率が高いため、今後も義務的経費の見直し等が必要かもしれません。
④その他の歳出
さて、義務的経費以外のもので注目すべきは、「物件費」、「補助費等」と「繰出金」です。
物件費とは、人件費、維持補修費、扶助費、補助費等以外の地方公共団体が支出する消費的性質の経費の総称で、旅費、交際費、需用費、役務費等が含まれています。
物件費については、経常収支比率としては、14.0%と類似団体平均の14.2%とほぼ同水準となっております。人口一人当たりの金額にしても、37,198 円と類似団体平均の 44,399円より7,000円程度低い金額で収まっています。
補助費等とは、各種団体に対する助成金や一部事務組合への負担金のことです。
2018年度を底に緩やかに増加傾向にあります。
この補助費は、経常収支比率にして10.0%と類似団体平均の15.0%とかなり低い水準で、人口一人当たりの金額にすると、26,665円と類似団体平均の 46,735 円よりも20,000円程安い金額になっております。
一部事務組合分は河合町20,297円に対し、類似団体平均 23,628円より少々引き金額ですが、一部事務組合分以外で河合町6,368円、類似団体平均23,107円と雲泥の差となっています。
河合町は、「負担金については、行政運営に支障をきたすものを除き、廃止または休止を検討した。その結果、例年類似団体平均を下回り、令和2年度においては5.0%低くなっている。」としており、従前からかなり補助費の見直しに対処してきたことが伺えます。
繰出金とは、会計間相互に支出される経費をいい、ここでは一般会計から介護保険事業会計や後期高齢者医療保険事業会計と言った特別会計や公営企業への言わば仕送りのことを指します。
河合町の場合、徐々にではありますが上昇傾向ではあります。
繰出金の経常収支比率としては、河合町16.7%に対して類似団体平均の12.5%より高く、人口一人当たりの金額にしても、44,405円と類似団体平均の 39,116円より約5,000円高い水準で、類似団体平均より負担は重めと言えます。
河合町は、「平成29年度以降は、介護特会と下水道特会の経常的な繰出金が大幅に増加し、類似団体平均を上回ることとなった。」があったとしております。
他の自治体においても、高齢化が介護特会や高齢者医療特会等の財政にも影響を与えている様子が見受けられましたが、河合町の場合下水道特会が負担になっているというところがポイントになっています。
恐らく人口規模が大きくないがために、下水道の維持コスト負担が高まっているのではないかと考えられます。
もう一つ、河合町の歳出で着目すべきは、普通建設事業費です。(決算額ベース)
上記のとおり、類似団体(青)より河合町(赤)の方が人口一人当たりの金額が小さいです。
ですが、更新整備分はもとより、新規整備が0となっています。
河合町は、「今後は老朽化した公共施設の維持・更新費が高くなることが予想されるが、施設の集約化・複合化、または廃止等に着手し普通建設事業費や公債費が過度に高くならないように努める。」としております。
おそらく少しでも更新に必要な費用をねん出すべく、新規整備も相当絞っている可能性もあるかもしれません。
ここが、大阪市、京都市、神戸市等の大きな基礎自治体との違いで、仮に普通建設事業費を絞ると言っても一定の新規整備は行うことはあるのですが、河合町のような小さくて余裕のない自治体ともなると、かなりラディカルなものになるのかもしれません。
有形固定資産減価償却率(公共施設等の老朽度)
見過ごしてはならないのは有形固定資産減価償却率です。
これは、有形固定資産の老朽化度合を測定する指標で、減価償却がどの程度進行しているかを示し、100%に近いほど保有資産が法定耐用年数に近づいていること(=施設が古びている)を意味します。
(赤:河合町 青:政令市平均)
河合町の場合、69.8%と政令市平均の6₁.0%よりやや高い水準ではあります。
河合町は、「類似団体、全国平均と比較して高い水準で推移している。本町の固定資産は取得が古く開始時に備忘価額の計上資産が多く、大半の保有施設が耐用年数を大幅に超えた稼働年数に達している。平成末期より庁舎の耐震改修をはじめ、学校再編に伴う大規模改修、幼稚園・保育所を集約した認定こども園を建設するなど更新や除却を進めているが、今後さらにその取組を進める必要がある。」としており、多くの公共施設やインフラが老朽化している様子が伺えます。
それらの中でも道路は極めて老朽化が進んでいると考えられ、河合町住人はもちろん、河合町を経由してどこかに移動する車等にとって望ましい状況かは議論の余地がありそうです。
収支の状況
では、収支の状況を見ていきましょう。
歳入と歳出の差額から、翌年度繰り越すべきお金を差し引いたものが実質収支です。
河合町は、ここ5年ずっと黒字ですが、2020年度に黒字が大幅に拡大しています。
実質収支には、前年度から持ち越されているものもあるため、ストック性があるため、純粋なフローを見るとなると単年度収支(=今年度と前年度の実質収支の差額)を見たほうが、より収支というイメージに近い数字を見ることができます。
単年度収支は、赤字と黒字を繰り返しています。
単年度収支の金額は、基金への積立金や市債の繰り上げ償還等は差し引かれていますし、基金の積み立てを取り崩した金額は逆に上乗せされています。
そのため、これらを逆にすれば、さらに実態に近いフローの状況を確認できます。
積立金や繰り上げ償還等は足し上げ、基金の取り崩しは、差し引くと、実質単年度収支という数字になります。
毎年少ないながらも積み立てを行っており、2020年度は多めに積み立てられています。
繰上償還金は行われていません
積立金の取り崩し額は以下のとおりです。
積立金を取り崩す年も多いです。
前述のとおり積み立て額と比較すると、基本的に基金を取り崩す額の方が多く、なんとか過去の貯金でやりくりしているようにも見えます。
ここで、基金の状況を見ておきましょう。
貯金にあたる財政調整基金、近年大きく減少しています。2020年度は少し増えていますが、基本的に減少傾向です。
減債基金は近年一定でしたが、直近で大きく額を増やしています。
河合町は、「平成31年度小中学校空調設備設置事業における県支出金3百万円を、翌年度以降の当該事業にかかる地方債償還に充てるため積立てたことから、増加している。」としております。
また、今後の方針についても、「事業実施年度と収入がずれる交付金・補助金等について、当該基金へ積立てることで将来負担の財源とする。」としております。
これの意味するところは、想像するに一時的な余裕資金を積み立てて運用益を稼ぐことで、少しでも債務返済の財源にするということを意味しているのかと想像しています。(確信は持てないですが)
特定目的基金については、2019年度に大きく減少しています。
なお、河合町の特定目的基金の主なものは以下のとおりです。
・新型コロナウイルス感染症対策基金
・公共施設整備基金
・地域振興基金
・小中学校ボランティア推進基金
・ふるさと創生基金
2019年度に大きく額を減らしているのは、地域振興基金(目的:本格的な高齢化社会の到来に備え、町における地域の福祉活動の促進、快適な生活環境の形成等を図る。)が大きく取り崩されたことによると考えられます。
基金残高について、人口一人当たりに直すと7,548円と類似団体平均の 210,762円の約30分の1の水準で、かなり余裕のない状況と言えるでしょう。
これらを踏まえて、実質単年度は以下のとおりになります。
2020年度を除くと赤字も珍しくない状況です。
2020年度は見かけ上大幅に改善されていますが、コロナ渦の対応でそもそもで歳入(国庫支出金は前年度比20憶円以上増加)と歳出が大きく膨らみ、余った分が多かったと言うだけの話で、抜本的な財務体質の変化があったわけではないと思います
だからこそ、恐らく翌年度以降の支出を考慮し、財政調整基金にかなり積み立てを行ったと考えられます。
地方債残高は2020年度に少し少なくなった状況ですが、人口一人当たりに直すと733,307円と類似団体平均の 513,380円の1.5倍程高い水準となっているのは、決して楽な状況ではないと言えるでしょう。
ましてや人口一人当たり基金残高は、類似団体平均の30分の1程度しかないので、ストック面ではかなりきつい状況であると言えます。
まとめ
河合町の財政をまとめると以下のとおりと考えられます。
・類似団体平均と比較し財政力指数は低く、経常収支比率も高い
・歳入については、地方税、地方交付税交付金、消費税交付金は等の増により増収
・地方税収における法人市民税の減少は少なく、市町村民税は前年度比増
・固定資産税は申告漏れ調査等で大幅増
・歳出においては、義務的経費は減少傾向だが、人件費と公債費負担が大きい
・物件費や補助費等は減少傾向だが、高齢化に伴い繰出金は増加傾向
・加えて下水道特会等も大きな負担
・普通建設事業費はかなり抑制されている
・有形固定資産減価償却率は類似団体平均より高い水準で、耐用年数を超えて使用されている施設・設備も多い
・実質収支は黒字であるものの、単年度収支、実質単年度収支は赤字の年度が多い
・財政調整基金は直近を除き近年取り崩しが進んでいる
・減債基金は少額ながらも積み立てが行われている
・人口一人当たりの基金残高は類似団体平均の30分の1程度の低い水準
・地方債残高は直近は減少であるものの人口一人当たりの残高も類似団体平均に比べ高い
人口減少が進む地方の小規模な自治体は、かなり厳しい状況であると考えられます。
河合町は、京都や同じ奈良の中心街と異なり、全国から多くの人を呼べるような観光名所に乏しく、観光で稼ぐということも難しい状況です。
また、交通インフラは充実しているとはいえ、一度近鉄田原本線で王寺まで出なくてはならず、大阪の中心部に出るには幾分時間がかかるように見えるので、大阪の通勤客が強いてベッドタウンとして河合町を選ぶ理由に乏しいのではないかという厳しい環境です。(河合町、失礼なこと言ってすいません・・・)
そうなると市町村民税収増はなかなか見込めないですし、申告漏れ調査で固定資産税は増えましたが、申告漏れも無限にあるわけではありません。
そのため、財政を立て直すには、支出をいかにして減らすかという方向で努力するしかない状況です。
すでに設備更新の抑制や補助費等の切り詰めがかなり進んでおり、これ以上何を削ればいいのかというレベルではありますが、大きな負担となっている公債費や人件費をどのようにして抑制していくかが大きなカギとなると考えられます。
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