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【TEX】シャーザー獲得がWin-Winになりうる理由

諸事情で更新が途絶えており恐縮しているレンジャーズ担当のもりまるです。半年あまり更新できていない間にレンジャーズは野手陣が全員キャリアハイを叩き出す勢いで打ちまくり、想定以上の快進撃で地区優勝を大本命のヒューストン・アストロズと争っている状況。

その間にもジェイコブ・デグロムのトミー・ジョン手術という早すぎる離脱、レンジャーズ野手陣によるオールスタージャック、7月早々に不安すぎるブルペン補強として全盛期の球威を取り戻したアロルディス・チャップマンの獲得などイベントは盛りだくさんでしたが、日本時間7月30日のマックス・シャーザー獲得は正真正銘のブロックバスタートレード。チームの今後を大きく左右する一手となりそうです。


トレード概要

レンジャーズ

率直に言って現在39歳のシャーザーは、前年までにメジャー最強クラスのエースというにはやや物足りない成績です。スライダーの空振りが大幅に減って、三振や四球などのスタッツは減少傾向にあります。それでもローテ2~3番手級の力は保持していて、三振奪取力が欠け気味な先発ローテーションとしては大いに力になってくれるでしょう。

また来年の契約はプレイヤーオプションでしたが、オプションの行使を確定させたために24年シーズン終了まで1年2ヶ月程度保有可能で、その間の年俸は合計22.5M。どう按分されるかはさておきクオリファイングオファー19.65Mで残留したマーティン・ペレスより明らかにコスパのいい契約になるでしょう。気になる贅沢税ラインの233M、24年の237Mまでも余裕は十分ありといったところです。36Mも支払ってくれて大丈夫なの?という思いもありますが、そこは金満チームといったところか。

メッツ

ナ・リーグMVP筆頭候補のロナルト・アクーニャ・ジュニアの弟で、現在公式プロスペクトランキング44位、チームランク3位の有望株です。
※ちなみに23ドラフティーや23年成績による変動は未反映です。

すでに24本塁打、50盗塁している兄より一回り体格は小さいものの、フォームは兄そっくりで5ツールプレイヤーの部類であり、今年の2Aで40盗塁を記録しています。遊撃に残れそうかは微妙なラインで、とはいえメッツには名手のリンドーアが長くチームに君臨予定のため、内野のプロスペクトが豊富とはいいながら二遊間はさほどでもないメッツにとっては重要なレギュラー候補といえそうです。

背景

アクーニャのポジションがない

アクーニャはトップ50クラスの評価であり、もちろん惜しい逸材ではあるのですが、レンジャーズで安定した出場機会をつかむのはかなり難しい状況ではありました。

  • 主戦場の二遊間がシーガー、セミエンに塞がれている

  • エゼキエル・デュランの打力が成長し、遊撃の守備で大きなプラスを生むユーティリティとして立場を築く

  • 年上のフォスキューはデビュー目前、同年代サジースの台頭、怪物候補の17歳セバスティアン・ウォルコットの存在

といったところで、最もバリューを出せる内野でプレー機会を得るのは今後数年に渡って厳しい状況だったと思います。

シャーザーは来年まで保有可能

またシャーザーの獲得は24年の補強にも大きなインパクトを与えました。現在の先発ローテーションと候補選手の24年の状況が以下です。

  1. ネイサン・イオバルディ→2年34Mの2年目

  2. ジョン・グレイ→4年契約56Mの3年目

  3. マーティン・ペレス→FA

  4. アンドリュー・ヒーニー→プレイヤーオプション13M(この成績なら行使でしょう)

  5. デーン・ダニング→調停1年目

  6. コディ・ブラッドフォード→調停前

  7. オーウェン・ホワイト→調停前

おそらくFAになるのはペレスのみであり、彼の穴をシャーザーで埋める形になるでしょう。仮にシャーザーがFAで1年契約だったとして、160IP、防御率4.00で期待値系指標が悪いわけでもなく、肩ひじの大きな故障がない選手を15~20M程度で取れたかどうかは怪しいところ。今夏だけでなく来年を見据えてもいい補強になったといえるでしょう。

メッツは贅沢税を減らしたい

少しレンジャーズから離れて、メッツ側の事情を書きたいと思います。彼らのオーナーがメジャー最大の情熱を資金力で表現するスティーブ・コーエンになってから札束が乱舞していました。スティーブ・コーエンルールなる特別な贅沢税ラインもものともせずに大金を投じた結果、贅沢税だけで80M程度を支払っている状態です。

現状で100Mも贅沢税ラインを超えているチームが来年も贅沢税ラインである237Mの範囲に収まるはずもなく、来年のコーエンルールラインの297Mを超過した部分は110%も支払わないとなりません。今回のトレードでシャーザーの残り年俸58M強いの内、22.5Mがレンジャーズの負担額ですが、厳密には保有期間で按分しますが、仮にこう分けた場合は

23年オフの贅沢税計算:7.5M * 95% = 7.125M
24年オフの贅沢税計算:15M * 110% = 16.5M

となり、翌年の贅沢税が上記の額だけ減ることになります。要するにほぼ倍の金銭的効果があるということです。コーエンのことだからさして気にしていないかもしれませんが、それにしてもすごい額です。

またメッツは今年をブリッジイヤーとして来年も戦うはずであり、小粒なプロスペクトを数もらうよりアップサイドがあり、レギュラークラスを期待できるクオリティの高い選手をほしがったという事情もありそうです。奇しくもレンジャーズはその点で話の合う相手だったといえるかもしれませんね。

最後に

投手陣が打ち込まれ、イオバルディはメディアによると危ない箇所ではない肘の張りでMRI異常なしとはいえ登板間隔を開けています。またここまでのチーム躍進の立役者であるヘイムが2~3週間の離脱で下手をすると今季狩猟するような手術の可能性もあるとのこと。アストロズが足元に迫っている中でけが人も増え、あまりよくはないチーム状況です。このあともリリーフの補強を中心に狙いを定めていくようですが、地区優勝の行方ははたしてどうでしょうか?また棚からぼたもちで拾った23年全体4位のワイアット・ラングフォードもプロデビューを果たしており、非常に楽しみです。

今後のチームの補強と7年ぶりのアメリカン・リーグ西地区制覇がなるかどうかを見ていきたいところです。



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