【TEX】今年はプロスペクトの確保が目標(後編)

 前編では、今年上位進出の見込みがないチームにおいて、数年後のビジョンに沿ってプロスペクトを溜めることが今季の目標と書きました。後編では、そのプロスペクトをどうやって集めるかという方法を紹介します。

1.2022年のドラフト

 ルール4ドラフト、アマチュアの学生を指名する普通のドラフトのことです。前年の勝率が悪かったチームの順にドラフト候補を指名していきます。途中にクオリファイイングオファー(説明すると長いのでググってください)の補償や、戦力均衡ラウンドと呼ばれる要するにあまり豊かじゃない街のチームに対する指名権の補償などがあります。

 レンジャーズは昨年パイレーツに次いでワースト2位の勝率だったので、全体2位の指名権が与えられます。この全体2位で誰を指名するのかは、当企画のメンバーであり、アマチュア関連に造詣の深いあまなつ氏桃色💖無職氏のnoteなどをご覧いただければと思います。狙い所は唯一トレードできる戦力均衡ラウンドの指名権の獲得でしょう。指名権という意味だけでなく、ドラフト全体に使える資金を増強することができるという意味も兼ねて、です。詳しくは桃色💖無職氏の投稿をご参照ください。

2.2022年のインターナショナル・アマチュアFA(以下INFA)

 17歳以上のルール4ドラフト圏外(アメリカ、カナダ、プエルトリコ)選手を球団によって割り当てられた契約金総額を超過しないように獲得できる制度です。主に中南米の選手が対象になりますが、大谷選手の渡米時のように25歳未満であれば他国プロリーグ選手もこの枠に含まれます。

 この使用できる契約金総額も部分的にトレードで獲得できます。例えば今マリナーズで活躍しているディラン・ムーアは、ドラフト指名から1年でこの契約金使用権とトレードされています(今となっては惜しい案件ですが)。あくまで使用権であり資金そのものをもらえるわけではないですが、コロナ禍で少しでも支出をカットしたいチームは例年より多い気もしますし、話があれば乗っていきたいところでしょう。

3.既存戦力のトレード

 前フリが長くなりました。1にしろ2にしろ全球団が所持している権利であり、ワールドシリーズを狙うことなどできないチームにとっては戦力の切り売りこそが特権と言えるでしょう。(優勝争い中でも平気で戦力整理するレイズを除く)

 既存戦力のトレードによって、
 A.プロスペクトそのものを獲得する
 B.プロスペクトを獲得する権利を譲渡してもらう(前述1,2参照)
という2つの動きで、現在を売って未来を買うのが数年後戦うために必要になってきます。選手紹介も兼ねて、売れそうな選手をリストアップします。

■野手のトレード候補

ジョーイ・ギャロ(23年FA、ライト、27歳)

 三振四球ホームランでおなじみのチームの主砲。不安定なバッティングと異なり、守備走塁は堅実かつ安定してプラスの数字を期待できる。残念ながら球界最強のプレイヤーフレンドリーな代理人スコット・ボラスの顧客でアンドラスをあの形で放出したことも含めて長期契約は期待薄であり、今年一定以上の成績を残せばまず間違いなく放出されるはずです。彼の打棒は名残惜しいですが、レンジャーズの未来には代えられないです。

アイザイア・カイナー=ファレファ(24年FA、ショート、26歳)

 気づけばあと3年でFAらしい26歳のC兼UT→3B→SS。SSの守備でゴールドグラブを取った3Bほどのインパクトを残せるかは疑問ながら、無難には守れています。まだ10試合程度ではあるものの、打撃が力強くなっているような…?OPS.750程度の打力をキープできれば、キャッチャー経験や現在の年俸の安さ、2年ほどの保有権も含めて、それなりな需要は期待できるでしょう。

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■投手のトレード候補

カイル・ギブソン(22年FA、先発、33歳)

 開幕戦嘘のような大炎上も、次の登板では6回無失点8奪三振。今年はメイン球種のシンカーの球速が現時点でキャリア最速であり、もしかすると契約当初の期待通りの成績を残すかもしれません。そうなったら今年が10M、来年が7Mというリーズナブルな年俸もあり、夏にトレード移籍の候補となります。

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マイク・フォルティネビッツ(22年FA、先発、29歳)

 球速が低下の懸念でブレーブスから放出されてしまい、再起を誓う速球派右腕。全盛期にはまだ足りないものの少なくとも2020年の誰だかわからない球速ではなくなっています。年俸たったの2Mなので、彼も成績次第ではトレード候補でしょうが、来年も安価で保持できるので、ギブソンと比較すると優先度は下がります。

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有原 航平(22年FA、先発、29歳)

 え?渡米したばっかりじゃない!と思うかもしれませんが、彼の契約周りの状況はフォルティネビッツとほぼ同じです。今のところ良くも悪くも持ち味は出ている(制球難ではないが三振は少なく、ストライクをそろえたがって痛打も多い)ので、何らかの変化が必要でしょう。フォーム的にはもう少し出力上げられそうな気もします。

イアン・ケネディ(21年FA、リリーフ、36歳)

 1ヶ月前は招待選手、今は故障者多発のレンジャーズブルペン陣の救世主、不動のクローザーです。ロイヤルズ時代にリリーフ転向で新境地を開き、昨年よりも球速が出ています。こちらも2.15Mと年俸負担はわずかで、大きな見返りは期待できませんが、相手からしたら何人いてもいい対価を要求されないリリーフなので、活躍してくれるとお買い得度の高い選手となるでしょう。

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 このようにレンジャーズは昨年からの復活が期待される選手(復活してあわよくばトレードしたい)と若手中心のチームです。他にも20-21年オフで獲得したデビッド・ダールやネイト・ロウ、デーン・ダニングといった選手も話が来れば状況次第でトレードされることになるでしょう。このあたりの選手が評価を上げれば上げるほど、ほんの少しずつレンジャーズの遠い目標に近づくことになります。一生懸命応援しましょう。

※リンク引用元は主にBaseball Savant。数字は現地4月11日まで。

 



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