【TEX】レンジャーズが大型補強に踏み切ったワケ…は不明

次の話題を書こうとしている間に次から次へと事態が動き、以前の投稿の末尾に書いた内容が書けなくなっていく。そんな予想外の動きをしてくれたテキサス・レンジャーズ担当です。

次回は現行労使協定の期限が切れる今年のオフにどう動くべきかを書いていこうと思います。よろしくお願いします。

【TEX】2021年の発見とオフの動き方(前編)

補強を時系列順に


さて、のんびりと3年契約以内でマイク・マイナーランス・リンカイル・ギブソンの四番煎じは誰がいいかと考えている矢先のことでした。

え?

60勝102敗のチームが年俸総額を100M追加すると息巻いて誰が信じるでしょう?私もなにかの間違い、もしくは怪気炎を発してマリナーズあたりの邪魔をしにいく程度に考えていました。しかし事態は思わぬ方向に。

まず、今年ショートからセカンドに主戦場を変えてキャリアハイの45本塁打を放ち、ア・リーグMVP投票で3位に入ったマーカス・セミエンを7年175Mで獲得。

数時間後にはジョン・グレイと契約合意を発表。

またたく間にコール・カルフーンと契約。最後に

2020年のナ・リーグMVPでワールドシリーズMVPのコーリー・シーガーと10年325Mの大型契約で合意。24時間で5億ドル以上の資金を注ぎ込んで、リーグ最高峰の二遊間と3番手クラスの先発(レンジャーズではエースです)、ある程度守れて対右投手なら問題のないベテラン外野手を獲得してきました。

100敗チームが今補強した理由を推測

今のMLBではチームが過渡期を迎えた場合、タンキングといわれる戦略を取るチームが多いです。タンキングとは一般的に

  • チームの想定ピーク時期に合致しない選手をトレードしてプロスペクトに替える

  • 無駄な資金を使わない

  • 弱いチームを作って上位のドラフト指名権、および大きなボーナスプールを獲得する

あたりが具体的な行動になります。安く囲えるプロスペクト勢中心にコアをつくり、トレードやFAで足りないピース補強していくということですね。

たしかにジョシュ・ヤングコール・ウィンといったプロスペクトたちが3Aまで昇格し22年にデビュー見込み、順調にいけばジャスティン・フォスキューは23年、ジャック・ライターは24年お披露目となりますが、一般的な動きであれば24年くらいに補強スタートだと思います。

ではなぜレンジャーズが未曾有の大型補強に動いたのか。様々な記事を読み漁りましたが、残念ながら明確に核心に触れられる記事がなく、すべてもりまるの見解となります。

2023,24年オフのFA野手が手薄。特に内野

上記をソースに独断でFA上位選手を抜き出してみました。WARなどでランクをつけた方が適切かもしれませんが、面倒なのでしていません。

以下括弧内は翌年何歳のシーズンであるかを指す

2022オフ
先発
ジェイコブ・デグロム(35)
 ※1年30.5Mのプレーヤーオプションを破棄した場合
ノア・シンダーガード(31)
ショーン・マナエア(31)
ジョー・マスグローブ(30)

野手
ザンダー・ボガーツ(29)
トレイ・ターナー(30)
アーロン・ジャッジ(31)
ダンスビー・スワンソン(31)

2023オフ
先発
トレバー・バウアー(33)
アーロン・ノラ(31)

野手
マニー・マチャド(29)
 ※5年150Mの残り契約をオプトアウトした場合…しなさそう
ホセ・ラミレス(32)
マックス・マンシー(34)
リース・ホスキンス(31)
ラファエル・デバース(28)

21オフのFA市場に残っているカルロス・コレアトレバー・ストーリーなどの動向次第ですが、ボガーツターナーのFA市場流出は、可能性自体がそもそも薄いと考えています。特にメジャーリーグ最高の資金力を持ち、シーガー流出が確定したドジャースが、チームのプロスペクトを上から2人差し出してまで獲得したターナーを手放すとは考えづらいです。

レンジャーズは前述のヤングを含めてサードのプロスペクトが多く、サードを補強する可能性は元々想定していないとするならば、二遊間を固めるにはスワンソンなどごく一部の選手しか対応できません。セミエンやシーガーとはかなりレベルの差がある選手をコアとしてコンテンダーとして打って出る方がリスクが高いと判断した可能性があります。

要するにこのクラスのFA選手獲得は、10年に一度の豊作といわれている今年の市場でしかなしえないことなのです。

ビジネスの話

タンキングは現行ルールにおいてスポーツチームを再建させるためにコストを減らしつつ時機をうかがう戦略ですが、はたしてビジネス的にも最適解に近い形なのでしょうか?タンキングチーム=弱くて魅力のないチームなので、チケットの売上はさっぱりで客入りも望めないでしょう。

またメジャーリーグのチームは30球団におよそ50M程度の全国放映権料とともに各チームのローカルテレビ局の放映権料が入ってきます。レンジャーズの場合は年に80M(収益分配の対象なので丸々入ってくるわけではないです)といわれています。このローカルテレビ局の収入は我々がスカパーやDAZNと契約しているように視聴契約が基本です。
もうわかるとおもいますが、勝てる見込みのないチームの試合を見るために契約するファンが多いとは思えません。テレビ局から大きな契約をもらっていることを踏まえても、契約を推進する話題作りは必要だったと考えます。

新労使協定の行方

労使交渉が進展せずにロックアウト中のメジャーリーグ。争点の一つにあるのが、選手の年俸に関する話です。

  • 年俸調停権取得までのサービスタイム

  • 年俸調停権取得者の年俸の算出ソース

  • 贅沢税上限

  • サラリーフロア(球団総年俸に下限を設ける)

  • FAになれる選手に年齢制限を設ける

などといったことが議題にあげられ、労使の隔たりはあきらかですが、一つだけいえることはMLB機構側も選手会側も、選手の年俸を今後どう管理するかを通してタンキングを抑止する方向で動いていることです。

特に選手会側は、タンキングされると30球団トータルで見ると年俸というパイが小さくなって選手全体にとって不利益になることが自明なため、ここは譲らない可能性が高いです。

テキサス・レンジャーズの22年の確定年俸は40人枠すべてで50Mほどでした。23年は20M程度まで少なくなります。仮にこの状態でサラリーフロアができて誰かを獲得しないといけない…となると、市場が手薄になってから動いたのでは遅いのです。年俸総額を埋めるために不良債権をサラリーダンプしてプロスペクトをもらうという手もありますが、プロスペクトは所詮メジャーでプレーしてみないと真価がわからない存在で10Mの価値がある若手などほとんどいないといっていいでしょうし、こちらの方が博打になりえます。

セミエンがベルトレのように晩年まで一流でいられるのか、すでにショートの守備が怪しく故障も多いシーガーに10年契約を与えた先はどうなるのか、という不安よりも、さらに先行き不透明な情勢がチームに早めの勝負を仕掛けさせる契機になったと考えています。

おそらくまだ補強する

ロックアウトが解消された後も、シーガーのような大型契約はないにせよ、おそらくまだ補強に動くでしょう。チームの総年俸は115M程度で、ポジションの穴はいくらでもあります。ショートのポジションを失い、ヤングまでのつなぎのサードになることが確実なアイザイア・カイナー・ファレファはすでにトレードの噂も出ています。ロックアウトはおそらくあと2ヶ月しても終わっていないと思いますが、誰を取ってどう動くのか、いろいろ考えさせられるシーズンになりそうです。

ちなみに、何をどれだけ補強しても目標は5割にどれくらい近づけるか、程度だと思います。102敗ですよ?大型補強がうまくいったところで20勝稼げたら御の字でしょう。22年は補強戦力がうまく適応することと、ヤングたちのデビューを待つ1年になると思います。

はやくロックアウト終わることを祈りましょう!



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