サブカル大蔵経35 本橋信宏『東京の異界 渋谷円山町』(新潮文庫)
本橋信宏さんの東京異界シリーズ。上野、新橋、鶯谷、高田馬場と愛読してきて、新潮文庫で渋谷、円山町。
今までのシリーズより、どこか他人行儀のような手探り感。
渋谷は、女が変身する街である。p.14
強さと弱さが同居している。
「の・ようなもの」。作品には売れる前の小堺一樹・ラビット関根(関根勤)がホモ漫才コンビで登場したり、落研の女子高生たちの中に女優志望だった10代の頃のエド・はるみも見られる。p.53
森田芳光監督の実家が円山町の料亭。
「あたぼうです。」江戸っ子が使った"当たり前"と言う意味の俗語を久しぶりに聞いた。p.76
芸者のきっぷの良い言葉。
"贔屓"って言う言葉がもう脆いのね。p.94
芸者稼業の厳しさと儚さと矜恃。
<母乳量、ご心配ありません>p.176
風俗産業の発明言語。
だから、子供も同じじゃねーかって。ニコチンの入ったミルクが欲しくなるんじゃないかって。p.188
落語の世界が、まさか下町ではなく、円山町にある。
「(東電OLは)みんなに同じことをしてる」p.254
死亡したOLの足取りを追う中で浮かびあがるせつなさ。
顔が見えづらい街。だからさまざまな人が寄ってくるのか。その中で住んでる方々の歴史、色街に群がるお歴々。円山町すら飲み込もうとする再開発。何か渋谷という谷底の街がこれから一番の魔都になりそうな気がしてきた。
本を買って読みます。