サブカル大蔵経22泉昌之『食の軍師』⑧(日本文芸社)
『食の軍師』が完結しました。残念ですが、実はこの作品、泉昌之の最長連載だったのでは?これは、何を意味するのか。
泉昌之作品に出てくるトレンチコートに帽子スタイルのホンゴーさん。こないだ久々読み返した『ダンドリ君』にも学校の同級生として登場していた。ホンゴーさんとも日本中が長い付き合いになっている。
サブカルとは何かを考えた時に、泉昌之というユニットこそサブカルの歴史そのものなのではと思った。彼らは、息の長い守護神のように傍らに存在してくれている。
アクションでの『ズミラマ』の無意味性に衝撃を受け、初めて青年誌連載の漫画単行本を買った。その後『ダンドリ君』や旧作の復刊を読み続けた。小さな譲れないこだわりのくだらなさと、安定した劇画の並列が心地良かった。
『孤独のグルメ』が単行本になった時は、面白くて何回も読み返した。最初は久住さんの原作が職人谷口ジローの静謐な図柄で描かれた泉昌之作品のパロディに思えたが、そのうち、ひとりメシの自由を守る男のペーソスが文学へと変窯した感じがした。まさかのドラマ化も局の代表作になるほどの破格の成功をしたが、泉昌之的なものは薄れていったと思う。
泉昌之名義が怪作『芸能グルメストーカー』にて復活し、その後、『食の軍師』が現在地だった。『その目玉焼きいつつぶす?』と『めしばな刑事タチバナ』などの新しい視点の食マンガが出ていた中で、その食べ方のこだわりの元祖として、<注文の順番の仕方>をベースに、店の内装や皿の中身の配置と、図象にこだわり続けた泉昌之節は、「夜行」で駅弁の食べ方にこだわった時から一切変わっていない。そして、店や食べる種類も、地方都市の名物に中華飲みに大衆食堂。大人のお子様ランチのご馳走感。時代が泉昌之に追いついた。だからキワモノではなく、長期連載になったのだと思う。
神泉のコンビニと立ち食いそばの同棲店。どうだこの製品の組み立て!ハムカツ80円かき揚げ120円ハバネロサーディン352円ビール代450円しめて1002円の至福。p.58
有楽町交通会館。なるほどこれはオカズ焼きそばだ‼︎p.72
川崎丸中。四方をメニューに囲まれてるぜ!p.175
泉昌之作品の特徴として「迷走」が挙げられる。道に迷ったり、予定通りに行かなかったり、酔っ払ってグダ〜となったり。でもその限られた自由の中で工夫をしていく姿が指針となり、自分と重ね合わせていく鏡となる。その迷いこそが生きている証になると、後押ししてくれる。
作画の和泉晴紀さんが藤木TDCさんとタッグを組んだ『辺境酒場ぶらり飲み』や「フリースタイル」の連載を読むと妙に落ち着く。世代は多少違っても、ともに時代を渡り歩いてきた感があるからなのでしょうか。長期連載完結お疲れ様でした!
ちなみに、いつも思ってましたが、軍師の存在ほぼ意味なくなってたけど、服描くの毎回大変だったろうなあ。