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サブカル大蔵経56 赤木有為子『イギリスの食卓に夢中』(講談社)

 なんとなく、家にいる時間が長いと、イギリス的な生き方が見直されていくような気がします…

 本書、外国かぶれの鼻持ちならないエッセイかと思ったが、意外にすっと入り込んで、読ませる。料理の専門家でないゆえに、自分の変なアレンジはなく、普通の家庭から聞き取ったレシピをそのまま伝えようとしてくれている感じがしました。

 単なるレシピ本だけでないのが心配だったが、処女作ゆえか筆致も素直で、イギリスの料理を通して、機微や歴史をあぶってくれることに脱帽です。続編を読みたいが、これ一作みたいですね…。

 ポリスマンはたった一言。「どこかでカップオブティーをしなさい。」p.20

 さすがイギリス。

「あなた、イングリッシュティーをするんだ、ハッ。」とウェールズ出身の博士。イングランド以外では受けない習慣。p.52

 そうか…、イングリッシュティーはイングランドだけか…。日本なら、なんだろう。お好み焼き、関西と広島とか?

 ヨークに暮らす人はほとんどが貧しい農夫だったから、家にいつもある小麦と牛乳だけで作れてお腹を満たす、ヨークシャープディングを発明。p.68

 ヨークシャープディング、これ、美味しそうなんですよ。

 一さじのドリッピングが風味をましてくれる。無駄をしなければ足りないものはない。肉は鉄の焼き串に刺され火のそばでゆっくり回して時間をかけて調理された。その肉から流れ落ちる油を受けて集めたことからトリッピング(雫)と言われるようになった。p.75

 このつつましいイギリス流、京都でいうところの「始末屋さん」かな。このビーフウエリントンというグリル料理、実際家庭で試してもらったら、ドリッピング、とても美味しかったです!

 150年前の料理書がどうして役に立つのかしら?この本はアップデートされている。いつも改訂してほしいとミセス・ビートンは言い残して亡くなったのね。イギリス人はマナーや料理を頑なに守り続けています。p.85

 この辺の大英帝国というより、田舎のおばあちゃんの知恵袋的な思想は、日本人にも嬉しい。自分の命のあとまで考えて改訂を見越して作る姿勢だからこそ、続いていくのかなぁ。

 チーズオントーストを食べて、土管を拾って売れば、お金になるのさ。p.143

 チーズオントースト、これがイギリスの原点なのかなぁ。フランスもクロックムッシューだし。結局こういうのが美味い。

 イギリスのキッチンはオーブンで成り立っていて、換気扇はなく、フライなどの調理法はイギリスの料理にありませんでした。フィッシュ&チップスはイギリスにあった料理ではなく、大陸から伝わってきたものなのです。p.162

 そうか、チップスも古来伝統ではないのか。「大陸伝来」…。これはイギリスではどういう意味を持つのかな。

 コーニッシュパスティーのパイの両端が、二重になって硬いのは、スズ鉱山労働者の手にはヒ素がついているおそれがあるから、パイは必ず両端を持って食べて、手で触った部分を捨ててしまえば安全。具は水分出ないように細かく刻まない。p.172

 そうか…、こういう食べ物の話、たしか北海道の炭鉱地区でも似たような話聞いたことあるような…。

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本を買って読みます。