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狛江のまちに新たな「循環」を生み出そう!「狛江まち-トランジションラボ」を開催【第1回目 レポート】
2024年10月に、市民が中心となってまちに変化を生み出すためのプログラム「狛江まち-トランジションラボ」がスタートしました。第1回目のワークショップの様子をレポートします。
(※2024/12/17 一部表記に誤りがありましたので訂正しました)
「狛江まち-トランジションラボ」とは
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「狛江まち-トランジションラボ」とは、市民が中心となってまちに変化を生み出すための、学びと実践のプログラムです。
「狛江のまちにこうなってほしい!」という想いを軸に、市民からまちを変えていくためのさまざまな活動を生み出すことを目指します。
プログラムのテーマは「循環」。
狛江に新しいモノ・コト・ヒトの循環をつくるためにどんなことが必要か、市民の目線で考えていきます。まちを考えるうえで「循環」はとても大切なキーワードです。
家庭で出るゴミの利活用や、市内の個人飲食店での食事、市民が集まれるイベントを開催するなど、まちにとってさまざまな良いことを「循環」と呼ぶことができるかもしれません。
このプログラムでは、全4回に渡ってワークショップを行い、参加者のみなさんと一緒に地域に眠っている資源を掘り起こし、狛江の未来に向けたチャレンジに取り組みます。
第1回のテーマは『まちの未来を考える概念を 「学ぶ」』
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「狛江まち-トランジションラボ」第1回目のテーマは、『まちの未来を考える概念を 「学ぶ」』です。
まちの未来を考えていくにあたって、まずは今回のプログラムに取り組むための基本的な考え方や市民参加型のまちづくりの事例について教えてもらいました。
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講師は狛江市内のデザイン事務所『studioTRUE』の松岡 大雅さんと寺内 玲さん。二人は狛江市に拠点を置き、いち市民としてデザインを活用しながら、まちにポジティブな変化をもたらすさまざまな実践を展開してきました。
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当日の会場には、狛江市で暮らす学生や社会人、子育て中の主婦、さらに市外で暮らしながらも狛江のまちづくりに関心のある方まで、10名の参加者が集まりました。
自己紹介タイムでは、「狛江をもっと盛り上げていきたい」「新しいまちづくりについて学びたい」「狛江をさらに暮らしやすいまちにしていきたい」など、それぞれ異なる目的意識について語ってくれました。参加者同士でどのような共創が生まれるのか楽しみです!
「トランジション(デザイン)」とは?
最初に解説してもらったのが、「トランジションラボ」の基盤となる考え方である「トランジションデザイン」についてです。
そもそも「トランジションデザイン」についてから学ぶという参加者も多いなか、講師の寺内さんは次のように説明してくれました。
「トランジションには「移行する」という意味があります。私たちは、より望ましい未来に移行していくために、まちで何かを取り組むことを「まち-トランジション」と呼びたいと思っているんです」
私たちは、近年の異常気象や世界的な流行病という地球規模の問題から、政治的分極化や地域格差などの社会的問題にも直面しています。
さらに現代では、1つの社会問題に対して、背後には複数の問題が複雑に絡み合っていることが少なくありません。1つの問題に対して、1つの解決策で対処するのは難しいのが現状です。
そのような複雑かつ、いじわるな社会問題が存在しているなかで、「社会全体が(組織、機関、コミュニティと同様に)、より持続的で、公平で、望ましい長期的な未来に向けて意図的に移行していかなければならない。そのための長期的かつ複合的で包括的なアプローチを取ることが、トランジションデザインにおける主張であり、基本的な姿勢でもある」と、講師の二人が教えてくれました。
世界各地の都市で行われている「トランジションデザイン」の事例
トランジションデザインの基本的な考え方について理解したところで、次に世界各地の都市で実際に行われている「トランジションデザイン」の事例を2つ紹介してもらいました。
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まず1つ目は、スペイン・バルセロナで行われている「スーパーブロック(Superblocks/Superilles)」と呼ばれるプロジェクトです。
これは、バルセロナの複数の街区を一つの大きな塊(スーパーブロック)とみなし、その内部を車よりも人が過ごしやすい空間へとつくり変える取り組みで、車中心だったバルセロナの街を、人々が安心して歩ける暮らしやすい街へと変貌させたのだそうです。
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続いて、2つ目の事例として紹介されたのが、神奈川県座間市で行われている「WOOMS」を活用したプロジェクトです。
廃棄物削減に積極的に取り組んでいる座間市は、2020年8月から廃棄物収集の効率化を行う「WOOMS」というシステムを使った実証実験を開始しました。
市が保有する22台のごみ収集車(パッカー車)すべてにタブレットを設置し、効果の測定と改善を続けてきた結果、ごみ収集の効率が継続的に向上し、市民サービスの質も高まっているそうです。
このように、国内外問わずさまざまな都市で「トランジションデザイン」の考え方を取り入れたまちづくりが行われているのだということがわかりました。
「狛江まち-トランジションラボ」で目指すもの
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トランジションデザインから着想を得てスタートした「狛江まち-トランジションラボ」では、狛江市の「社会変革」を目指していくことが取り組みの目的だと講師のお二人は語ってくれました。
「変革」といっても、変えていく対象は大きなものではなくても大丈夫とのこと。小さなことからコツコツとよりよい社会へ移行していくことが大切なのだそうです。
プログラムをきっかけに、移行の先にある社会変革への意識や姿勢を持って、狛江のまちやその先の社会について考え、行動する人になることが参加者の課題です。
取り組みたい狛江市の課題を考えるグループワークを実施
レクチャーが終わったあとは、参加者同士で狛江のまちで解決したい課題について考えるグループワークを実施しました。
参加者には付箋(ピンク、グリーン、イエロー)とペン(黒、赤)、模造紙が配られ、次の流れでワークが進められていきました。
①自分が取り組みたい「社会問題」を思いつくだけピックアップする
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まず取り組んだのは、配られたピンクの付箋に参加者それぞれが取り組みたい「社会問題」を書き出すワークです。
10分間で付箋1枚につき1つの社会問題を、思いつくだけ書き出していきました。「気候変動」「自然保護」「災害対策」「生物多様性」などの地球規模の問題から、「子育て支援」「公園の利活用」「交通事故の減少」などの生活に密接に関わる問題までさまざまな問題がピックアップされました。
②ピックアップした社会問題のなかから、狛江に関係が深そうなものについて話す
続いて、ピックアップした社会問題のなかから、より具体的に狛江と関係が深そうなものに着目しました。
例えば、「自然保護」であれば「狛江にある自然をどのように守っていくか」、「子育て支援」であれば「狛江に暮らす子どもの居場所を作っていく方法」など、狛江市の特徴やまちが抱えている課題を結びつけて、考えを深めていきます。
③取り組みたい社会問題が近い人同士でグループを作る
参加者が関心のある社会課題と狛江のまちとの関係性について考えたところで、次は取り組みたい社会問題が近い同士で2〜3人のグループを作りました。
課題をもとにできたグループは以下の5つです。
グループ1:子どもの居場所づくり
グループ2:公園の利活用
グループ3:自然保護
グループ4:自然と人とのかかわり
グループ5:道路状況の改善や発展、モビリティの活用
④グループごとに社会問題の原因となる課題を考えてマッピング
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次にグループごとに取り扱う社会課題の原因となる課題を、グリーンの付箋に書いて模造紙に貼り、全体像がわかるようマッピングしました。
社会課題(ピンクの付箋)を中心に、それがなぜ起こるのかを考え、課題を深堀っていきます。さらにそれぞれの課題や原因の因果関係を矢印で繋ぎ、課題同士の繋がりを可視化。
会場では参加者同士がディスカッションしながら、真剣に原因を探っており、模造紙があっという間に付箋で埋め尽くされていく様子が印象的でした。
⑥おおもととなる課題を見つけて解決策を考える
続いて、ワークを通じて見出した課題のおおもとにある具体的な課題(上位課題)を探して、グループで効率よく課題を改善することができる解決策(介入点)をイエローの付箋に書くワークを行いました。
⑦課題の解決策をスケール別に分ける
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グループワークの最後に、⑥であげた解決策を「地球規模」「日本規模」「東京都規模」「狛江規模」「近所規模」「自分規模」の6つのスケール別で分けていきました。規模を確認することで、参加者がどの介入点で動けそうかを具体的に考えていきます。
各グループでワークを通して見つけた課題を発表
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ワークショップの最後に、各グループが今回のグループワークで見つけた課題を発表することに。
「子どもの居場所づくり」を考えたグループ1からは、カフェチェーン「サンマルク」の閉店や、市民プールが古くなって使いづらくなってしまった問題が挙げられました。
解決策として、お店と協力して中学生の職業体験の場所を作ったり、学校の中にみんなが使えるカフェを作ったり、おばあちゃんやおじいちゃんをカフェのスタッフとして迎えたりするアイデアが出ました。
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次に「公園の利活用」について考えたグループ2からは、壊れにくい遊具を設置したり、楽しく安全に遊べるルールを作ったりするアイデアが生まれました。
さらに、公園にコミュニティカフェを作って、いろいろな世代の人が集まれる場所にしていきたいという提案もあり、他の参加者からも「楽しそう」と共感の声がありました。
「自然保護」について話し合ったグループ3は、自然を楽しむイベントの開催や、市民農園で育てた野菜の販売、狛江の自然を紹介する地図作りなどを提案。
また、使われていない農地を市民農園として活用したり、農業をしている高齢者と若者をつないだりするアイデアも出て、新たな発想へと繋がっている様子が伺えます。
「自然とのかかわり」について話し合ったグループ4は、都市化のなかで自然とのかかわりが減ることで、人の自然に対する興味が薄れているという問題意識から、「街自然探検」の実施や、条例を変える、という意見も出ていました。
「道路やモビリティの活用」を考えたグループ5は、環境に優しい交通の仕組みづくりを中心に話し合ったそうです。
CO2を減らす取り組みや、スマートフォンで使えるカーシェアの導入、道路の舗装材を工夫することなど、具体的なアイデアがたくさん出てきて、他の参加者も驚いた様子でした。
ワークショップ終了後は、参加者の皆さんが交流を深める懇親会を実施しました。
・「狛江の課題について真剣に考える時間ができて嬉しかった」
・「課題を考えることで、逆に狛江の魅力にも気がつくきっかけになった」
・「まちづくりについて学ぶ良い機会になった」 など
さまざまな感想を語り合い、それぞれの課題意識に寄り添うワークショップとなりました。
ご紹介したワークはどなたでも行えるものとなっていますので、記事をご覧いただいた読者のみなさまも、ぜひ狛江のまちづくりについて考えてみてください。
「狛江まち-トランジションラボ」は全4回を予定しています。他にも市民が中心となって狛江の未来について考えるさまざまな機会をご用意しますので、ご興味がある方はぜひご参加ください!
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講師:デザイン事務所『studioTRUE』の取り組みについて
■URL:https://studio-true.net/
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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