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夫婦の絆から考えた「寝室」の設計ポイント


あなたの知らない寝室の世界

住宅設計を担当する建築士によれば、家づくりでの打ち合わせで夫婦の関係がぎごちなくなって困るのは、リビングでもなくキッチンでもなく「夫婦の寝室」なのだそうです。今月は、このような気持ちの齟齬が生ずる前に、あらかじめ寝室の問題や解決策を学んで、もっと自由に自分らしい安らぎ空間をプランニングできるよう、情報を厳選して紹介いたします。
リビングやキッチンは夫妻が要望や意見を出し、間取りができあがっていくのですが、夫婦の寝室に限っては設計の最終段階となって、にわかに新たな要望が出てくるそうです。
奥さんが怪訝な顔をして一言「私の部屋なんだけど…」。
「なんだ、私の部屋とは?」とご主人。
つまり「できれば私の寝室がほしい」ということなのですが、ご主人には意味がわかりません。
聞けばその理由は、早寝早起きなどの生活パターンの「夫婦の時差」、消したり着けたりのクーラー戦争の「温度差」、さらに若い頃は気にならなかったお互いのいびきや歯ぎしりなどの「騒音」、など多種多様で深刻です。


まずは、寝室のプランニングの基礎知識

最初に押さえたいのは洋室か和室かの選択です。
ベッドを置く洋風のスタイルでは、部屋の使い方は寝室に限られてしまいます。
けれども和室に布団を敷く場合は、昼間は多目的に利用できます。和室にしておくと、子どもの遊び場やアイロンがけなどの家事スペースにもなって便利です。
また、フローリングの洋室にして、一部に布団が敷ける広さの畳コーナーを設ける方法もあります。フローリングの上に置くだけで施工でき、撤去も簡単な置き畳を採用するのもいいでしょう。
ただし布団の場合は、上げ下ろしの手間が必要で、年を重ねると負担になるかもしれません。


洋室におけるベッドのレイアウト

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ベッドの場合は、部屋の広さとのバランスを考えましょう。寝室はあまり動きまわる部屋ではないので、通路の幅は最小限でも大丈夫です。でも、ベッドや収納家具で足の踏み場がないのでは、ベッドメイキングや掃除の際に不便です。
図を参考にして、寝室の広さを割り出してください。
また、プラニングするときは、収納の前には出し入れするためのスペースをとりましょう。
開き扉のクローゼットの場合はベッドとの間に90cm程度必要ですが、折り戸や引き戸タイプなら50〜60cm程度ですみます。
造りつけのクローゼットにするなら、折り戸か引き戸がおすすめです。
チェストは、引き出しを引く空間と人がかがむ空間を考えて、最低75
cmの間隔をあけましょう。


寝室の配置を考える

人生の3分の1を過ごし、毎日の疲れを癒す寝室は、静かで落ち着ける環境づくりを心がけましょう。

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気を配りたいのが、「音」「光」「外部からの視線」です。
配置計画の際は、これら3点を念頭に置いて、隣家や道路、他の部屋との位置関係を考えましょう。
どうしても道路に面してしまう場合は、防音サッシや遮音壁を設置するなどの工夫をしてもらいましょう。
また、一種の緩衝地帯として、押し入れやウォークインクローゼットなどの収納スペースを利用する方法もあります。
これらを道路側に設けたり、隣にトイレや子ども部屋がある場合は、間をクローゼットなどの壁面収納にするなど応用してみましょう。
朝日で熟睡が妨げられることがないよう、遮光性のあるカーテンをつける方法がおすすめです。
カーテンボックスを設置しておけば、光もれも防げます。また、プライバシーを守りながら光や風をとり込むには、窓の高さがポイントになります。
外部からの視線が入りにくいハイサイドライトやローサイドなど、立地条件を最適な窓を考えましょう。


夫婦円満の秘訣は「夫婦別寝(夫婦が別の寝室を利用すること)」に?

女性向けサイトのアンケート調査で、「同じ寝室で寝ているか」という回答を結婚年数別に集計したところ、結婚年数が経つにつれ、同じ寝室で寝る夫婦の割合が減少していくことが分かりました。 

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5年を超えた段階で同じ寝室で寝る人の割合が一気に10%程度下がり、10年を超えると、さらに15%程度下がることから、6年目以降と11年目以降が、別の寝室で寝るタイミングである事が伺えます。
結婚21年以上の夫婦は1年目の夫婦と比べて一緒の寝室で寝る割合が3割以上減少する結果となりました。


上記のアンケートで「夫婦で寝室が同じ」と答えた方で、同じベッドで寝ている人の割合を結婚年数別に分けて集計してみました。

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結婚1年目の夫婦は8割近くが夫婦2人で同じベッドで寝ていることが分かります。
2年目から徐々に子供の割合が増える傾向にあり、
11〜20年目になると夫婦で同じ寝室でもベッドを別にして一人で寝る人や別の寝室で寝る人の割合が顕著に増えていることが分かります。年数が経つにつれ、明らかに夫婦別寝が増えていきます。


ライフスタイルとしての「夫婦別寝」

多くの市場調査でもシニア世代がどのような睡眠環境を求めているかを調べたところ「夫婦別寝」というコンセプトが浮かび上がります。
「夫婦仲が悪くて」というわけではなく、むしろ夫婦関係に前向きで、それぞれの個性やこだわりを大切にする傾向が強いのです。

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こういった回答の背景には、現在のシニア世代がこれまで暮らしてきた住宅が関係しています。
高度成長期に最初に建てた家は、家の中で快適に暮らすといった発想はなく、ようやく子供が独立して余ったスペースの活用法としてゆとりとくつろぎを感じられる新たなコンセプトとして「夫婦別寝」を考えるようになってきたのです。


夫婦別寝の設計パターン

夫婦別寝の設計は、
①個室の寝室を2つ作る「完全別室型」
②広めの一部屋の中央にクローゼットなどを作りつけることで夫婦の生活空間を分ける「別スペース型」
③家具をベッドの間に置く「家具活用型」などがあります。
「完全別室型」なら相手が気にならず、空調の温度も好みに合わせることができます。
「別スペース型」「家具活用型」は、同じ部屋なので相手の気配を感じられることが利点です。
体調が悪くなっても、すぐに気づいてもらえます。

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夫婦別寝リフォームも増加

リフォームを機に、別寝を選ぶ夫婦も増えています。
図面はマンションリフォームの一例です。
和室と南側の洋室をなくしてLDKを広く確保、そして夫婦別寝室で個室を設けました。

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別寝のきっかけは、奥さまが寝る前に深夜まで好きな本を読むなど、ライフスタイルの違いから。
奥さまは夫婦別寝について「とても気が楽」と満足の様子です。周囲に別寝を告げると「うらやましい」という声が大半と話されます。とはいえ、歳を重ねると健康に不安を感じることもあるため、お互いの気配が感じられる距離感は大切と感じているようです。


別室で就寝したいと思った理由

夫婦別寝にした理由については、夫婦間のライフスタイルの違いが大きく影響していることが分かりました。
理由は複数回答で「就寝・起床時間の違い」(男56%、女57%)が最も多く、「どちらかが寝る前に寝室で読書やテレビ・音楽鑑賞をするから」(男57%、女48%)、「いびきが気になるや歯ぎしりが気になる」(男41%、女52%)と続きます。

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夫婦別寝の「良さ」は男女で異なるとらえ方をしており、男性は「自由」を、女性は「安眠」を重んじる傾向が強いようです。

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お互いの気配を感じながらも、自分一人の時間をリラックスして過ごせるような、プライバシーと安全面を両立させる工夫にも知恵を絞りましょう。


最後に、健康に不安がある高齢夫婦は万一に備えて相手の気配が感じられるような工夫が必要です。
体調が急変したとき、1階と2階に分かれて寝ていたために、異変に気づくのが遅れて命を落とす例もあります。
プライバシーと安全を両立させたい場合は、完全別室にしたうえで緊急時用のブザーを設置する方法もあります。

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