星からのプレゼント
冬の夜は、星がより綺麗に見える。
りっちゃんは半纏を羽織って、外に出ました。
空はたくさんの星で埋め尽くされていました。
うわあ!綺麗。
しばらく星を眺めていたりっちゃんの目から、涙がスーッと流れました。
その時、りっちゃんの目の前に、小さな光がスーッと落ちてきました。
思わず両手を前にして受け止めると、そこには、キラキラ光る星のかけらがありました。
驚いているりっちゃんに星のかけらが語りかけました。
どうして泣いているの?
お星様は、周りにたくさんお友達がいていいな。
りつこはいつもひとりぼっち。
そう思ったら悲しくなっちゃったの。
星のかけらは言いました。
近くにあるように見えるけど、一個一個の星は、みんなとても遠くにあるんだよ。
だけど、
私はここよ
って光って、同じように遠くにいる仲間を元気づけてるんだ。
りっちゃん、今夜は私が一緒にいてあげよう。
なんでも話をしてごらん。
りっちゃんは、ママがりっちゃんのために、遅くまで頑張って仕事をしているのはわかっているけれど、やっぱり寂しい
とか
学校に行っても、いつもりつこはひとりぼっち。
話しかけても誰も返事をしてくれないの…
などと、ポツリポツリ話し出しました。
星のかけらは、静かに瞬きながら、りっちゃんの話をじっと聞いていました。
りっちゃんがふと寒そうに、体を丸めました。
星のかけらは、私を懐に入れてごらん
と言いました。
りっちゃんが、半纏の内側に星のかけらを入れて、抱きしめると
身体が暖かくなってきました。
それでも外はしんしん冷えてきたので、りっちゃんは、星のかけらを抱いたまま、鍵を開けて、真っ暗い家の中に入りました。
星のかけらは、ポカポカして、そのうちりっちゃんは眠くなってきました。
そしてかけらを抱いたまま、寝てしまいました。
翌朝りっちゃんが目を覚まして起き上がると、何かがコロコロと転がりました。
それは黒くて冷たい小さな石でした。
りっちゃんは、それを小さな小瓶に入れました。
りっちゃんが瓶を振ると、カランコロンと綺麗な音がしました。
りっちゃんはその瓶を大切そうに、机の一番上の引き出しにしまいました。
その日の夜、りっちゃんの机の引き出しから光が漏れていることに気付きました。
りっちゃんが引き出しを開けると、瓶の中の星のかけらが、前の晩と同じように光っていますした。
りっちゃんは、こうして毎晩星のかけらとお話をして過ごしました。
最初の頃は、元気がなかったりっちゃんも、星のかけらから星座の話を聞いたり、登下校中に見つけた綺麗なお花や、可愛いネコの話など、楽しそうに話すようになっていました。
ある日学校で、りっちゃんが、星のかけらのお話を思い出しながら、星座の絵を描いていると、里子ちゃんが、
りっちゃん、上手だね。
星好きなの?
と話しかけてきました。
りっちゃんは、初めて話しかけてくれた里子ちゃんに、星のかけらから聞いた星座のお話をしました。
里子ちゃんは、明日も聞かせてね。
そう言って帰っていきました。
その日星のかけらの輝きは少しずつ弱くなっている感じがしましたが、相変わらず暖かく優しく光っていました。
りっちゃんはその夜、今日あった話をかけらにしました。
りっちゃんがお友達になりたいと思ったら、私をその子にプレゼントしてごらん。
かけらは言いました。
りっちゃんは、星のかけらと別れたくなかったので、嫌だと言いました。
すると星は、あと三日で新月になり、私は光ることができなくなります。
だから、あと二日しかこうしてお話もできないの。
だから、こうして仲良くなったりっちゃんのために、私が最後にできることをしたいのです。
そして、新月の夜、石になってしまった私を、二人で月見池に投げ入れて欲しい。
そう言いました。
りっちゃんの家から少し離れた神社の近くに、月見池というそんなに大きくない池があります。
昔どこかのお殿様が、その池に写る美しい月を眺めて、歌を詠んだ、とか、以前誰かに聞いたことがありました。
私は次の日、星のかけらを里子ちゃんに渡しました。
普通の石みたいだけど、夜になったら、不思議なことが起こるから、見てみてね。
次の日、里子ちゃんは、学校に来るなりりっちゃんのところにやってきました。
とっても素敵なプレゼント、ありがとう。
里子ちゃんも、星のかけらにいっぱい話を聞いてもらったようでした。
でももう明日までなんですって。
明後日、りっちゃんと一緒に夜月見池に行って欲しいって言われたよ。
新月の夜、二人は真っ暗い道を、懐中電灯を灯し、ドキドキしながら月見池までやってきました。
足元気をつけてね。
りっちゃんは、里子ちゃんから返してもらった、真っ黒い石のようになってしまったかけらを握りしめていました。
真っ暗い池は怖かったけれど、なんだか二人で大冒険をしている気がしました。
そしてりっちゃんは、ありがとう!
そう叫んで、池にかけらを投げ入れました。
その時、投げ入れた池のあたりが、キラキラと小さく光りました。
そして、蛍のような小さな小さな光が、スーッと空に登っていきました。
二人は、その小さな光が完全に見えなくなるまで空を見上げていました。
気づくと二人は、しっかりと手を繋いでいました。
帰ろっか
そうだね、帰ろう!
里子ちゃんは、
又明日ね!
そう言って、りっちゃんに手を振りました。
家に着くと、電気がついています。
りっちゃん、どこに行っていたの?
ママが心配した顔で聞きました。
お友達と、秘密の冒険をしてきたの。
ママは、驚いたような顔をして、りっちゃんを見ました。
でも、りっちゃんの見たことがないような明るい笑顔を見て、
よかったわね。
と嬉しそうに微笑みました。