忘年怪異
近頃巷で不思議な現象が起きていた。
人々は年齢を聞かれると、老も若きも自分の年齢を忘れ、かなり若い年齢を口走る。
すると自分がその年齢に見えてしまうのだ。
又人に歳を聞いて
その人が若い年齢を口走ると
とその人がその年齢に見えてしまうと言う現象も起こっていた。
こうなると、人々は過去を取り返すかのように恋に遊びにとアクティブになる。
ただ、体はそのままなので、思わず走ったりして転んで骨折、という年寄りも激増。
子育て中の夫婦が、10代に戻ってしまって育児を放棄するという問題も発生した。
この忘年怪異を治す方法はただ一つ。
自分の正しい年齢を言わせることだった。
教授は、人に歳を聞くことを禁じ、学生たちの協力のもと
「その人の正しい年齢を紙に書いて読んでもらう」
ことを地道に続け、この現象を押さえた。
実はこれ、ある薬剤師が
歳をとる恐怖心から作った薬が空気中に漏れ出したものだった。
それでも束の間の夢は、人々に忘れていた何かを思い出させた。
本文ここまで 410文字
これはたらはかにさんの
毎週ショートショートnote
の企画に参加したものです。
お題は「忘年怪異」でした。
同窓会などで、歳を忘れて若い頃に戻ってはしゃいだり馬鹿やったり、思わぬ夜更かしをして、後々まで響いちゃったりするもんです。
でも、とってもフレッシュな気持ちになりますよね。
もしかしたら、この薬が撒かれちゃったりしてるのかも。 笑