おつとめ品
私はキラキラした目で、
自分達をみている人を見つめました。
私は周りの子たちより、ちょっとおませさんで、
誰よりも芳醇な香りを漂わせていました。
きっと私が一番に選ばれるに違いないわ
誰が私を選んでくれるのかしら…
私は熟れて魅力的でしょう?
でも、人々は私を避けて、他の子たちを選んでいきました。
どうして?
私は今、この中の誰よりも、美味しいのに!
その時、一人の女性が私を手に取り、しげしげと眺めました。
私は嬉しくて、一生懸命綺麗に見えるように、美味しそうに見えるようにアピールしました。
しかしその女性は、私を元の場所に乱暴に戻すと、横の子達を手に取りしげしげと眺めた後、その子を連れて行きました。
仲間が私に言いました。
お前のせいだ!
お前の腹のところが、黒くなってるから、
誰も連れて行ってくれないんだ!
私は悲しくなりました。
みんなを支えて一番下になってしまったから、傷がついてしまったのに、そんなことを言うなんて…
周りの仲間たちが、どんどんいなくなり、最後になった時、夕焼け小焼けの音楽が流れ始め、そのうちに、少し辺りが暗くなりました。
その時、私を手に取った人がいました。
私を選んでくれたの?
そう思った時、私たちの上に、
大きく
「おつとめ品 半額」
というシールが貼られ、別の棚に連れていかれました。
そこにはくたびれた野菜たちや、
私と同じように、少し傷がついた果物たちがいました。
ふとみると、私には茶色いシミのようなものが出来始めていました。
でも本当は、この今の私が一番美味しいのに‼️
そこの棚では、みんな無言で悲しそうに、じっとしていました。
誰もが、この先の自分の運命を考え、不安に押しつぶされそうになっていました。
次の日、いろんな人が、私のいる棚をみていきました。
何人かは連れて行かれました。
彼らは自慢げに、残されたわたしたちを見て、ニッと笑いました。
私は、ここでも残されたら、どうなるんだろう…
と考えました。
生ゴミになるしかないのかしら…
その時です。
ママ、バナナさんあるよ。
安いよ。
美味しそうだよ。
あらほんとね、さっちゃん。
さっちゃんと呼ばれた子は、私たちを手に取ると言いました。
ここがちょっと黒くなってるけど、
ここだけ取れば、大丈夫よね?
そうね、
ママは言いました。
ねえママ、
帰ったら、このバナナ食べていい?
いいわよ。
バナナジュースも飲みたいな。
凍らせてバナナアイスにもしたいな。
ママが作るバナナケーキも食べたいな。
まあまあ、そんなにたくさん、できるかしら
そう言いながら、さっちゃんのママは、私をカゴに入れました。
さっちゃんは、嬉しそうに私を見つめています。
さっちゃんの嬉しそうな顔を見て、私もとても嬉しくなりました。
さっちゃんは、家に帰ると真っ先に私を食べてくれました。
私はとても幸せでした。
ちょっと痛んでいるところもあるけど、
私は甘くて美味しくて、
食べた人を幸せにできるバナナです。
私を生ゴミにしないでくれて、ありがとう。
そう言いながら、私はさっちゃんの身体の中に溶けて行きました。
さっちゃんはね
バナナが大好き ほんとだよ
だけどちっちゃいから
バナナを半分しか食べられないの
かわいそうね
さっちゃん♪
そんなさっちゃんも、ようやくバナナを一本食べれるようになったようです。
よかったね
さっちゃん♪