大きいウサギと小さいキツネ
あるところに大きなウサギがいました。
ウサギは体は大きいけど心が優しくて、のんびり屋でした。
ある時、野原でばったりキツネと出会いました。
大きいウサギは、思わず身構えました。
ところがキツネは、まるで小ぎつねのように小さくて、構えた前足が、わずかに震えているようでした。
大きいウサギは思わず小さいキツネに尋ねました。
もしかして僕が怖いの?
すると小さいキツネが言いました。
君はどうしてそんなに大きいの?
知らないよ。何故か僕だけ大きいんだ。
みんなには、図体が大きいだけで、のろまな役に立たずのウサギだって言われるのさ。
するとキツネも言いました。
僕は小さくて、狩りも上手にできなくて、みんなから馬鹿にされるんだ。
2匹はそのまま、自分たちが仲間と違うという共通点で話が盛り上がり、いつしか仲良くなっていました。
大きいウサギと小さいキツネは、時々森のはずれであっては、おしゃべりをして楽しい時を過ごしました。
ある時、小さいキツネが野原を歩いている時、大きな鷹が空から獲物を狙っていました。
いち早く気がついた大きいウサギとその仲間は、自分たちの巣穴の中に逃げ込みました。
鷹は、地面に取り残された小さいキツネを狙っていました。
大きいウサギは慌てて、早くこっちへ
と自分の巣穴に小さいキツネを招き入れました。
大きいウサギが入れるように、大きめの穴だったので、キツネは小さい体でするりとウサギの穴に入り込みました。
しばらくじっとしていると、鷹は諦めてどこかに行ってしまいました。
実はその時、小さいキツネはとてもお腹が空いていました。
そしてキツネの本能で、目の前にいた小さなウサギの子供をパクリと食べてしまったのです。
自分でも驚いた小さいキツネは、慌ててウサギの砂穴を飛び出し、一目散に仲間のところに戻りました。
一方大きなウサギは、自分たちの巣にキツネを招き入れたことで、仲間たちから責められ、1人仲間の元から去っていきました。
仲間たちのところに戻った狐は、仲間たちから
友達のふりをして、ウサギの巣穴に潜り込んで餌を手に入れるとは、お前すごいな。
と、賞賛されました。
キツネは、大きいウサギに申し訳なくて、とても後悔していたので、耐えられなくなって仲間たちの元を去りました。
とぼとぼ歩いていると、森のはずれで大きなウサギと小さなキツネがばったり出会いました。
2匹はしばらく見つめ合っていましたが、そのまま何も語らずに反対方向へと去っていきました。
僕たち一緒にいちゃ、いけないんだ…。
しばらくだったある日のこと、
大きなイタチに襲われて、足に大怪我を打った大きなウサギが、何とか歩いていると、山の大きな木の根元に、痩せ細った小さなキツネが丸くなっているのかが見えました。
大きなウサギは、小さなキツネに駆け寄ると
一体どうしたんだい?
と尋ねた。
小さな狐は力なく顔を上げると、
この前は本当に悪いことをした。
せっかく命を助けてもらったのに、君の仲間を食べてしまうなんて、
僕はあれ以来、もう何も食べる気がしないんだよ。
と項垂れて言った。
大きなウサギは言った。
僕も考えが足りなかったんだ。
何といっても君はキツネなんだからね。
でももう大丈夫。
僕はもうこんな傷で長くは生きられない。このまま生き絶えるか、他の動物に食べられる位なら、君に食べて欲しいよ
そんなことできるわけないじゃないか。僕たち友達だろ。
2匹はくっついて、木の根元の落ち葉の中に埋もれるようにして丸くなった。
その日は急に冬が来たような厳しい冷え込みだった。
翌朝2匹は一緒に丸まったまま息をひきとっていた。
真っ青な空には、まるで大きなウサギと小さいキツネが一緒に遊んでいるような形の白い雲が浮かんでいた。