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ゴールは決して逃げないから、自分のペースで着実に。登山から学んだ自分の道の歩き方。

「自分軸で生きよう」って言葉を最近よく耳にしますが、そんなに簡単なものじゃないなって思うんです。

学生時代は成績表に点数だけでなく学年順位までつけられて、受験とかコンクールとか、この世の中には「他人に勝たなければ手に入らないもの」が多すぎる。

日本の誰しもがそんな「比べられる環境」で育ってきたなか、今さら「自分軸」とか「他人と比べない」なんていわれても……って思っていたんです。

でも、そんなちょっとやさぐれた気持ちが、登山をはじめたことでほんの少し和らぎました。

安達太良山の頂上付近。


ー 大丈夫。山はなくならないよ。

山を登り始めてから初めて知ったのですが、登山客やハイキング客は、すれ違うときに「こんにちは」と声をかけ合う文化があるようです。

まったく知らない人同士でも必ず「こんにちは」と挨拶をして、特に下山客の中にはこれから高みを目指す登山客に「頑張ってね」と声をかけてくれる人も多くいます。

街中だと見られない考えられない光景に、最初は少し驚きました。

安達太良山の登山道。


9月末、山形県の月山を登った際にベテラン登山家らしきおばあちゃんとお話をしました。

そのおばあちゃんは山にすごく詳しくて、「この岩は昔はなくて、ヘリコプターで運んできたんだよ」「このお花は〇〇っていうんだよ、一番好きな高山植物なんだ」と、たくさんお話をしてくれて。

そんな中、ふいに「お姉ちゃん、今日は頂上までいくの?」と聞かれました。

時刻は13時前。
日帰り登山ならそれそろ山を降りてくる人が多い時間ですが(日の入りまでに下山しないと危険なので)、その時点で私はまだ頂上までほど遠く。
普通に歩いても、まだあと1時間くらいはかかるかな……といった具合でした。

それに加えて、まだ最難関コースにも突入していないのに、すでに息が上がっている私。
ベテランのおばあちゃんからしたら、「この子大丈夫かな」と心配になったのでしょう。

「はい、頑張って頂上まで行こうと思います!」

そう答える私に、おばあちゃんはいいました。


「頑張ってね。でも、無理しなくていいんだよ」

「山はなくならないんだから、また来ればいいんだよ」


ー 山はなくならない。

そんなの当たり前なはずなのに、その言葉は妙に私の心を打ちました。

そうだ、また来ればいいんだ。
私にとってのゴール、つまり山頂は、今日登れなくてもなくなるわけではないのだから。

周りの登山客は、慣れているのか初心者なのかは分からないけれど、スイスイと山を登っていく。一緒に登山に挑んだ夫も、私と同じ初心者のはずなのに涼しい顔をしている。

それが悔しくて情けなくて、心が折れそうだったけれど、私にとってのゴールは「人よりも先に登ること」ではなく、「頂上からの景色を眺めること」です。

誰かが先に山頂に到達したからといって山の景色を奪われてしまうわけではないし、今日がダメでもまた何度でもチャレンジすればいい。

それって、人生でも同じなのかも、と思うのです。

月山の頂上へ続く登山道。ここはまだゆるやかな道。
月山の頂上付近からの景色。

自分以外の誰かが夢を叶えたり、幸せになったりすることで、自分の幸せの取り分が減ったように感じてしまう。

これを「認知の歪み」というそうですが、恥ずかしながら私はその気が強いところがあって。

人より先にやらないとダメなような、そうしないと達成感や幸せを味わえないような、そんな焦りがいつもどこかにありました。

でも、そうじゃない。

自分だけのゴールを目指す道のりに、他人のペースは関係ありません。
だって、自分にとってのゴールは、私が諦めない限り、なくなることはないのだから。

人生において大切なことを、山が、そして先輩登山家のおばあちゃんが教えてくれました。


……で、結局山は登りきったの?引き返したの?というのが気になるところですが、無事山頂に到達し、日の入りまでに下山できました。

しかし、この過程にまた「登山は人生」と感じるエピソードがあったので、それはまた今度書きますね。



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