みきたま

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チューリップ柄の傘を買った、モテたくて。

今日の東京は雨だが、私は傘を持っていない。 家に傘を忘れたというわけではなく、そもそも家に傘が一本もないのだ。 数週間前に傘をなくした。数年以上使っていた、お気に入りの傘だ。高価なものではなかったが、自分の手に馴染みがよく、まさに雨の日のおともといえる傘だった。そんな傘をなくすなんて、その日の私はどうかしていたのだろう。 その日からというもの、私は出かけるたびに傘売り場に立ち寄り、新たなおともとなる傘を探した。目についた傘があれば広げ、全身鏡の前に立ち、その傘が自分に合っ

    • 腹をくだしてからが同棲

      同棲って、ロマンチックなものだと思っていた。私が腹をくだすまでは。 私が腹をくだしたあのとき、同棲に対して抱いていた淡い夢と希望と、長いトイレットペーパーが、儚く宙に舞い散った。ヒラヒラヒラ〜。 そろそろ寝ようかと電気を消し、あわよくば腕枕をしてもらい、ふたり身を寄せ合った瞬間、腹の違和感はやってくる。「これはまずい、くだす時のアレだ」と悟ってしまう。こんなにも何かを悟りたくないことが他にあるか、いやない。 「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」と起き上がる女。心なしか

      • 意思決定とみたらし団子

        ここ最近「欲しいけどその時すぐには買わなかった服を、後々買いに行くと売り切れている」という事態が連発している。 まずあったのは、ヴィンテージショップで見つけた白いブラウスだった。首回りにブルー系の繊細な刺繍が施されていて、細かいギャザーが本当に可愛くて品のある服だった。 買おうかどうか本当に迷ったけれども、私にとってはかなり高額な一品だったのと、真っ白でお高めの洋服にこそケチャップなどを散らすのが私だと思い、そのときは買わなかった。 「でもやっぱり」と1週間程迷って、意

        • あしがくさい

          この文章を私の父が読まないことを願う。 匂いというものは不思議かつ偉大で、印象的な匂いは過去の記憶を鮮明に思い出させる。 濃い醤油とゴボウの匂いから、おばあちゃんが作ってくれた大好きなきんぴらごぼうを思い出す。エンジェルハートの香水の匂いから、昔付き合っていた恋人を思い出す(これが「香水のせい」か)。キンモクセイの匂いからは小学校の通学路を思い出すし、古い本の匂いからは大学時代の勉強に明け暮れた日々を思い出す。 そんな美しい思い出と匂いを列挙してはみたが、これらよりも確

        チューリップ柄の傘を買った、モテたくて。

          友だちになるには

          友だちになりたい人がいる。 その方は、行きつけの美容院の美容師さん。1年弱、2〜3ヶ月に一度のペースでお世話になっている。女性。年齢も学年も同じ。おしゃれ。可愛い。今日美容院に行って、改めて惹かれる人だなぁと思った。 23年生きてきて、人間関係の構築だとかコミュニケーションみたいなところは、それなりにできるようになったつもりだった。それなのに、いざ「友だちになりたい」と思うと、どうしたら良いのかわからなくなってしまった。 と言うのも、年齢を重ねるにつれて「友だち」という

          友だちになるには

          私は年内、ひとりきりでキャンプする

          決めた。私は年内、ひとりきりでキャンプする。 ご時世柄大きな声では言えないが、この連休は恋人と自然の中にテントを張り、寝泊りをした。それがまあ、とても良かった。 この連休にしたものを「キャンプ」と呼ばないのは、やったことがテントでの寝泊りそれだけだからだ。一応、キャンプという言葉の意味するものは野営とのことなので、テントで寝泊りをしたことイコールキャンプだといえる。ただ、私達のテントの周りで「キャンプ」をする大人たちがやっていることがとてつもなく楽しそうで、私もその「キャ

          私は年内、ひとりきりでキャンプする