本望
2年半が報われた。そう思った。
2024年3月の頭、彼から連絡が来た。
気が動転した。まさかまさかの彼だった。
だってもう会う事なんてないと思っていた。
いや、もう2度と会えないと思っていた。
会いたくて会いたくて仕方ない相手から
『久しぶり、元気にしてる?』って元カレのテンプレ
みたいなLINEが届いた。
正直嬉しかった。
だって君と離れてから、ずっとずっと会いたかったから。
未練が残ってた訳じゃない、私の中で気持ちに区切りはついていた、けど会いたい気持ちだけは消えなかった。
私はもう東京を離れるし、ここでタイミングを逃したら2度と会うことはないと分かっていた。
だから最後に、会ってきた。
いつものように新宿東口に集合。
行き交う人の中、彼が現れた。
最後の記憶では短髪だったけど、長髪になっていた。
そのくらいの月日が流れたんだなぁと思った。
ほぼ1年ぶりだもんね。
緊張するかなと思っていたけど、案外会ってみるとすぐあの頃のように話せた。大人の1年ぶりって長いようで案外短いものなのかもしれないな。
最近の近況を報告し合って、飲んで、食べて、楽しく1軒目を終えた。2軒目では、私たちがよく行ってた、なんなら最初に飲みに行った場所でもある、馴染みの居酒屋に行った。お互いほろ酔いで楽しく話していた時だった。
彼が
『俺本当はまきとちゃんのこと好きだったんだ。
付き合いたいと思ってたんだ。
恥ずかしくて言えなかったことをずっと後悔してる。』
と言った。
泣いちゃうかと思った。いや実際帰りの電車でちょっと泣いた。
1番聞きたかった言葉を、1番聞きたかった人から、聞けた。
ずっとずっとずっと私が3年間求めていた言葉を彼の口から聞けた。
分かっている。
時すでに遅しだし、お酒も入ってるし、当時告白されなかったことが全てだと分かってる。寂しくなって人肌が恋しくなって連絡してきたことも分かってる。実際友達にもそう言われた。
けど、、、けど、、、、、やっぱり嬉しかった。
嬉しかったんだよ。
あの日々が無駄じゃなかったんだって…間違ってなかったんだって………少し報われた気がした。
あの優しさも、あの言葉も、嘘じゃなかったんだ……特別だったんだ…と思うと胸がいっぱいになった。
大好きだった人が、多少なりとも私を好きでいてくれた事実に、救われた。
私のことが好きだからじゃなくて、女の子だから優しくしてるんだろうなぁと思いながら、彼と過ごしていた。
私のことが好きだからじゃなくて、雰囲気を上げるために好きって言ったんだろうなぁと思いながら、彼の言葉を受け止めていた。
どれだけ優しくされても、どれだけ女の子扱いされても、どれだけ好きって言われても、当時付き合おうって言われなかったから、彼女という立場じゃなかったから、どれも真っ直ぐ受け止めきれなかった。
そんな思いを抱えながら一緒にいた2年半が報われた気がしたんだよね。
本当に好きだった。
ずっとずっとずっと好きだった。
社会人1・2年目で、会社と家の往復で、外交的な性格でもないから友達と遊ぶのもたまにで、実家は遠いから頻繁には帰れなくて、そんな中、彼と会う時間は間違いなく私の心の拠り所だった。束の間の癒しを与えてくれる存在は、あの不安定な時期を過ごした私には必要だった。
彼と過ごした2年半は暗いトンネルを彷徨っている気分だったけど、私は彼が光だと信じていた。
ずっと、いつか一筋の光が差し込むと信じて途方もない道のりを歩いていた。
結果、彼は光ではなかったんだけどね。
自力であのトンネルから抜け出した私は勇敢だ、かっこいいぞ!
けどまさか、こんな展開になるなんて思ってもみなかったな。
正直あの日新宿に向かったのも一か八かの賭けだった。
2年半が報われろ!と思いながら、淡い期待を抱きなが歩を進めた。ほんと、こんな形で答え合わせが出来るなんて、人生も捨てたもんじゃないな。
同時に、あの日離れると覚悟を決めた私は何も、何ひとつ、間違ってなかったなと確信した。
思わぬ展開で一瞬心が揺らいだけど、やっぱり彼とはこれ以上一緒にいられなかった。
ありがとう、あの時の私。
あの日、勇気を振り絞ってくれてありがとう。
どうしようもなく会いたい日々を耐え抜いてくれてありがとう。
こうして私の長い長いひとつの恋愛が終わった。
22歳の夏に出会い、26歳の春に終わった。
『思いは言葉にしないと伝わらない』
そんな当たり前のことを教えてくれた恋だった。
『私の優しさや気遣いは相手に伝わる』
と自信をくれた恋だった。
『無駄なことなんて何ひとつない』
と私の背中を押してくれた恋だった。
ありがとう。
沢山優しくしてくれてありがとう。
本当に好きでした。
ずっとずっと一緒にいたかった。
これからの人生、貴方が心身ともに健康で健やかに過ごせるよう遠くから願っています。