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『スパイダーマン:スパイダーバース』で感情の容量を超えた話

『スパイダーマン:スパイダーバース』を観まして。

もう最高に刺さりまくりで、オールタイムベストというか、自分の映画鑑賞履歴に一段上のランクが生まれてしまった感じです。生きててよかった。

で、ここまで刺さったからには長文行為オタクの端くれとして諸氏に習って説得力ある記事を書きたい、僕も説明したい……のですが、感情に深く刺さりすぎて整理できないんですね。作品の良さが処理能力を超えているので語彙が死んでいます。そのうえネタバレも回避しようとするともうお手上げ。なので今回は感情をだらだら書くだけの雑記です。

ネタバレもします。

この世界には『スパイダーバース』すでに観た人間これから見る人間の二種類しかいないはずなので、本記事はすでに観た方向けということにします。

まあとにかく、映画本編の出来が素晴らしかった訳です。一人の少年が仲間とともにヒーローとして立ち上がる力強い物語。展開の面白さ、熱さ、楽しさ、キャラクターの個性――ビジュアル、声(吹替版で観ました。全員ちょーよかったし、字幕版も観ます)、それぞれの動機と不安、戦い方はもちろん同じウェブスイングの動きにまで違いが表れる――、それを観客に飲み込ませる描写の手腕、コミックとアニメの良いとこ取りのような画面、色使いと陰影の美しさ、クールな楽曲、もう何もかも最高です。キャラクターたちの物語はもちろん、その完成度自体に、こんな映画が存在することに、結集してこれを作り上げた人間がいるという事実に、リアルタイムに劇場で観ることができたという幸運に(日本公開が遅かったことは許さん)……打ちのめされました。

映画が好きな人はそれぞれ、「ここが良かったら好きになってしまう」という評価点、刺さる要素という自己分析を有意識にも無意識にも形成しがちだと思うんですが、筆者の場合は期待を作り、実現する展開がどうもそれらしいです。

『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』の、この敵とは五ェ門が決着をつけるしかないという説得力、『スカイライン -奪還-』の武術と宇宙ガントレットで宇宙人を叩きのめす場面、ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』のエンドロール寸前に映る青空……見たい画面という期待を観客に抱かせ、実現する。筆者はそこに作り手との同調を感じ、映画を最高に楽しめているという実感を覚えます。

『スパイダーバース』にも期待と実現の瞬間がいくつもあり、その最たるものがスパイダーマン全員が”初めて”揃って戦い始めたアクションシーンだったと思います。なぜここかと言えば、筆者がこのシーンが始まった瞬間にびゃんびゃん泣き出してしまったからです。俺自身が一番驚きました。驚いてばかりもいられないので以下に分析を試みます。

・スパイダーマンという同じモチーフのキャラクターたちに爆発的な個性を持たせ(まずこれがすごい、やり方もかなり大胆)
・それぞれの置かれた状況からストーリーの行き着く先を予感させると同時に、揃って戦うシーンを観客に期待させ(後から出るメンバーは特に出番が短い分、よりぶっ飛んだ印象を付けるというバランス感覚)
・そこに至るまでも熱く楽しく面白い展開山盛りで観客の感情を揺さぶり続け(ヒーローとしての成長、仲間や家族とのかかわり、敵役の強さ、ちゃんと笑えるコメディパート)
・気が散る要素を排除した戦場で戦う(縦横無尽に飛び回ることができ、かつ街を壊したり無関係な人間を巻き込んだりする心配がなく、それそれのアクションが立つ敵役も用意されていて、敵役の敵役たる由縁もばっちり描き切っている)

……という展開から辿り着いた状況でした。そりゃ期待も高まるってもんです。

この「一番の期待が実現したシーン」はそれだけでも最高なんですが、同時にスパイダーマンとして未熟な主人公が能力を開花させ、各自の世界を救ってきたスパイダーマンたちに認められる「ヒーロー誕生譚としての山場」でもあり、しかも「主人公と他のスパイダーマンたちも到達を期待していた共闘」でもあるわけです。

観客、作り手、キャラクターたち全員の期待が一致し、実現した瞬間。最高のエンターテイメント。生きててよかった。以上です。

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