悪口の取っ手。
悪口って、本当に難しいものだと思う。
悪口は死んでも言わないぞ、の姿勢を貫こうとすると、腹の中が読めないやつとか、八方美人とか、嘘くさいとか思われてしまう。
たしかに悪口は共通の敵を作るみたいで、人と人との心の距離を縮めてくれる。
ただし、自分が悪口を言えば自分もまた言われていると思った方がいい。
縮んだかのように見えるその心の距離は信用ができない。
どうしても言いたいことは「本人に聞かれても構わん」の覚悟を持って、明るく楽しく言うといいと思う。
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「あの人、あんなこと言われているけど実際どうなの?」
とか、
「あの人、そういうとこがあるよね」
と話題を振られるととても困る。
自分が悪口を言うつもりがなくても、それらは悪口の引き出しの取っ手になってしまうからだ。
「はい」
でも
「いいえ」
でも
「どうでしょう?」
でも正解ではない気がする。
そう言う時は「感じのいい人」の返し方がとても参考になるので、「感じのいい人」を常に観察している。
私が出会った「感じのいい人」のうち、悪口を引き出されそうになった時の返し方がとても素敵だった人が2人いる。
1人目は私から見たらおばあちゃんくらいの年齢の方。
けれどとてもエネルギッシュで活躍されている方。
「○○さんっていつもこんな感じですよね」
と「○○さん」の悪口を引き出されそうになった時、咄嗟に
「私、○○さんとツーカーなのよ」
とおっしゃっていた。
これ、とても言いにくいと思うけど、後輩に対してとか、自分が相手よりも目上の立場にいる場合はバシッと言っても大丈夫だと思う。
この方は明らかに「○○さん」から迷惑を被っている方なのだけど、こう言い放ったことがとてもかっこよかった。
とても深い言葉だと私は思っていて、
「これ以上言って、あなた自身の価値を下げることはない」
というメッセージがこもっている。
言われた方も「ハッ!」と気づいた感じで別の話題にサッと変えていた。
「あなたが悪者になる必要はない」のメッセージをちゃんと受け止めたのだろう。
こういう言葉にならない部分で理解し合えることの方が繋がりは深くなると思う。
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2人目は私と同い年の女性。
その子が一緒に働いていた人の中に暴君で有名な人がいた。
間違ったことではないのだけど、言い方ややり方がえげつないくらいに過激な人だった。
(あっ・・・これってもはや悪口かな 笑)
同じ部署にいたその子は色んな人に「あの人ってどうなの?」と聞かれていたのだと思う。
私は
「こういうことしてるけどさ、あの人ってなんなの?」
とその子が聞かれている場面にちょうど出くわしたことがある。
その子は
「人に嫌われることを恐れない方。とても強い方だと思う」
と答えていた。
「やり方はともかく、やっていること、言っていることは間違ってはいない」
のニュアンスと、
やられた人、言われた人の気持ちを労わるニュアンスもあり、中々上手い表現だと思った。
「そうだよね。あの人キツイよね。」
と言いたいところをうまく優しく言っていたところが素敵だった。
「感じのいい人」が周りにいるととても勉強になる。
悪口の取っ手に手をかけられた時、その手をやんわりと包んで剥がすことができる言葉を私はこれからも集めていきたい。