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こっちおいでよリス丸くん その5

原案・イラスト   ゆなぞ
文         ねこやま




シマフクロウさんに見守られ
ぼく達はまた先へと旅立つ。



「リス丸の家で飲んだどんぐりコーヒーまた飲みたいな。あれ美味しかったなぁ。
新しい友だちも出来たし、会いたい友だちにも会えたし、ちょっとここから先を急ごうか!!!!」


「急ぐって言っても神さま、
おつとめ先はまだここから遠いですよね?」


「私を誰だとお思いかな〜?
曲がりなりにも神なのをお忘れではなかろうね。
それではここから神社までワーーーープ!!」



「ワープ?ワープってなんですか!
うわっ、待って下さい!
ーーーーーーーーーーーーー!!!」



…………………。



「はいっ、到着到着〜!」


目を開くとそこには立派な鳥居があった。


「えっ!?ここは!!??」


「わたしのつとめ先の神社さ!
驚いたかい?まぁわたしは神だからねぇ
この位は朝飯前ってもんだよ」


「そのワープってやつが出来るならもっと早く教えて下さいよ。あの時も、あの時だって危なかったじゃないですか。飛んで行けたら安全だったのに!」


「それでは冒険の意味がないだろう。
極限に追い込まれてこそ開花する力だってあるのさ。
それに歩いて行く方が楽しいからね。」


(でも帰りは急ぐんだ……まったくもう)


「「神さま〜!!!!!もう、どこ行ってたんですか!!
おしごとたっくさん溜まってるんですからね!!!」」



「お〜ふたりとも元気だったかい?
わたしとした事がうっかり鏡を忘れてね、
取りに戻ったんだ。またすぐ行くよ」


「すぐ…ですか…」


狛犬のきょうだいはしょんぼりしていた。


「次は美味しいどんぐりコーヒーをお土産に持って帰るよ。だからそんな顔しないで〜。後少しだけ!ね??」


「「………わかりました。ちょっとはわがままな神さまにお仕えする、わたしたちの気持ちも考えて下さいよね
………気を付けて、いってらっしゃいです。
お土産、楽しみにしてます……。

あ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
あなたがリス丸さんですね?
神さまがご迷惑をおかけしていませんか?
なんかあったらビシっと言ってやってくださいね。
本当にわがままで大変かと思いますが
わたしたちにとっても大事な神さまなので
どうぞ宜しくおねがいします!!
道中お気を付けて。また会いましょう」」


「はじめまして、こんにちはリス丸です。
神さまにはいろいろ振り回されてはいますが、
まぁ、それも楽しい?ので安心して下さい。

次来るときはたくさん美味しいもの持ってきます!
あなた達もお元気で!行ってきます!」


「リス丸〜。楽しい?じゃなくて楽しい!だろう!
きみもなかなか言うようになったね。うん。いい傾向だ!森のみんなにも早く会いたいだろ?
さて、もうひとっ飛びと行こうか!」


「またワープですか!?」


「あぁ行くよ!リス丸おいで!」


「はい…!!」


ーーーーーーーーーーーーーーー!!!







「「「おかえりなさ〜〜い!!!!!!
リス丸お誕生日、おめでと〜〜!!!!!!」」」



2度目のワープをしたその先はぼくの森だった。
え!?と目をぱちぱちしてるぼくに神さまは言った。


「間に合った〜。今日はきみの誕生日だからね。
なんとかして今日までに戻ってみんなでお祝いしたくてさ。最初から今日戻ろうとは思っていたんだが
きみとの冒険が楽しくて楽しくて
寄り道したり遠回りしたりしてたらギリギリになっちゃって。帰りはちょっと駆け足だったけど、
なんとか間に合ってよかったよ。やっぱりわたしは天才だな!!」


「そうか…今日誕生日だったんだ忘れてた…
そうとは知らず…ぼく……
神さま、ありがとうございます……」


「礼には及ばないよ。わたしは自分のしたい事をしたまでだからね。ほら、みんなのところに行っておいで!
みんな準備をしてきみの帰りを待っていたんだよ」



「リス丸くんおかえり〜!」
「なんだか男前になったなぁ!」
「冒険の話聞かせて!」
「お誕生日おめでとう!」
「リス丸の好きなくるみパイたっくさんあるよ!」


ぼくは言葉より先に涙がぽろぽろ溢れた。
でもこれは悲しい涙では決してないよ。

森のみんなは変わっていなかった。
変わったのはぼくの方だった。


オオヤマネコさんたちと話をして
いろんな愛の形があるんだと知った。
シマフクロウさんにそのままの自分でいいんだと教えてもらった。
神さまと冒険をしてたくさんの「楽しい」を感じた。


ぼくはみんなに会いたいと心から思った。
ぼくはそれが嬉しくて涙が溢れたんだよ。


神さまと冒険に出て分かった事は、
涙は悲しい時以外にも出ると言う事。
嬉しい時、安心した時、感動した時
いろんな時に出るなんて知らなかった。
知れてよかった。


みんなに言葉で伝えたい。
でもまだうまく言葉にならない。


なら抱きしめたらいいんだ。

これでよかったんだ。


「ほらほら〜。こっちおいでよ!リス丸くん!」
「宴のはじまりだよー!!」
「神さまもご一緒に!」



「……うん。ありがとう。みんなありがとう。

ただいま。」


それからみんなが用意してくれた
美味しいご飯をお腹いっぱい食べてたくさん話した。

歌って、踊って、みんな笑っていた。
ぼくもみんなも楽しそうだ。みんなが笑顔だとぼくも嬉しい。


楽しい事を楽しいと思えるぼくになれてよかった。
これも冒険して得た事。
日常のあちこちに『楽しい』は転がっていて
神さまはその『楽しい』を見つける天才だから
ぼくもつられて楽しくなって、毎日がきらきらしていた。



嬉しい事は嬉しいと
楽しい事は楽しいと


そして、寂しいという事や
こうしてほしいという事だって

言ってもいいんだ。


高鳴る心と安堵の気持ちを抱え
ぼくのはじまりの冒険は終わった。



もしも、これを読んでくれているそこのきみが
なにか不安な気持ちになっていたり
旅に出ることを迷っていたりしたら
ぼくと神さまと次の冒険に出ようよ。


きっと神さまの事だから
「楽しい毎日になるよ〜!さあ行こう!」
と半分強引にきみの手を引くだろうし

そしてぼくは
「また勝手に決めて…わがままな神さまですね……」
と言いながら君の背中を押すだろう。


だからさ、


「「こっちにおいでよ!きみも!!」」





                     (完)



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