見出し画像

こっちおいでよリス丸くん その1

原案・イラスト  ゆなぞ
文        ねこやま




みんなは『ゆるやかな死』について
考えたことはあるかな?

言い換えればそれは、穏やかな毎日とも言えるね。


大丈夫!心配しないでほしい。
ぼくは今までも満足していたし
これから話すのは、冒険好きの神さまと出会って
あちこち旅をして、ぼくがぼくを知る物語なんだ。


ハッピーエンドを約束するから、
どんぐりでも食べながら安心して聞いてほしい。




ぼくはリス丸。トレードマークはメガネ。
住んでいる森にはたくさんの動物がいて
みんな仲良く暮らしているんだ。

でもぼくはいつも寂しかった。
みんなと居てもいつも『ひとり』のようだった。

なぜかは分からない。

仲の良いともだちも居るけれど
ぼくはいつも素直になれない。
きっと持って生まれた性分ってやつだね。


誰にも内緒にしているけれど
ぼくは甘ったれで構われたがりなんだ
だけど上手く言えない。めんどうだよねごめん。
だけどこれが今までのぼく。


あの時もそうだった。

仲良しのイケ丸が
「オレ、リス美ちゃんと結婚したいんだ。
彼女の笑顔をずっとそばで見ていたい。
お前とは一番の仲良しだから、今から言っておくよ。
リス丸も絶対結婚式にきてくれよな!」


そう言う彼の眩しい笑顔がすごく印象的だった。
愛の力ってすごいな。


素直に招待状待ってるよ!と言えばいいのに
その時のぼくときたら、

「絶対呼ぶなよな〜」


うん。素直じゃないね。
心では呼んで欲しいと思ってるのにね。仲良しだから。



数年後、イケ丸は本当にリス美ちゃんのハートを射止めた。すごい!とてもめでたい事だ!!

そしてぼくは結婚式に呼ばれなかった。

結婚式の日、森のみんなが招待状をもって
幸せな笑顔いっぱいに教会に向かう姿を見かけた。
ぼくは、ぼくが呼ばないでと言ってしまったせいで
呼ばれなかったのだけれど、とても寂しい気持ちになった。すこし涙がこぼれた。



イケ丸とリス美ちゃんにおめでとうを言いたくて
後になってぼくは2人を訪ねたんだよ。

「なんで呼んでくれなかったんだよぉ〜」と嘆くぼくに
「だって呼ぶなって言ってただろう。ごめんごめん。」
と笑うイケ丸。


ほんとはね、行きたかったお祝いしたかった。
なぜぼくは素直に言えなかったのだろう。

言葉というのは一度口から出たら最後、取り消しができないのだ。だけど、消せないとしても、
「ああ言ったけど、本当は行きたいよ。本当だよ。
素直に言えなくてごめんね。」と付け足せば良かった。


これはぼくの性格を分かってもらうのに
わかりやすいエピソードのように思う。


あとは、どんぐりショップ(人間の世界でいうとあまぞんってやつさ!)で注文した物がいつも壊れて届いたり、

ごはんを食べに行けば、ぼくのにだけ毎回虫が入ってたり、大の苦手なセミくんに追いかけられたり



全部話したらキリがないけれど
とにかく、まぁこんな感じだ。


だからこの先もずっと変わらない毎日を過ごして
少しずつ歳をとっていくんだろうなぁって
本当にぼくはそう思っていたんだ。


                                
                                                           
                                                                 
                                                             (続)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?