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こっちおいでよリス丸くん その4

原案・イラスト   ゆなぞ
文         ねこやま




オオヤマネコの夫婦と再会を約束し
ぼくらは先へと進んだ。


神さまのおつとめ先は
思ったよりも遠くにあるらしい。


「少し遠回りになるけれど、この谷を抜けていこう。
抜けた先にある山に友だちがいるんだ。
きっとリス丸も仲良しになれるよ!」


「どんな方なのですか?」


「とても楽しい事が好きでね、
いつも面白いことを探しているんだ。
話を聞いてみたらいいよ。きっといい刺激になる」


ぼくは、『出会い』そして『仲良くなる』のが
当たり前のことじゃないのを知っている。
絆を結んでいくにはお互いの歩み寄りが大切なのだ。
オオヤマネコさんたちと仲良くなれたように
これから出会う神さまの友だちとも仲良くなれるといいな。


谷を抜けた先の山の入り口で
シマフクロウさんが出迎えてくれた。
大きな翼を広げ、こっちにおいでよと言ってくれているように見えた。


「こ、こんにちは!神さまと旅をしている
リス丸といいます!!!」




ぼくは、絶対に自分から挨拶しようと決めていた。
これまでのぼくは、傷つく位ならひとりでいいと思っていたけれど、神さまと出会って、冒険に出て、
新しい友だちが出来て、心を通わせる事の温かさを知って『悪くないかも…』と思っていたからだ。

だから今度はぼくから心を開きたい。
まだ少し怖いけれど、そう思ったんだ。

「こんにちは〜!よく来たね。
遠かっただろう。ゆっくりしていくといい。

神さまも久しぶり!元気だったかい?」



「もちろん元気だったよ!少し寄らせてもらうね。」


シマフクロウさんのおうちで
彼のこれまでの冒険のお話や、面白かったこと
楽しかったこと、そしてこれからのことをたくさん聞いた。


「ぼくは失敗してしまうのが怖くて
いつも同じ道を選んでしまうんです。
シマフクロウさんは失敗が怖くないのですか?」


「もちろん失敗するよりも、上手く行く方が良いけれど、上手くいかない自分も面白い!と思えたら
全てのことが面白く楽しくなるだろう?
挑戦しないで後悔はしたくないんだ。
だったらやってみよう!って自分を奮い立たせるのさ!
そうしたら、今まで見れなかった景色も見れる。
おれはもっと色んな景色を見てみたいんだ。

そう。きみとこうして話していることだって
とても『面白い』んだよ。

どんなきみもきっと面白い。もっときみの話を聞かせてくれないか?」


ぼくは涙が出てきた。
誰にも嫌われたくない、傷つきたくない
そのことに囚われて殻に閉じこもっていたけれど、
シマフクロウさんはぼくに寄り添ってくれる
どんなぼくでもいいと言ってくれる。




ぼくが殻を閉じさえしなければ
森のみんなとも、もっと打ち解けられたかもしれない。
そっぽ向かれる時があってもいい。
きっとみんな色んな事情があって
閉じこもりたくなるときがあるんだろう。
そんな時、シマフクロウさんがぼくにしてくれたように
『大丈夫、どんなきみも素敵だよ』とそばにいてあげられたらよかった。


もう遅いだろうか。

まだ間に合うかな。

この冒険が終わって森に帰ったとき
みんなともっと話がしたい。

ちゃんと顔を見てただいまと言いたい。

みんなの話もたくさん聞きたいよ。


「神さまはこうなるのを分かっていて
ぼくを冒険に誘ってくれたのですか?」


「いや〜?純粋にきみと居たら楽しそうだと思ったからだよ。でも、ずいぶんいい顔立ちになったね。
悩み事は吹き飛んでしまったかい?」



「いえ、まだまだ悩みはあります。
でも、それも面白いと思たらいいなと思っています。
神さま。あなたと一緒に冒険に出てよかった。
ありがとうございます…」


「まだまだ冒険はこれからだよ〜!
しみじみしてないで、ほら行くよっ!

シマフクロウくん、楽しかったよありがとう。
また来るからね!」


「いつでもおいで!
リス丸もね、いつでも待っているからね。
気をつけていってらっしゃい〜!」


「絶対また来ます。
ぼくも面白いこと探そうと思います!」


「絶対また会おう!
それまでお互い元気でね〜!」



シマフクロウさんは初めて会った時のように
大きな翼を広げ、ぼく達の出発を見守ってくれた。



                       
                                                       
                                                      (続)



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