イギリスのパブ文化の存続を憂う
イギリスに留学中に住んでいたのはLeedsという街。イギリスで3番目に大きな都市とは言われるけれどリーズ含め、バーミンガム、マンチェスター、リバプールなど訪れたイギリスの主要都市はロンドンを除いてすべて郊外の古き良きイギリスの街だった。ロンドンのみが国際的な都会。
その古き良きイギリスの街の毎日の生活の中心にあるのがパブだ。自分も住んでみて分かったけれど、パブを「日本で言うと○○みたいな存在」と形容するのは難しい。バーとも居酒屋とも喫茶店ともちがう。東京やロンドンのように娯楽が対してない街の中にあって、生活の中心と言う以外の形容が見つからない。
基本的にはお酒を出す店であることは間違いないけれど、昼間から営業している。小さな街だと、テイクアウトのファーストフードと高級レストラン以外だと旅行者の外食の選択肢はほぼパブ1択だ。田舎をドライブした夜は、B&Bに宿泊し昼も夜も食事はパブだった。ちょっとだけ地元風の何かがある場合もあるけれど、基本はだいたいどこの街でも同じようなメニュー。その面では定食屋とも呼べるか?お酒を飲む場所ではあるので、法令で子どもが入れる時間は決まっているが(19時か20時まで)昼間は子どもたちもたくさんいて、日曜日は教会帰りに家族そろってサンデーローストと呼ばれるご馳走を食べたりもする。地元の老人は昼間からビールやコーヒーを片手に新聞を読みおしゃべりをしている。これだけ地元に根差した「第3の場所」化しているからこそ、多くのクラフトブルワリーは自分たちの作ったビールを地元のパブだけに出し消費されるだけで満足し、そこから拡げたいという野望がなかったりもする。
他所者の自分たちのような留学生にとっても、生活の中心であることには変わりない。学生たちは夜は、家で勉強している以外は大概どこかのパブにいるので、メッセンジャーで「どこ?」と聞けば店名が返ってくる。ちなみにLeeds大学最寄りのパブ(学内にもパブはあるけど)の名前は「Library(図書館)」だ。「この後、どうする?」「とりあえずライブラリーいくか」「どっちの?」みたいな。
イギリスの業界団体の調査によると、そんなパブの4割がコロナの影響を受け、今年の9月までに閉店の危機にさらされているそうだ。イギリスは先日、イタリアを抜いてヨーロッパで死亡者数が1位になってしまった。当然、厳し目のロックダウンが敷かれパブは営業ができていない。営業再開は8月末になるそうだ。
イギリス人の生活の中心のパブに行かれないことは、単に外に飲みに行かれなくなるのとは意味合いが違うだろう。そしてコロナが収束したとしてもそのパブが潰れてしまったら日常が回復できないだろう。政府の援助が待たれる。
MBAの教室を同じくらい思い出深い場所がパブだ。地元の人と会話したり、ビールをご馳走になったり、ワールドカップを応援したり、プレステで遊んだり、ダーツしたり、相談にのったりのってもらったり、思い返すシーンはパブばっかりだ。心配だ。
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