◤時間どろぼう◢ 時間を奪っているのは?[#19]
ミヒャエル・エンデの著書『モモ』に登場する「時間どろぼう」。
灰色の男たちによって、大人たちは余裕をなくし、忙しない日々を過ごすことになる。
これって作品のなかだけの話じゃないよな。
ただのフィクション、ファンタジーじゃないよな。
現代に生きる人々の口癖の一つ、「時間がない」。
それって本当に“ない”んだろうか。
たしかに、時間に対して多い量のタスクをこなす会社員。
学校、部活、バイト、塾…。大人より忙しいんじゃないかと思う学生。
仕事、家事、育児に追われる主夫・主婦。
朝の通勤電車は、朝なのに眠たそうなサラリーマンや学生がたくさん。
わたしも学生や前職の時は、そんな“船を漕ぐ民”の一人だった。
乗り換えなし、約50分の乗車時間。わたしはほとんどを寝て過ごした。
たまに本を読んだり、友だちとLINEをしていたけれど、寝ている時間の方が圧倒的に多かった。
それは、朝が早いのもあったけれど、「睡眠時間が“なかった”」のだ。
実家暮らしだったのに。
ご飯やお風呂の用意も、洗濯も、母親がやってくれていたのに。
なぜ私はそんなに寝ていなかったのか。
今振り返ると、わたしから時間を奪っていたのはテレビとSNSだ。
実家では常にテレビが点いていた
両親ともにテレビ全盛期の世代だから当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
テレビが点いていないと逆に物足りなくなるぐらいだった。
テレビは無情にも時間を奪っていく。
一つ番組が終わると、正時を跨ぐように次の番組が始まる。
正時を跨ぐことで時間の感覚を失わせるテレビ局の戦略?に、まんまと嵌っていた。
ミニマリズムの考えに出逢ってからはテレビを見る時間が減り、ドラマを見なくなり、ひとり暮らしを始める直前はバラエティやニュースが中心になっていた。
テレビより大事なモノに時間を費やしたかったのだ。
テレビに代わる刺客が現れる
テレビを見なくなってできた時間を埋める刺客となったのは、SNSやYouTubeである。
TwitterやInstagram、Facebook、LINEのタイムライン。
書き込んだり確認したりすることに忙しなく、次々と現れる「おすすめ」を渡る心と指と頭。
今、確認しなくてもいいことでも、遅れをとってはいけないと思い込んでいた。
SNSの沼にも、まんまと嵌っていた。
では、テレビやSNSだけが悪いのか?悪者はGAFAM?
時間を奪っているものは、テレビでもSNSでもYouTubeでもなく、自分自身
「時間が溶ける」と表現されることもあるが、正確には「時間を溶かしている」のだ。誰が?あなた自身が。
その時間に何をするか決めたのはあなた自身。
その時間をどこで過ごすかを決めたのもあなた自身。
SNSのアカウントを取得したのも、有名人をフォローしたのも、あなた自身。
すべてあなたが選択したのだ。
時間は有限だ。みんな平等で24時間与えられている。
時間は「いい」も「悪い」もなく、中立だ。
その時間を有意義にするもの、無駄にするもの、過ごし方次第。
どうせ溶かすなら、美味しくいただきたい。
誰でもすぐに自分や他者の時間を奪う「時間どろぼう」になってしまう。
お気を付けを。
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