2003.07.13: カルガリー(スタンピード)
2003年7月13日 カルガリー・スタンピード・フェスティバル
午前10時起床。
ヘレナは既に起きていた。スコットは早い時間に出かけたという。朝食を済ませて、ヘレナの運転する車でカルガリー・スタンピード・フェスティバル(Calgary Stampede Festival)に出かける。途中、ピーター・マリーン(Peter・Marlene)家に立ち寄る。ピーターとは二十数年前に東京で一度だけ会ったことがあるというが私は覚えていない。彼は地質学者で静かな人だ。マリーンは陶芸家。
ヘレナ、 マリーンと共にマリーンの家の近くにあるC-トレーン(C-Train)の駅からスタンピード・フェスティバル駅に向かう。C-トレーンの駅には改札がない。ホームの自動券売機で乗車券を買い同時に改札を受ける仕組みだ。
十二時を少し過ぎた頃に会場に着いた。今日は一週間続いたフェスティバルの最終日。
会場ゲートを入ると直ぐにカウボーイを乗せた荒馬が踊るように目に飛び込んでくる。カルガリー・スタンピード・フェスティバルは単なるロディオ大会ではなかった。畜産をはじめとする農・畜産業全体にかかわる人・物を含むこの地域一体の大きな物産展だ。
会場ゲートをくぐって、真直ぐにロデオ会場のあるスタジアムに向かう。特別席に空きができたようなので入ろうとしたら、入口でユニフォーム代わりのテンガロンハットを被った女性係員ににやんわりと断られた。ボランティアと思われる高校生くらいのこの係員と少し押し問答をしてねばってみたが席に入れてもらえなかった。ここは特別なチケットがいるようだ。その代りにと写真を撮りやすい場所に入れてくれた。荒馬乗りは遠目にも迫力がある。最後まで振り落とされずに終わる乗り手もいる。
ロディオ大会のスタジアムでは既にロデオ競技が始まっている。ゲートが空くと跳ね出す馬の上で激しく踊る乗り手は、四人のうち三人くらいが振り落とされていた。
カルガリー・スタンピード・フェスティバル会場にはカナダ国旗に並んでロディオのシンボルが建てられていた。ロディオ写真館ではロディオの体験を撮影してもえる。馬と牛の違いはあるがこれぞロディオだ。実際どちらもロディオと言うそうだ。
オーバーズボンと長袖のシャツ、それにテンガロンハットを借りて、飛び跳ねる牛の背にまたがってみた。背景は壁一杯の写真で一寸見には実際の牛に乗っているように見えるが牛は剥製。写真館の主人からポーズの指導を受けたので格好だけは本格的。
ちょうどこのロディオ写真館(館とは言ってもテント張りのにわか写真館だが)に入ったとたんにスコール。それも風呂桶の底が抜けたのかと思わせる勢いで大きな雨粒と氷粒が叩き落ちる。
撮影が終わってプリントアウトする頃になると、にわか写真館の床にも雨が流れ込んで来る。雷も鳴り始めて停電。プリンタが動かなくなってしまった。しばらく写真館主とおしゃべりをしているうちに、雨も小やみになり停電も復旧する。プリントアウトを受け取る頃には黒かった空も何処へやら、再び夏空に戻っていた。
マリーンの作品が会場内で開かれている物産展で入選していると言うので見に行く。物産展の会場は大きな体育館で冬はアイスホッケーのリンクになる。会場内は大きな砂の彫刻が作られていたり、マッサージチェア、掃除機などの電気製品、風景画、壁を飾る様々な装飾品、そのほか日常雑貨をはじめとする様々な物が売られている。
会場内にはケーキやアイスクリーム、クレープなどのおやつの甘ったるい匂いが漂っている。これは大がかりな縁日だ。
マリーンの焼き物は大きなショーケースに他の作品と一緒に飾られていた。
白い釉薬がまだらにかかった四角な皿の前の受賞を示すリボンに彼女も誇らし気だ。陶芸の他に絵画、彫刻、キルティング、木工、カリグラフィーなど様々な作品が展示されている。
お腹も空いてきたのでラウンドアップ・センター(Roundup Center)の中にあるハーベスト・ルーム・カフェ(Harvest Room Cafe)でランチ。皿にはローストビーフの大きなやつが四枚、それにサラダとパンがのっている。量が多くもてあました。
ローストビーフは肉汁たっぷりでうまかった。そろそろ食事も終わろうとする頃にオレゴンから来たと言うカントリーシンガー、ジョン・ハーゲット(John Hargett)がレストランに入って来て、三組程しかいない客を相手に歌い出した。良い声だ。風貌もジョンウエインに似ている。そう言ったら本人は笑っていた。レストランを出る時に彼のCDを一枚購入。
ドッグショーの会場では愛犬達の珍プレーに会場は湧き続けていた。
モトクロスバイクによるフリースタイルジャンプ会場では司会者の止めるのを無視して出場ライダー全員が連続ジャンプを繰り広げていた。
それぞれプレーヤーは十代後半から二十代そこそこの若い人たちが主役になってショーを盛り上げている。
大きな畜舎に入り畜産展のような雰囲気の中を見て歩く。馬、牛、羊、豚、ラマなどがいる。家畜を見に来ている人達は必ずしも畜産に関係する人達ばかりではないようだ。家族連れがペットでも見るような顔で大きな動物達を間近に見て歩いている。乳母車を押している若い夫婦にも沢山出会った。
カルガリー・スタンピード・フェスティバルの会場は普段は遊園地になっているようで、バンジージャンプやパラセール、フリーフォールなどの本格的な遊具がそろっている。ヘレナ、マリーンと三人で大観覧車に乗り遠くカルガリー市内を望む。
チャックワゴンレースが始まるまでの合間にカナダインディアンのテントが並ぶティーピー(Teepee:北米先住民の円錐形テント小屋)と呼ばれる一画に入る。女性がビーズの装身具や民族衣装の即売をしていたが彼女達の手作りなのだろうか。並んでいる鮮やかな色のテントの中を見せてもらったが中は外から見るよりもずっと広い空間だだった。
テント群を一回りしてから、チャックワゴンレースが開かれるスタジアムに向かう。最初に見たロデオ会場の外側がレースのトラックで、会場内のスタンドは既に沢山の人がレースの始まるのを待っていた。
チャックワゴン(馬車)がスタートラインに並んで号砲とともに一斉に走り出すのかと思っていたが、スタートライン内に設けられた空間でそれぞれの馬車が決められたポイントを一周してからのスタートだった。タイミング良く飛び出した馬車に場内から大きな歓声が上がる。スタートライン内の駆け引きはヨットレースのスタートに似ている。
四頭立ての馬車に二名の騎乗のサポーターがついている。一度に五チームが走るのだが何回見ても騎乗のサポーターの役割が分らない。スタンドでレースを見ながら盛り上がっている人達は賭けをしているようで大変な声援だ。
夜9時を過ぎても陽射しは高いが、さすがにTシャツ一枚では寒い。
お祭り最後のイベントに参加するために、ソーセージとポテト、生ビールで腹を満たしてからチャックワゴンレースの行われた会場まで戻る。今年のカルガリー・スタンピード・フェスティバル最後の出し物、グランド・スタンド・ショー(Grand Stand Show)を見る。仮設ステージとは思えない大仕掛けなショーだ。
最後は花火大会で幕を下ろす。隅田川や江戸川の花火を見ているので物足りないがそれでも途切れること無く三十分くらい打ち続いた。華やかな歌と踊りが鮮やかな照明の中で終わりを迎える。来年のフェスティバルでの再会を何度も呼び掛けていた。
再びC-トレインに乗り帰途につく。駅のホームは一度に会場を後にした人達で溢れている。
一電車見送って乗り込んだ電車は、祭りの後のほてリを乗せて走る。帰宅したのは1時を過ぎていた。