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2007.03.04: 盤錦(吹雪、牧羊人)
2007年3月4日 吹雪、牧羊人
明るくなった窓の外でカサカサという音と共に、時々強い風が吹きつけてくる。今日は旧正月の十五日、遠くの方で爆竹がバチ・バチ・バチっと爆ぜている。起き出してカーテンを開けてビックリ、雪だ。降り方は東京で見るのとは大違いでサラサラの雪が強風に舞い上がっている。この雪は北京、天津でも降っているという。
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外は雪だというのに部屋の中はヌクヌク。滞在中使わせていただいた部屋は明るい部屋で、ピンク色のカーテンと上掛けでなんとも可愛い。
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おまけに窓辺には縫いぐるみの白い犬が一匹こちらを見ている。
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昨日確保することができなかった北京までのリムジンバスのチケットは売り切れで取れないと電話があったみたいだ。こちらはジタバタできる立場ではないので暢気に構えて成りゆきに任せる。お父さんはこの雪の中、既に卓球教室に出かけている。台所ではお母さんが鼻歌(といってもかなり大きな声だが)を唄いながら餃子の皮にする生地を打っている。
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同じ階段を使う三階から于くんの同級生がやってきた。ドア越しに覗かせた顔はパジャマ姿の女性だった。小中学校ずっと同級で、今は同じ棟に住む遠慮のない間なのだろう。日本人が珍しいので見に来たというのだが玄関先で立ち話をして帰って行った。ネットワークはダウンしていて繋がらない。
十二時に卓球教室から戻ったお父さんの話によると、既に道路を走っている車はないらしい。こんなにひどい雪は数この十年来見たことがないとも漏らしていた。TVのニュースはすでに飛行機も列車も止まり、高速道路も封鎖されたと伝えている。街のあちらこちらから春節を祝う爆竹の音が響いてくる。昼過ぎに于くん宅でも吹き込む雪にもめげず窓を開けてバチ・バチ・バチ・バチ~ッ。爆竹が雪の中で元気に邪気を払う。その後、白玉を一回り大きくしたゴマ餡入りの団子と餃子を頂く。
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食後、急に眠くなり昼寝。多分、連日の食べ疲れ、呑み疲れが出たのだろう。目が覚めると午後五時。六時頃になってお父さんが外に出てみようと言うので、持ってきたシャツとオーバーズボンを動員して身支度。外に出ると文字通り皮膚が刺されるような冷たさだ。強風に舞い上がる雪はキラキラ光っている。巻きあがる雪で前が見えない。こういうのをブリザードというのか。雪の吹きだまりは這って進む。未体験の寒さの中、背中を吹き付ける雪に押されながら電飾の消えた暗い道を進む。
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こんな吹雪の日ではどの店も閉めてしまっているのではないかと于くんと話しながら雪の中を歩いたが、目指すモンゴル料理レストラン「牧羊人」は営業していた。ここはモンゴル人が経営し材料を現地から調達しているこの界隈でも評判のレストランらしい。驚いたことに店内には少ないが既に客がいた。周囲のレストランは店を閉めている。席に着いて先ず頼んだのが馬乳酒ならぬ牛乳から作られた白酒「金張」、三十八度。今夜は于くんのお父さんと二人でこれを空にするのか、耐えられるか、鍛えられるな。中国では明けた白酒は飲み切る習慣なので今日はきつかったが、今夜が最後の夜、お父さんの心遣いが伝わってくる。
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モンゴル料理は食べやすくどれも美味しかった。食事中もこの雪の中で旧正月を祝う爆竹の音がひっきりなしに響いてくる。ニラを平に並べて金串を打ち唐辛子をかけて焼いたものは実にジューシー、日本では食べたことがないが美味。ドジョウインゲンを焼いたものも好い。
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羊のもも肉やすね肉を焼いたものは柔らかくて食べやすい。野性的で滋養がありそうだ。
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お母さんが楽しみにしていたという今夜の旧正月の花火やイルミネーション大会は明日に延期されたらしく、見せたかったと残念がっていた。九時に牧羊人を出て帰路につく。雪も風も相変わらず、歩いているのが怖いくらい強い。気温が低いせいだろう、雪の中を歩いても靴や衣類がぬれない。二十分ほどかかって家にたどり着く。
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この時間になっても東北地方一帯の交通機関は全て止まったまま、高速道路も閉鎖されたままだという。明日はどうやって北京まで行こう。居間のTVで中国語に吹き替えられた山田洋次監督作品「黄昏れ清兵衛」をホンヤリと眺めながら、お父さんの日本語につきあう。独学だと言うがなかなかのもの、スムーズな会話にはならないが伝えようとしている意味はしっかり伝わってくる。于くんが日本で仕事をしている背景にはお父さんのこうした日本に対する興味も影響しているのだろう。ベッドに入る十二時頃には風も収まって静かになってきた。盤錦に来て初めて日付が変わる前に寝る。
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