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音響研究(音場再現/建築音響/信号処理)、プロオーディオなど

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マガジン

  • 屋外ライブ会場と騒音,音響暴露

    屋外ライブ会場の騒音,音響暴露についてのペーパーの和訳です。

  • インパルス応答とSmaart

    インパルス応答関連の記事をまとめています。

最近の記事

7.4 The Healthy Ears, Limited Annoyance (HELA) Initiative

はじめに2024年7月にHELA(Healthy Ears, Limited Annoyance)というイニシアチブが本格的に始動しました。サイトはこちら。 このイニシアチブの主催はイギリスDerby大学のElectro-Acoustics Research Lab (EARLab)とのことです。 AESによって2020年に公表されたイベント騒音と音響暴露についての文献(Technical Document),"Understanding and Managing Sou

    • 4.3 North America

      この記事では世界の騒音規制などの事例,特に法的根拠などのうち北アメリカの国々についてまとめています。 総じて北米諸国にはそれぞれ騒音に関する連邦政府のガイドラインがあり,州/県/市町村はこれらを用いて適切な騒音規制/条例を策定することができています。このセクションではそのような法律の一部を紹介します。 4.3.1 Canada北米の3カ国のうちカナダは屋内外の騒音規制値を定めており,騒音の突発性,時間帯,(場合によっては)騒音に含まれる特定の周波数内容や情報に基づいて調整す

      • 修士課程の二年間

        今日(2024年3月31日)が修士課程学生の最後の日なので色々まとめておきます。 研究していたこと主に建築音響,音場再現,立体音響,信号処理をしている研究室にいました。自分は音源の指向性をテーマに研究をしていましたが,信号処理,音場再現などの複数分野の知識が必要でした。学部時代の知識程度では全く太刀打ちできないため,必然的に研究以外の時間で勉強を並行していきました。勉強内容については後ほど。 修士一年 修士一年のはじめはとにかく研究室に通い(まぁ修了まで通い続けたので

        • Direct vs. Indirect IR measurement

          Smaartでインパルス応答を測定するには,基本的に直接的に測定する方法と間接的に測定する方法の2つがあります。 Smaartで使用している間接的なIR測定法は, 決定論的な測定法(一意にインパルス応答を決定する測定法) 非決定論的な測定法(確率的にインパルス応答を収束させる測定法) の2つの測定法があるため,3つの方法があると言うこともできます。 まずは最もシンプルで理解しやすい昔ながらの直接的なインパルス応答測定法から始めていきましょう。 ただし,これは優先順位の

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        • 屋外ライブ会場と騒音,音響暴露
          9本
        • インパルス応答とSmaart
          6本

        記事

          Measuring an Acoustical Impulse Response

          この文書はSmaart v.8.5 User Guide Chapter10の一部の和訳を基本としていますが,途中から筆者の思想を書き連ねているだけになりました。ご容赦ください。 はじめにSmaartではボタン1つでインパルス応答測定ができます。その測定で有用な情報が得られるかは,事前に設定したパラメータによって決まります。 インパルス応答を測定するプロセスは、次のようにまとめることができます: 信号の種類による測定方法の決定 測定する音源と音源位置の決定 測定点の決

          Measuring an Acoustical Impulse Response

          Impulse Response Measurement Basic

          この文書はSmaart v.8.5 User Guide Chapter7の和訳を基本としています。インパルス応答測定について複数記事を上げる予定ですが,その第0弾と考えていただければ幸いです。 インパルス応答とは何か最も基本的な用語として,インパルス応答(IR)は単位インパルス関数を入力としたSystem Under Test(SUT)の時間領域(時間対振幅)応答と定義することができます。 この場合の 「システム 」とは,マイクロホンや単一トランスデューサーのような小さな

          Impulse Response Measurement Basic

          音の測定と評価法

          とりあえず図の挿入などは諦めてざっと文を書きます。適宜コンテンツ追加,不適切表現の編集をしていきますので寛大な心でご覧いただきたく。。。 近年大規模フェス以外でも音圧レベルの測定や評価が広く浸透してきています。特にSmaart v.9の普及や,入手しやすいサウンドキャリブレータの登場/普及により,本格的な多点での音圧モニタリングが容易に行えるようになりました。この記事では音環境を測定するといった視点から基本的な事項を記述します。より詳細を知りたい方は各種計測器メーカー様のホ

          音の測定と評価法

          SmaartのFFTsizeの仕様と問題

          とりあえず書きます。 SmaartのデータはTransfer Functionモードの場合,ASCIIデータとして書き出せます。データを書き出して他のソフトなどで読み込みたい場合,MTW機能は使わないことが望ましい。MTWは表示機能,見やすさを優先している結果,FFTのデータとしての原則(周波数を等間隔に取ること)を満たしていない,プロットのみに特化したデータ破壊仕様です。表示のみに使用する場合は問題ないですが,フィルタ作成ソフトなどで扱う場合,この仕様を理解して設計されて

          SmaartのFFTsizeの仕様と問題

          信号の相関と知覚する音像,音色変化

          音場再現手法(いわゆるシーンベース)とは別の立体音響手法の分類として,オブジェクトベースとチャンネルベースの手法があります。 これらの手法は一般に多くのスピーカを用いて所望の空間を作り上げることになりますが,この時の音像の幅,深さ,高さの知覚,包まれ感,さらには手法の根幹的なアルゴリズムに至るまで広く関わるのが「信号の相関」です。 この記事では信号の相関と各種パラメータの関係,知覚との対応までをざっくりと書いています。 IACCと知覚IACCはInteraural Cros

          信号の相関と知覚する音像,音色変化

          FFTの実用とSmaartの周辺基本知識

          この記事はSmaart v.8 UserGuide Chapter1の一部を和訳したものです。 FIRフィルタの記事の基本事項を補完しつつ,基本的な知識の解説のために記載しています。 Chapter1:Fundamental Concepts and Terminology用途にもよりますが,Smaartの運用に際して,幅広いシステム測定のコンセプトとプロオーディオを理解することが必要です。そのすべてを網羅することは本書の対象外ですが,この章ではSmaart v.8の操作と

          FFTの実用とSmaartの周辺基本知識

          4. Noise regulations / 4.1 Motivation /4.2 World Health Organization

          このworking groupでは,世界中の良い/悪い事例を明らかにするため,騒音公害に関する広範かつ包括的な概要を示しています。この章で紹介する規制の数々は広範なものですが,それでも国際的,国家的,地域的,地方的なレベルで世界中に1,000を超える規制があるのでその全てを完全に網羅しているわけではありません。とはいえ傾向は明らかで,優れた実践例は他の多くの例とは一線を画しています。 4.1 Motivation 過去数十年にわたり,国際的/国家的などあらゆるレベルで騒音

          4. Noise regulations / 4.1 Motivation /4.2 World Health Organization

          3.2 Subwoofer systems / 3.3 Additional sound sources and other considerations / 3.4 PA shoot-outs

          メインシステムに使われるラインアレイスピーカのトランスデューササイズとアレイ長には限界があるため,周波数スペクトルの低域(100Hz以下)を補強/再生するためには,通常,サブウーファーシステムが必要となります。このようなシステムは,一般的にメインシステムに近接して(カップリングできるように)フライングアレイとして設置されるか,あるいはグラウンドスタックシステム(多くの場合水平アレイ)として設置されます。それぞれのアプローチには利点と欠点があります。 3.2.1 Ground

          3.2 Subwoofer systems / 3.3 Additional sound sources and other considerations / 3.4 PA shoot-outs

          3. System design / 3.1 Main PA

          はじめにこの章では2章で扱ってきた考察に対して,PAシステムのプランニングという立場からまとめと考察を行います。従来の2chシステムから始まり,昨今流行りのイマーシブシステムやFIRフィルタを利用した技術についても語られています。一部内容についてはそんなことはとっくに知っているよということも多くあるかと思いますので,読み飛ばしながら目を通していただければ幸いです。 サウンドシステムの設計と最適化は過去半世紀にわたって大きく進展してきました。1980 年代, Meyer So

          3. System design / 3.1 Main PA

          2.3 Level and measurement refulations

          聴衆レベルの規制,勧告,ガイドラインは世界的に見てもほとんどなく,実践にも大きなばらつきがあります。表2.1にはヨーロッパにおける現在のオーディエンスの音圧暴露規制が記載されています[49]。ヨーロッパはこの分野では世界の他の地域と比較しても最も進んでいる地域です。 観客の音響暴露規制に関するコンセンサスや標準的慣習は存在しませんが,ヨーロッパの多くの国々で一般的に共有されている慣習があることがわかります。公表されている規制はすべてA特性重み付けを用いた一次制限(Limit

          2.3 Level and measurement refulations

          2.2 Recreational Sound Exposure

          この記事はAESによって2020年に公表されたイベント騒音と音響暴露についての文献(Technical Document),"Understanding and Managing Sound Exposure and Noise Pollution at Outdoor Events"についての和訳やこの文献を輪読する勉強会で得た知見などをまとめたものです。 2.2節ではイベントでの観客の音圧暴露についてです。 多くのイベントにおいて,イベント参加者のうちの一部だけが音圧暴

          2.2 Recreational Sound Exposure

          FIRフィルタ

          FIRフィルタが何をしているか,どう作れるか,諸現象の原因は何かなどをまとめました。とは言ってもPA現場レベルで必要になることはないと思いますが,FIRフィルタの普及に伴い理解が必要になる時が来るかもしれないくらいのつもりで書いてます。畳み込み,フーリエ変換をなんとなく理解している人に対してFIRフィルタの少し踏み込んだところを解説する目的で記述しています。かなり乱暴な記載も多いので,より詳細,正確な知識を求めている方は参考文献をご参照ください。 FIRフィルタとIIRフィ

          FIRフィルタ